第12話 班別球技大会

「あぁ――!!寝坊した――!!」


 七海と会えなかったため、短めの近場での朝のランニングから帰ってきて、汗を流すために入った風呂の中で、湊は叫び声を聞く。


「まったく……」


 湊はすぐに体を拭いて服を着る。

 そして風呂場から出ると慌てた様子の咲穂が目に入る。


「やばい、寝癖やばいし!朝から汗だくでベトベトしてて気持ち悪い!遅刻する――!」

「だから昨日早く寝ろって言っただろ……」


 結局咲穂は昨日、七海との会話で物凄い寝不足なのだ。

 そして当然のごとく咲穂は寝坊し、現在は7時50分。


 湊はもう風呂から出た時に制服に着替えているので行こうと思えば学校に行ける。


 しかし咲穂は違う。

 寝坊した上、今日の学校の用意もしていなかったのだ。


(くそっ!こんなことならもう叩き起こすべきだった!)


 幸せそうな咲穂の寝顔を見て、起こすことができなかった湊だが、今になって後悔をしているのであった。




 〜〜〜

 湊は教室に時間ギリギリに駆け込む。


「お、寝坊か?一条」

「俺の妹が、な」

「妹いるんだ。初耳だな。何歳?」

「1歳下の中3。まったく、とんだ迷惑だよ」

「待つだけ優しくないか?俺の姉ちゃんなんか置いてってたぜ?いつも通りの時間に」

「置いてったらなんて言われるかわかんねぇよ。マジで」

「妹の尻に敷かれてるってわけか」

「ま、そうだな」


 そんな他愛もない話を古川と湊がしていると、突然わぁっ!と歓声が上がる。


(もしかして……)


 予想通りだった。

 やはりその歓声の渦の中心にいたのは七海だった。いつも学校で見る七海とはちがい、髪は汗でしっとりと濡れ、制服も雑に着られている。


「珍しいね、遅いの。寝坊した?」

「ハンカチ貸すよ!」

「あはは、ありがとうございます、でも大丈夫ですよ」


 湊のすぐ後に教室に入ってきたようだ。

 朝のランニングにもいなかった。

 いかにも寝坊です、という状態の七海。


 つまり、そういうことなのだ。


(ななみも、寝坊したのか)


 昨日咲穂がLINEで夜遅くまで七海と会話していたのは記憶に新しい。


(まったく、無理しやがって)


 あの七海のことだ。

 きっと咲穂に促されるままに夜遅くまで起きていたのだろう。


 その後すぐに先生が教室に入ってきて、湊を含めた生徒が自分の机へ戻る。


 そして湊は一生懸命に授業を受け、時々隣からかけられるちょっかいに耐えながら4限目を迎える。


 4限目。

 それは湊が一番楽しみにしていた授業だった。


 ――体育。


 数日前の体育の授業は三月をかけて行われる班別球技大会のチーム分けで終わってしまったのだ。


 説明しよう。


 クラス内で8人ずつ5チーム(A,B,C,D,Eチーム)に分かれ少人数サッカー、バスケ、卓球の3種目を5チームが総当たりで戦い、1位から順に5ポイント、4ポイント、3ポイント、2ポイント、1ポイントを獲得する。


 3種目の合計が一番高かったチームが優勝となり、11月に行われる体育祭の選抜メンバーとして出場することになる。


 少人数サッカーは名前の通り、11人対11人ではなく5人対5人のどちらかと言うとフットサルに近いスポーツである。


 バスケはルールはそのままである。


 卓球は一試合2ゲーム先取制の団体戦で、毎試合チームから3人、3人……となる。


 そしてそのチームはというと……


(だよな、なんかそうなると思ってたんだよ)


 湊は隣をふと見る。


「頑張ろうね!一条くん!」


 そこにいたのは七海。

 湊が属するチームには七海もいるのだ。

 湊たちの属するチームはBグループである。


「一条、手加減しないからな!」


 不幸中の幸いと言うべきか、古川とは違うチームになったのであった。

 古川はDチームに属する。

 湊は基本的に友達はとても大事にするのだが、迷惑ごとに巻き込まれるのは好きではないのだ。


 話がそれたが、湊のチームメートはこんな感じである。


 まずは、神宮寺七海。

 次に、一条湊。


 この二人の説明はいらないだろう。


 3人目は、茶色がかったポニーテールの少し幼さが見た目に残る痩せ気味の女の子、

 高橋たかはし あかり

 文芸部に所属している。


 明るい普通の女の子である。


 4人目は、短めに切られた黒髪で、いかにも運動神経が高そうな高身長の男の子。

 テニス部1年のエースである、宮本みやもと そう


 5人目は、黒く綺麗な髪が少しぼさっとしている大人しそうな将棋部の男の子、

 島畑しまはた 勝利しょうり

 頭の回転はクラスでもピカイチである。


 6人目は、坊主頭の目立つ、野球部の

 郡嶋くんじま 隆春たかはる

 野球部と言うだけあって運動神経は実際かなりいい。


 7人目はオレンジに少し染められた髪の、小さめな吹奏楽部の女の子、

 長谷川はせがわ のぞみ

 かなり容姿が良く、かなりモテる方である。


 8人目は長めの黒髪の、高身長なバレー部の女の子。

 中島なかじま 花梨かりん

 バレー部の中でもトップクラスに上手である。



 こんな感じのチームをくんだ湊である。

 そして今からAチーム対Bチームの、バスケ対決が始まる。




 ……ちなみに七海はこんなことを思っていたそうだ。

(どうやってお昼ごはんのおかず湊から貰おうかな〜?)

 七海は意外と食いしん坊なのであった。


 このあと湊は七海に、楽しみにしていたおかずであるからあげを取られることを、まだ知らない。


 班別球技大会、開幕。




 ===

 第9話投稿しました!


 ちょっとここから数話くらい球技大会の話が入っていますが、ご容赦ください。


 つまんなくなって読むのやめるとかしないでくださいね!?

 僕が悲しみます。


 自分はろくに恋愛なんかしたことないので(どっちかというと相談される側でしたね…)読んだ小説や漫画などの情報しか知らないのでありきたりなパターンだな、とか現実性がない!とか思うかもしれませんがよろしくお願いします!


 ランキング下がっちゃった……


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