第13話 ば―か

 班別球技大会のバスケットボール対決のAチーム対Bチームによる初戦が始まる。


(スタメンか……頑張らないとな!)


 まともにバスケをやった人がいないBチームは、戦略もポジションも適当である。

 唯一立てた作戦といえば――――


「南くんと西山さんに気をつけて!」


 バスケットボール部に入っている、運動神経の良いみなみ ひびきと、陸上部に入っていてインターハイにもでたことがあるという西山にしやま もみじを警戒しよう、というもののみ。


 ちなみにこれは島畑の立案である。


 審判が笛を吹き、試合が始まる。


 この試合のスタメンは、湊、七海、宮本、郡嶋、中島である。

 島畑は頭が働くので、ベンチで作戦を立て、それをメンバーに伝える。


 バレー部で培ったジャンプ力を生かし、中島がジャンプボールに勝つ。

 コートに転がったボールを郡嶋が取り、こちらボールからゲームがスタートする。


「一条!」

「おおっ!」


 郡嶋の近くにいた湊にボールが渡る。

 そこからは南にボールを取らせないように早めのパスを回す。


 決してそれは上手なものではなかったが、相手もほとんどは初心者。

 南にさえボールが渡らなければ最悪大丈夫なのだ。


「神宮寺さん!」

「うんっ!」


 ゴールの近くで七海がボールをもらう。

 そしてフェイクを入れてディフェンスを抜き去り、レイアップシュートを決める。


「やった!」

「さすが!神宮寺さん!」


 七海は近くにいた中島とハイタッチして、喜びを分かち合う。


 その後もちゃくちゃくと点差を離し、28対47の快勝を収める。

 あくまでもこれは学校の体育であるため、1試合あたり、サッカーとバスケットボールは20分の試合である。


 Bチームの人たちはこの試合に全員出場した。さすがに20分とは言え、走り続けるのはきついから。


 体力のある湊、七海、郡嶋はフル出場したが、残りの5人は入れ替わり入れ替わりで出場した。


 Bチームの皆で喜びあっていると、いかにも笑ってました、と言わんばかりの顔で古川が湊の方へ向かってくる。


「いやー、一条くん?上手かったよ、ほんと。笑っちゃうくらいに」

「からかわないでくれ」


 トップスピードになれば追いつける人はいないが、フェイクやダブルチームなどの戦略に翻弄される湊は、ちょっと違う意味で注目されたのだ。


 いわばごっつごつの原石である。


 ちなみに七海も隠れて笑っていたが、湊は必死でそのことには気づかなかった。


 また通常、この班別球技大会は2限続けて行われるのだが、授業数の関係で今日のみ1限のみなのだ。


 そのためかなり時間を短縮して2試合目が始まる。


 Bチーム対Cチームの試合。


 七海は一試合目がフル出場だったので、ベンチスタートだ。


(これが、レディーファーストってやつか)


 しかし郡嶋と湊はスタメンである。

 その事実にそんなことを湊は考えながら、2試合目がスタートする。


 1試合目とはちがい、そう簡単には行かなかった。


 相手がシュートを決めれば湊たちも決め返し、すぐに相手がシュートを決める―――

 と、一進一退の攻防を繰り返していた。


 結局2点ビハインドのまま残り1分に差し掛かる。


 ここで一気にBチームの軍師、島畑が勝負に出る。


 主力メンバーである七海、郡嶋を休憩させていたが、ここで投入する。

 ちなみに湊は、一度もベンチに下がらせてもらっていない。


(体力があるって、いいことばかりじゃないんだな)


 そんなどうでもいいことを考えていると、試合が再開する。

 相手ボールからのスタート。


 なんとか湊と中島で相手ボールをゴールに近づけないようにする。


「今だっ!」


 その軍師、島畑の合図で一気に七海と郡島が前に出る。


 そしてそれに驚いた相手選手の隙を見て、宮本がボールを奪う。その瞬間湊も前に出て、トップスピードで走り出す。


 その湊に宮本がパスをし、一気に湊がコートを駆け抜ける。

 そしてシュートを狙えるところまで来ると、郡嶋にパスを渡す。


 残り時間は20秒を切る。


 相手としては20秒守りきればよいのだから、全員がディフェンスに回る。


 郡嶋がシュートを放つが、それは惜しくもリングに嫌われる。

 中島がリバウンドを取り、湊にパスをする。


 残り時間は10秒ほど。


 湊がレイアップシュートを決めようとするが、そこに相手が立ちはだかる。


「神宮寺さん!」


 湊が七海にパスを渡す。

 そして遂に時間を切ろうかと言う瞬間、七海の手からシュートが放たれる。


 七海の体はスリーポイントラインの外にある。決まれば、3点。


 そしてそのシュートが―――


 決まった。


「よっしゃぁぁぁぁ!」

「勝ったー!」

「さすが神宮寺、さん?」


 そこで皆が異変に気づく。

 足を押さえて倒れている七海。

 それをおどおどと見ている相手選手。


 何が起こったかと言うと。


 七海がシュートを放ったあと、ブロックに失敗した相手選手が、七海とぶつかったのだ。


 すぐに近くにいた湊が駆けつける。


「神宮寺さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですけど……、歩けなさそうです。一条くん、ちょっと肩を貸してくれませんか?」


 ・・・


(は?)


 沈黙の中数秒が流れて、4限目が終わったことを示すチャイムが鳴る。

 その瞬間校庭に駆け出す人や、湊のことを羨ましそうに見つめる人が認識できた。


「一条、やってくれるか?」


 体育教師が湊にそうお願いする。

 そして周りの視線が湊に突き刺さる。


(みんなの前でイヤダって言ったらどうなることか……)


 助けを求めるように七海のほうを見る。


 七海はさぞ面白そうに笑いを我慢していた。


(は、はめられた!)


「は、はい」

「よし、よろしくな」

「一条くん、お願いします」


 七海が湊の肩を借りると、女子からは黄色い歓声が、男子からは悲鳴が響く。


 湊だって思春期の男だ。


 こんなに近くで綺麗になった七海の顔を見続けることは難しい。

 そして湊の右脇には女子特有のが当たる。

 いや、あたると言うよりも、当てている、という方が正しい。

 大きさは平均程度とは言え、湊だって男なのだ。驚いてしまうのも無理はない。


 湊の驚いた顔を見たからか七海からは小さく笑い声が聞こえる。


(この、野郎……!)


 ついてこようとする生徒たちを体育教師が止めてくれたことだけが幸いだった。


 そんな湊の顔を見て、七海が湊の耳元でささやく。


「ば―か」


(この、野郎……!)



 ちなみに七海の怪我は結構酷かったのは、また次のお話。





 ===

 第9話投稿しました!


 ちょっとここから数話くらい球技大会の話が入っていますが、ご容赦ください。


 イチャイチャシーンが見たい方、つまんなくなって読むのやめるとかしないでくださいね!?

 僕が悲しみます。


 自分はろくに恋愛なんかしたことないので(どっちかというと相談される側でしたね…)読んだ小説や漫画などの情報しか知らないのでありきたりなパターンだな、とか現実性がない!とか思うかもしれませんがよろしくお願いします!


 ランキング下がっちゃった……


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