第24話

ちょうど私が家に入ろうとするとき、久しく目の前で開くことのなかった隣のドアが開いた。


目が合うと、彼は今まさに鍵を差し込み開けようとした私の手を取って抜き、ひょいと体を持ち上げて「おかえり、梓」と言い、そのまま私を彼の自室へ連れて行った。


その一連の動作があまりに滑らかで、私は声を出すこともなくベッドに座らされた。



「ちょっと……、奥村くん!」


私がやっと声を出すと、彼は何も言わずに、ひたすら抱きしめた。


その力はあまりにも強く、私はなすがまま彼に抱かれていた。


「奥村くん、痛い」


体からミシミシという音が聞こえそうな気がして、私が声をあげると、彼は腕の力を少し和らげた後、頭を私の左肩に預けた。


「梓……今までどうして避けてたの?」


彼の吐息が首や耳にかかって、こそばゆい。


「やっと好きだって言えたのに……

そんなに離れていかれると、どうしていいかわからなくて、俺はもう理性を保っていられる自信がない」

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