第2章:騎士爵領私戦編
17 ジルベール騎士爵 アニエス その1
王都シリエットでは、叙任式に続く祝賀の宴。そして式の大目玉である模擬戦が開催される。
その喧騒と栄光を背に、私は帰路についていた。
本来であれば私も叙任式後の模擬戦に参加する予定だったのだが、騎士叙任を懸けたブルイユ卿との馬上槍試合を行ったので、それで参加カウントを取られた形だ。
この試合というのは、王国の新人騎士はこんなにも強く華やかであるのだぞ!という示威行為であり、新人騎士の活躍を設ける場であり、そしてうら若き貴婦人らに武勇を示し、生涯手を取り合うパートナーを品定めする婚活会場でもある。
故に、既に目立った行動をした私がこれ以上出てもしょうが無いよね、という政治的判断だ。
他の新人騎士もちゃんとよく見てほら。
話によればブルイユ卿も予定を切り上げて帰られたらしいが、今頃針の筵であろうなぁ。
少しは同情……いやアイツのせいで騎士になれなかったかもしれなかったんだ、同情はしない。
逆にサーモ伯爵は王都に残られている。
彼が先導した騎士は私だけじゃないのでな、例えばテネブルシュール卿とか。
帰りは私と、数人の従者だけだ。
ま、終わってみれば悪くなかった。
私の騎士叙任が公に認められ、さらにはアルベール殿下に相談役として仕えるという未来が拓けたというのもまた、紛れもない事実である。
鎧やノワールを下賜されたことで、私は最低限の騎士としての風格をも手に入れることができた。
鎧も纏わず、馬にも乗らぬ暴力の徒が騎士と名乗ったところで誰も信じぬ。山賊の亜種でしかない。
被服や所持物がその人間の身分と立場を印象付け、信用の担保となるのは前世から変わらぬ摂理なのだ。
なのでとても喜ばしいこと……なのだが財政は破綻の危機に瀕しているのは変わらぬ。
幸い、帰路で寄った馬宿では文句も言わずに飯を食ってくれたノワールであるが、やっぱりその食う量が半端なかったのだ。
ガチで15倍くらいは食ってるんじゃなかろうか?お陰で追加の費用を払う羽目になった。
大盛り無料なんて概念が存在しないことを慟哭。
砂糖並の食品を用意しなくても済むのは良かったが、しかし量だけは誤魔化しがきかん。
悪い、やっぱり辛いわ。
浮き沈みの激しい人生だと言えば聞こえは良いが、ジェットコースターのような乱高下に、いささか疲労を禁じ得ない。
王の言葉の通り、作られてから誰も身に着けなかったのだろう。
新品の、そして私のためにあつらえたかのような巨大な鎧は、その重みで私の肩にずっしりと食い込む。
革で覆われた
だが、それは決して不快な重さや窮屈さではなかった。
むしろ、ようやく手に入れた「騎士」という地位の、心地よい重みのように感じられる……断じて金銭負担への不安ではない。
胯下のノワールは力強く進む。
その堂々たる歩みは、道行く人々の視線を釘付けにしていた……半分くらいは私を見ていたかもしれんが。
じゃじゃ馬、と評されていたが……彼は私の意図を完全に理解し、手綱を軽く引くだけで、まるで手足のように動いてくれた。
素直で良い子だとしか思えん……のだが、確かに従者が手綱を引こうとすると全力で抵抗するし言うことを聞かん。
流石に宿の厩舎に入った後は大人しくしているものの、それまでの世話は私が付きっきりで行わんといかん。
とんでもない甘えん坊である。
そうして数日の旅路を経て、見慣れた丘陵地帯が見えてきた時、私の胸には安堵と、そして一抹の緊張が同時にこみ上げてきた。
ジルベール騎士爵領。
私の今世での故郷であり、そして今や、私が守るべき土地となった場所。
遠目に見える我が家の館は、王都の壮麗な建物や、サーモ伯爵の堅牢な城塞と比べれば、あまりにも小さく、そして古びて見えた。
申し訳程度に備えられた石造りの壁には蔦が絡まり、屋根の瓦はところどころ色褪せている。
