第16話

彼ができたてのつまみをタッパーや皿に盛ると、それを玄関で受け取って私の家に運んで行った。


すべてそろうとテーブルに乗り切れないぐらいの量になって、私たちは飲み物を常時持ちながら箸を運ぶ羽目になった。



お酒も進んでほろ酔いになってくると、兄も仕事着を脱いでシャツだけの状態になり、奥村くんもせっかくまとめた髪がいつも通りの無造作へ戻っていった。


私は、兄と奥村くんが楽しそうに話すのに内心ほっとして、意識がたゆたうのに任せて、クッションを抱いて丸まっていた。


「梓に料理を教えてもらったそうじゃないか」


と兄が切り出したのはそのぐらいの時だった。


「はい。最初は本当に包丁すら持てなかったんですけど、今では毎日お弁当も用意できるぐらい、料理が好きになれました」


これも、宝田先輩のおかげです、と私に笑顔を向ける。

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