第2話
しばらくは、
さやかにとって、
瑠璃子のことを
推しとして静かに想える、
輝きに満ちた世界が続いていた。
ところが、
ある夕方のことだった。
さやかが帰宅すると、
アパートの前に、
見慣れない高級外車が止まっていた。
さやかが、
なにげなく運転席のほうを見ると、
あの女社長・エリカがいた。
そして、助手席には、
あの忌々しい瑠璃子。
すると、いきなり、
エリカが瑠璃子にキスをした。
さやかは驚いて、
腰が抜けそうになった。
さらに気まずいことに、
エリカのキスを受けている瑠璃子と、
さやかは目が合ってしまった。
瑠璃子の目は、
助けを求めているようにも見えたが、
さやかは、それよりも、
一刻も早くこの場から逃げ去りたかった。
さやかは、
慌ててアパートの階段を駆け上がると、
自室の202号室に入り、
鍵を閉めた。
さやかは、
自宅玄関で、
息を切らしながら、
自分の中の何かが、
崩れ落ちて、
あらゆる負の感情が、
激しく渦巻くのを感じていた。
翌日の夜、
思い立ったが
さやかは動いた。
エリカが外食を終えて、
出てきたところを、
さやかは、
自宅から持ってきた果物ナイフで、
グサリと刺した。
倒れ込んだエリカの腹部からは、
暗い泉のように血が噴き出ていた。
さやかは、
果物ナイフを持ったまま、
立ち尽くしていた。
(やった!
私の唯一にして最高の推し・瑠璃子様。
彼女を
瑠璃子様を汚す邪魔者を削除した!
これこそ、
私に与えられた使命に違いない!)
さやかは、
罪悪感など1ミリも感じていなかった。
それどころか、
むしろ達成感に
しかし、
駆け付けた警察によって、
さやかは現行犯逮捕された。
そして、
エリカは救急搬送されたが、
出血多量で死亡が確認された。
さやかは、
警察の取り調べに、
黙秘を続けたが、
内心ではこう思っていた。
(瑠璃子様。
私の女神・瑠璃子様。
あなたの害虫・エリカを
この世から葬り去りました。
これであなたは、
私が憧れていた、
元の瑠璃子様です。
私は今、
あなたを害虫・エリカから
解放できた喜びに打ち震えています。
しかしながら、
私は実刑を
でも、
私のことなんか、
どうだっていいのです。
瑠璃子様。
害虫・エリカから
自由になったあなたの微笑みを想像するだけで、
私は十分に幸せです)
さやかは、
取調官に向かって、
不敵な笑みを浮かべると、
再び頑なに黙秘を続けた。
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