どこからどう見ても、栄光とは無縁の、ただの田舎の住処だ……ここは領主の住んでる所なので、これでも一番発展しているという事実が、悲しみを通り越して穏やかな諦念を招いてくれる。
だが、それでも。
この場所こそ、私が帰るべき場所なのだ。
館の門が見えてくると、そこに人影が集まっているのが分かった。
パトンを始めとする我がジルベール家に仕える従者たち、そして領民の代表者たちだろう。
私の帰りを待っていてくれたらしい……見張りはちゃんと仕事をしていたようだ。感心感心。
私が門をくぐると、わっ、という歓声が上がった。
「アニエス様!ご無事のご帰還、心よりお祝い申し上げます!」
一番に駆け寄ってきたのはパトンだった。
日に焼けた彼の顔は、深い皺の奥から喜びが溢れ出し、くしゃくしゃになっている。
その目には、うっすらと涙さえ浮かんでいるように見えた。
「そして、そのお姿……!なんと、なんと勇壮な……!まるで、古の物語に謳われる英雄のようでございますな!」
パトンの言葉に周囲の者たちも大きく頷き、感嘆の声を上げる。
彼らの視線は、私の身にまとった真新しい鎧と、その隣に静かに佇むノワールの巨体に注がれていた。
畏怖と誇りと、そして純粋な憧れ。
そんな感情が入り混じった、熱い視線だった。
王都では好奇と侮蔑の視線を浴び続けたというのに、ここではちゃんと領主として迎えられている。
その落差に、私は少しだけ戸惑いながらも、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じる。
ああ、そうだ。
私は、この人々のために騎士になったのだ。
「ただいま戻った、パトン。皆も、出迎えご苦労」
私はノワールから静かに飛び降り、感謝の言葉を述べた。
脚甲が地面を打ち、重々しい音が響く。
兜を脱ぐと、故郷の懐かしい風が、汗ばんだ額を優しく撫でていった。
「ささ、アニエス様は長旅でお疲れでしょう。まずは館でお休みください。馬は、私が厩舎へ……おお、しかし近くで見ると迫力がありますな」
「王宮で一番の名馬だ。国王陛下より賜った」
「なんと!陛下から……!」
そう言って、パトンがノワールの手綱を受け取ろうと手を伸ばした。
だがその瞬間ノワールが不機嫌そうに鼻を鳴らし、パトンの手を避けるように首を振った。
その黒曜石の瞳が明らかに機嫌の悪さを告げている。
近づいたらどうなるか分かってんだろうなオォン?という凄みである。
歴戦の兵士もかくや、と言わんばかりの圧倒的な威圧感に、さしものパトンもたじろいで手を引っ込めた。
「おっと……これは、手厳しいお方ですな」
パトンは苦笑いを浮かべ困ったように頭を掻く。
私もまた、やれやれと内心で肩をすくめた……やはり、こいつは私以外に心を開くつもりはないらしい。
一角獣の血を引いている、と半ば冗談交じりに考えていたが、ここまでくると割と本当かもしれん。
そうすると、この馬を贈ってきたダンケルハイト帝国の性格の悪さが際立ってくる。
まともな騎士ほど、乗せてくれないだろコイツ。
「すまない、パトン。こいつは少々気難しい。私が連れて行こう」
私は溜め息をつきながら、再びノワールの手綱を握る。
すると先ほどまでの威圧的な態度が嘘のように、ノワールは従順に鼻をすり寄せ、私の後に続いた。
そのあまりの態度の違いに、周囲の者たちから「おお……」と、再び感嘆の声が漏れる。
「では、パトン。厩舎まで付き合ってくれ。少し、話がある」
「はっ、かしこまりました」
私はパトンにそう告げ、ノワールを引いて、館の裏手にある厩舎へと歩き始めた。
他の者たちには一度解散を命じ、後ほど改めて、私が不在の際に苦労をかけたことへの労いの宴を開くと伝える……宴を準備して実際に運営するのは彼らなので、何かおかしいかもしれないが……この時代はそんなもんだ。割り切っていく。
舗装のされていない土の道を歩きながら、私は早速本題を切り出した。
今、私が最も気になっていること。
この帰還の喜びを根底から揺るがしかねない、重大な問題。
