第22話

彼は織田くんといい、顔の彫が深く、貫禄のある顔つきから「信長」の愛称で呼ばれるようになった。


私も「信長くん」と呼ぶようになった。



彼は専門学校生で料理の勉強をしているらしく、将来は自分の店を構えるのが夢なのだそう。


それで、店長から許可を得て、たまに試作のパスタやケーキなどを従業員で食べ比べて、良かったものはカフェのメニューに加えてもらい、実際にお客へ披露したりもしていた。



彼のレシピ研究は尽きることがなく、料理が好きな私はその腕を買われてたまに試作を手伝うこともあった。


味見はもちろん、レシピの相談にも乗った。


彼から尽きることのないアイデアを聞いているとそれだけで私も気持ちを掻き立てられ、次々にまた違う挑戦をふっかけてみたりもし、時々終電ギリギリで帰ることもあった。



でもそうして信長くんと切磋琢磨していると楽しくて、生き生きとして、隣人から与えられた胸が詰まるような緊張を忘れることができた。

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