第20話

私が肩で息をすると、彼は「ごめん」と言った。


「酔った勢いなんて、もっと嫌われそうだから、日を改めるよ、梓」



その時、私の家のドアが開いて兄がのぞいた。


全然戻ってこないから、もしかしたら私が倒れてしまっているのかもと思ったらしい。


私は何も言えないでいると、奥村くんが手を取って、兄に私を預けた。


そして、作り笑いをして「おやすみなさい」と言った。


「ああ、おやすみ」


と兄が言って、そのまま部屋に戻った。



兄に心配されながら、冷たいコップ一杯の水を飲むと、少しだけ頭の中が澄んだような気がする。



けれど、奥村くんが抱きしめた熱はまだ体の表面を覆って、触れた唇はずっと熱を持っていた。

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