金である。
「単刀直入に聞く、パトン。我がジルベール家の財政状況は、どうなっている?」
私の問いにパトンは一瞬、言葉に詰まった。
だが、すぐに真剣な表情を取り戻し、歩みを止めずに、よどみなく答える。
「……決して、楽観できる状況ではございません。赤字にこそなってはおりませぬが、常に収支はぎりぎりの線。何か不測の事態……例えば、凶作や疫病が起これば、たちまち立ち行かなくなる可能性もございます」
その報告は私の予想通りであり、厳しいものだった。
やっぱり、そうか。
「農地からの税収は……」
「……残念ながら、アニエス様もご存知の通り、この土地は肥沃とは言えず、画期的な収穫量は見込めません。特筆すべき産物もなく、周辺領地との交易も盛んというわけではありませぬ」
パトンの言葉は、どこまでも現実的で、そして無情である。
武勇に優れ、情に厚いが、領地経営にはそれほど優れていたわけではなかろう。
ただ慣例通りに税を徴収していたのだろう、そうに違いない。
パトンら部下たちが何とかやり繰りしてきたからこそ、今まで破綻せずに済んでいたのだろうな。
さすがにそれをパトンに聞くのは憚られるが。
実際、私も完全にパトンに任せきりであったわけだし。
女という身である以上、体格では男性に対し不利……当時はそう思っていた……であるため、騎士教育についてはみっちりとシゴかれていたし、座学や宗教などの勉強も両立せねばならず、更には父の代わりの軍役参加など、とてもではないが内務に手をつける余裕などなかった。
本当にパトン様々である。
だが、それも終わりが近い。
私の脳裏に、ノワールの莫大な食費が、維持費が、巨大な化け物となってのしかかってくる。
強い。
強すぎる。
人生で最大の敵である。
こまった、ちょっと勝てない。
数年ぶりに私は、敗北の予感を感じ取っていた。
筋肉ムキムキマッチョマンの変態も貧乏には勝てぬのだ。
100%オフで買物がしたい。
「そうか……」
私は重い息を吐いた。
アルベール殿下の相談役として勤務すれば、いくばくかの給金は得られるだろう。
だが、それだけで、この根本的な問題を解決できるとは思えぬ。
ノワールという名の、巨大な金食い怪物を養いながらでは尚更だ。
「……よく分かった。パトン、これまで一人でよくやってくれた。感謝する」
「もったいないお言葉です」
「だが、私が正式に騎士となり、この家の当主となったからには、お前だけに全てを任せておくわけにはいかない。私も、領地の運営に関わる」
私の決意に、パトンは驚いたように顔を上げた。
「アニエス様が……自ら?」
「当然だ。騎士とは、ただ戦うだけの存在ではない。領民の生活を守り、土地を豊かにすることもまた、騎士の務めであろう」
前世の記憶がある私にとって、帳簿をつけたり、収支の計算をしたりすることに、さほどの抵抗はない。
表計算ソフトのような便利なものはないにしろ、剣を振るうよりもそちらの方が得意かもしれない、とさえ思う。
そう、私には前世の記憶があるのだ。
現代知識という、この世界にとっては異質で、圧倒的なアドバンテージを誇る能力があるのだ。
私は先人たちが失敗を繰り返していた末に発見し、積み上げ築き上げてきた『正解』を既に手にしているのだぞ。
答えを知っているパズルを解くようなもの。
上手いことすれば、内政チートを行って侯爵家もびっくりの大発展ができるかもしれん。
しかし、それに必要なのは、情報だ。
「後でこれまでの収支報告、領内の地図、税の台帳など、運営に関わる全ての資料を私の部屋へ持ってきてくれ。目を通す」
「……はっ、かしこまりました!」
パトンの声には、戸惑いを上回る、確かな喜びと安堵の色が滲んでいた。
彼もまた一人でこの貧乏領地を支え続けることに限界を感じていたのだろう。
ようやく、私という、その重荷を分かち合える相手が現れたのだ。
徹夜確定の残業チキンレースの際に「手伝うよ」とやってきてくれた同僚のような存在である。
