第44話

「私はただ普通に大学に行って、アルバイトに行って、友達に会って、旅行したりもしたいの」


「そんなのダメだ、許せない」


彼はぐっと私の身体を引き寄せ抱きしめた。


「大学で他の人と話すその唇をふさいでしまいたい……


 アルバイト先のパティシエさん?

 随分仲がいいみたいじゃないか。


 あいつが梓をたぶらかすかもしれないと思うと、アルバイト先も危険だ。


 梓は僕だけを見てればいいんだよ。

 僕が、梓のしたいことを全部かなえてあげるから……

 何でも言って?」



彼の言葉がまた耳奥へ響いてジンジンする。


「奥村……くん」と私が言うと、今度は唇そのものを彼は奪った。

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