第26話

「ああ……あずさ…」


彼は愛おしそうに私の手を握りしめた。


「梓に今までどれだけ会いたかったか……

 梓は覚えていないようだけれど、小学生の時に離れ離れになってからも、俺には梓しかいなかったんだよ」


「小学生?」と私が訊くと、彼はポツポツとその頃のことを話して聞かせた。



私は一切覚えていなかったけれど、私と彼は同じ登校班であり、児童館に通う子どもで、私が郊外に引っ越してしまうまで毎日、親が迎えに来るまで飽きることなく遊んだこと。


そして、その幼き日の私たちは、結婚を夢見るほど仲睦まじく、奥村くんはその時に得た私からの優しさや真直ぐな瞳を忘れることなくこの日まで来たという。



互いに「きょうちゃん」「あずさちゃん」と呼び合い、別れるときは体が引き裂かれるほど辛かった……梓の代わりになれる女子なんてどこにもいなくて、毎日あの頃に撮った写真を眺めてはどこか遠くへいるだろう梓へ思いをはせた。

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