そんな会話をしているうちに、私たちは古びた木造の厩舎に到着した。
父の愛馬が亡くなって以来放ったらかしにされていた厩舎は、少々ガタが来ているように思えた。
ノワールが歯を剥いて厩舎を呆然と眺める。
うん、ごめん。君の新しい家はここなんだすまない。
厩舎の前には一人の屈強な男が、不安げな様子で立っていた。
年の頃は四十代半ば。日に焼け、節くれだった大きな手。
動物の世話が上手いと聞いて、ノワールの世話を頼めないかと呼んだ農民である。
「おお、アニエス様!騎士叙任おめでとうございます……!」
男は笑顔を浮かべて会釈をしたが……私の後ろに控える巨大な黒馬の姿を認めると、顔を青ざめさせ、少し声が震え始めた。
「ぱ、パトン殿から話は聞いております!この、その、お馬様の世話を、と……」
「うむ、頼んだ。こいつはノワールという。見ての通り、少しばかり……いや、かなり大きいが、悪い馬ではない……多分」
「た、多分でございますか?!」
私がそう言ってノワールを紹介すると、男はおずおずと顔を上げ、彼の黒い巨体を見上げた。その目には、隠しようのない恐怖が浮かんでいる。
無理もないよな。想像していた馬より絶対にデカいもん。
「こ、これは……なんという、立派な……」
男の声が震えている。
彼が普段相手にしている牛や豚とは、明らかに格が違う。
生物としての格が、根本から違うのだ。
その辺のモヒカンと世紀末覇者くらいの差がある。
「大丈夫だ、手を出したりはせん。……多分」
「2回目?!」
男は更に顔を引きつらせる。
だが他に馬の世話を頼める者もいない。
私の従者はパトンが少し心得ているくらいで、馬の世話などしたことない者しかいないのだ。
「まあ、試してみてくれ。こいつが気に入れば、お前を是非に馬番として迎え入れたい」
「は、はあ……」
男は、観念したように、恐る恐るノワールに近づいていく。
その手には、好物であろうと気を利かせて持ってきたのだろう、瑞々しい人参が握られていた。
人参というと、私の前世の記憶ではオレンジ色の野菜だったのだが、この世界で食べられているのは黄色である。
品種改良がまだまだ途上なのだ。
さて男が近づくが、しかしノワールはその人参に一瞥もくれぬ。
男が近づくにつれて、露骨に不機嫌な唸り声を上げ始めた。
耳を伏せ、歯を剥き出しにする。ついでに歯ぎしりまでし始めた。
それは馬の生態に詳しくない私でも解るほどの、完全な拒絶の意思表示だった。
「ひぃっ!」
男は短い悲鳴を上げて飛びずさると、尻餅をついてしまった。
ノワールは、そんな彼を鼻で笑うかのように、ふん、と一つ息を吐いた。
馬は賢いというが本当なのだな、と私の思考が現実逃避しかけたが、強引に戻す。
「……やはり、駄目か」
私は再び深いため息をついた。
試しに私が人参を寄越してみると、ノワールは素直にもっしゃもっしゃと食べ始め、もっと寄越せとでも言いたげに舌をベロベロと伸ばす。
うーん、私に懐いてくれているというのは非常に嬉しいのだが。
だがなぁ。
先の通り正式に騎士となった以上は領地運営という事務仕事をしなければならん。
勿論訓練も欠かせぬ。
一日一万回感謝の素振り、とまでは言わんが。
そのうえでノワールの世話までできるかと言うと、否である。
偶にやって来て顔を出すとか手伝うとか、それくらいならば、まだしも。
業務として世話するレベルで毎日時間を取ることはできぬ。
パトンも、私も、そして尻餅をついたまま動けない男も、途方に暮れて黒い巨馬を見つめることしかできなかった。
どうしよ。
「お父さん、大丈夫?」
この場に不似合いな、か細く、しかし、鈴が鳴るような可憐な声が、厩舎の入り口から聞こえた。
見ると一人の女性が、心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。
年の頃は、十六、七といったところか。
亜麻色の髪を三つ編みにし、着古しだが清潔なワンピースを身に着けている。
顔には
なるほど、この男の娘か。
父親の帰りが遅いのを心配して、様子を見に来たのかもしれない。
「おお、マリーか。……ああ、これ!」
マリーと呼ばれた女性は、巨大な黒馬の方に興味を惹かれたようだった。
男は慌てて娘を制止しようとするが、彼女は恐怖の色など微塵も見せず、目をきらきらと輝かせながら、ノワールにゆっくりと近づいていく。
「まあ!なんて、綺麗なお馬さん」
歳の頃と比較して随分と無邪気な一言だった。
しかし、綺麗か。
ノワールを「綺麗」と評した人間は、マリーが初めてだろう。
大抵の者はその威容に「恐ろしい」か「雄々しい」としか言わない。
私もそうであったが。
ノワールはマリーが近づいても、威嚇する素振りを一切見せなかった。
それどころか、先ほどまでの荒々しさが嘘のように、穏やかな目で、じっと彼女の姿を見つめている。
マリーはついにノワールの目の前まで来ると、おずおずと、しかし躊躇なく、その小さな手を伸ばし……その手が、ノワールの鼻先に、そっと触れる。
「ひゃっ!?」
父親の悲鳴が上がる。
だが、何も起こらなかった。
ノワールは、ただ気持ちよさそうに目を細め、少女の撫でる手に、自らの頭を甘えるようにすり寄せたのだ。
その仕草は、まるで、飼い主に甘える子犬のようだった。
「……な……」
父親が絶句している。
パトンも、信じられないものを見たかのように、目を丸くしている。
試しに、私はマリーに、ブラシを渡してみた。
「すまないが、少し、こいつの体を洗ってやってくれないか」
「はい、喜んで!」
マリーは嬉しそうに頷くと小柄な体で一生懸命、ノワールの巨大な体を磨き始めた。
ノワールはくすぐったそうに身じろぎしながらも、決して嫌がる素振りは見せず、むしろ、その手つきを心から楽しんでいるようだった。
時折、彼女の頬を、その大きな舌でぺろりと舐めたりさえしている。
その情景は、絵画にすれば名画と後世で語られるであろう、美しい対比と長閑な雰囲気に包まれていた。
その光景を見て、私は確信した。
こいつ……やはり一角獣の血を引いているだろコノヤロー。
「よし、決めた」
私はその場にいる全員に聞こえるように、はっきりと宣言した。
尻餅をついたままの父親に視線を向ける。
「お前の娘、マリーを、今日から私の専属の馬番として雇いたい」
私の言葉に、男はぽかんとした顔で私と娘を交互に見比べた。
やがて事態を理解したのか、彼は慌てて何度も頭を下げ始めた。
「は、ははっ!ありがたき幸せ!娘共々、この御恩は一生忘れませぬ!」
マリーは、自分が馬番に雇われたと聞いて、顔をぱっと輝かせた。
「本当ですか、アニエス様!私が、このお馬さんのお世話を?」
「ああ、そうだ。頼めるか?」
「はいっ!お任せください!」
少女は満面の笑みで、力強く頷いた。
その隣でノワールもまた、満足げに鼻を鳴らしている。
こうして私の新たな相棒の世話役が、図らずも決まったのだった。
さて。
ノワールの世話係は決まった。
食費についても(女性からであれば、我が領の牧草でも喜んで食うので)当初の想定よりは大幅に引き下がる見込みだ。
ともあれ領地の財政状況は変わらぬ。
火山の噴火口が、山火事くらいにまでグレードダウンしただけである。
さあて、この状況を打破するために、内政パートを始めるとするか……。
【畜産】
畜産は農業と密接に結びついており、農作業を行うための牛や馬、肉や毛を取るための豚や羊、鶏やアヒル、ガチョウなどの家禽などが一般的であった。
村落の
都市部の発展に伴う動物製品(皮革、羊毛、チーズなど)の需要の増加は、市場や交易路を通じて畜産物の商業化が進み、単なる自給自足的な生活を支える要素から、特産品としての市場経済の萌芽につながっていく。
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