交信

「んぅ...」


私は、この家で何度かの目覚めから覚める。


お爺さんが私のためにと部屋の窓に陽の光を遮る為のカーテンを取り付けてくれたので、目覚めてすぐに目が痛くなるという事故は起こらなくなった。


「眠りから覚めるのが快適だから、やっぱりこっちの服のがいいな」


実は機能を制限して、もう1回発動してもらった精霊献身の魔法の服を着た私は、ベッドから起き上がって、500年愛用しているパジャマはそのままに顔を洗いに行く。





 顔を洗ってリビングに行くと、普段は朝ご飯の匂いにつられて起きてくる遅起きの彼がいた。


「お、起きたか、おはよう」

「おはよう、朝ごはんの時間には早いのに珍しいね」

「まぁ、たまにはな、普段はぐっすり寝てる時間ではあるが。今日はお前の授業初日だし、俺も見てやろうと思ってな」

「ふーん、貴方が人に何かを教えられるほど賢いとは思えないけど?」

「はんっ、舐めやがって、これでも俺は...いや、どうせばれるし今言うことじゃないわな」

「隠し事はよくないよ、ほらほら聞かせてみなよ」


そんな風に話しているといい匂いが漂ってくる。


「二人とも朝から元気がいいのぅ、うらやましいわい。朝餉ができたから食べるといい」

「ありがとうおじちゃん、いただきます」

「いただきまー」


今日の献立は目玉焼き、サラダ、穀物を混ぜたご飯、根菜とお揚げの味噌汁。


パンとかスープももちろん好きだけど、やっぱりお米とかのほうが好きかな。





「ごちそうさまでした」

「ごちそーさま」

「お粗末様じゃ」

「どれ、少し時間がたったら約束通りに魔法を教えようかの」


私は魔法というものにあまり触れたことがない、といっても魔法士たちは王城に数十名いたので見たことは何回かはある。


イメージ的には元素を操って攻撃する、みたいなイメージが大きい。


そもそも人類種ヒューマンは他種族と比べて、魔法適性は平均も平均だからあんまりすごい魔法っていうのを見たことない。


人類種で魔法を極めたって言えるのは、それこそおとぎ話に出てくる[塔の魔法使い]と200年前、正確には700年前の[確率の魔法使い]くらいなものだ。


お爺さんに聞いた話だと最近は[愛の魔法使い]なる魔法使いもいるらしい。


ちなみに魔法使いっていうのは魔法士とは違って、奇跡を起こすことができるほど魔法を極めた人にだけつくすごい称号。


私もなれるかな、魔法使い。






「では、記念すべき初授業じゃが。まず初めに魔法の発動方法を教えることにしよう」

「発動方法?そんなの詠唱するだけじゃないの?」


ちげぇよ、と横から乱暴に告げられる。


「形式化されてる魔法はそうだけどな?戦争の時に使われた多くの魔法は誰もが使えるように形式化された魔法で、今は魔術と呼ばれるようになってる。必要な魔力量ときちんとした詠唱をすりゃ誰にでも扱えるすべなんだよ」

「ふーん、魔法の定義自体、というか魔法って言葉が指す対象自体が変化したんだ」

「そうじゃの、わしから簡単に説明するが、魔術は魔法の研究成果、誰でも使えるようにしたもので、魔法は研究する・極めるものに置き換わったんじゃよ」

「なんでそんなふうになったの?」

「それはn」

「それはな精霊種エレメンタルたちは古くからそういう性質タチだったんだが、最近は魔法によって願い事を叶えるなんて夢物語を追うようになったからだ」

「まったく横入りするでない、まぁ今の説明のとおりじゃ」


なるほどね、つまりは世界が少しずつ和解に進む中で、文化交流が進んだ結果が魔法研究ってことか。


でもそうなると[塔の魔法使い]や[確率の魔法使い]は最初から魔法への認識が違っていたってこと?まぁでも、[確率の魔法使い]は[塔の魔法使い]の弟子って私の時は噂されてたし、単純に戦争とか人類とは深く関わりが無かっただけってことだよね。


でも異名の理由とかは聞いたことがない、ちょっと聞いてみよ。


「ねぇ、おじちゃん魔法についてはおおよそ理解したけど、魔法使いとその異名の理由ってなんなの?」

「それについては少し考えればわかるとは思うのじゃがの。例えば、おとぎ話に出てくる今も生き続けるとされる、[塔の魔法使い]はなぜ"塔"なんじゃ?700年もの間生きる[確率の魔法使い]はなぜ"確率"なんじゃ?」

「んー、奇跡すら起こすことのできる称号、ってことは起こした奇跡によって異名みたいな感じでつけられてるんじゃないの?」

「ふむ惜しいの、考え方を変えればいいのじゃ、奇跡を起こす。では方法はなんじゃ?つまりはどのような魔法で奇跡を起こすに至るかというのが、魔法使いたちの異名を決定づけるのじゃ」


魔法使い達の手段...でも、それがこんなにも広がって周知されているなら、それに乗っかればいちばん近そうなものだけど。

まぁ、直近の[愛の魔法使い]っての以外はそもそも古い魔法使いだし、研究っていう文化とか魔術と魔法の区別とかついてないくらい昔の話だし?なかなか再現出来るものでもないんだろう。


「それで、魔法使い達の異名の理由は分かったけど方法って、どーいうこと?」

「俺が答えてやるよ、さっきじいさんが話した通り、魔法は研究するものになった。つまりはそれぞれに研究テーマみたいなもんがあって、それが魔法発動の手段になるんだ」


つまりはテーマに沿って魔法の研究をして、奇跡に到達するってわけね。


でもそれってなんか非合理的だよね、一つのもの研究し続けるって。


まぁ、あんまり考えても仕方ないか、それよりも。


「ふーん、でもそれじゃ私も研究テーマを見つけないと魔法は使えなくない?」

「その通りじゃな、貴族や王族なら自分の家に伝わるテーマを引き継ぐことが多い。ワシらのような一般人の多くの人は既に研究されているテーマに乗っかる形が多い」

「そうなんだ、でもその言い方だとおじちゃんの研究してるテーマは特殊な風に聞こえるけど?」

「そうじゃの、わしは交信魔法といって、超自然的な存在、いわゆる神とか宇宙人とかそういう者たちと対話をして力を貸してもらう魔法を研究しておる」

「そ、そうなんだ」


いつ聞いても胡散くせぇな、と隣の彼が言う。


私も、なんだか急にスケールの大きい話を持ち出されて少し困惑したけど、それよりも詳細が気になる。


「どんな感じの魔法なの?」

「気になるなら見せてあげようかの、ちょうど彼奴に頼みたいこともあったのでな」


そういっておじちゃんは目を閉じて、瞑想のようなことを始める。


私はこの時初めて魔力の動く感覚を感じた、なんだか水が波紋を作るみたいなユラユラとした落ち着いた感覚。


これまでは今で言う魔術しか見てこなかったし、おじちゃんみたいに経験を積んだ歳の人はそもそも魔法士にはいなかった。


感じたことない感覚に驚いているとおじちゃんが目を開いて詠唱を始める。


その瞬間、さきほどまでとは違う、空間自体が地震のように揺れるような感覚に襲われた。


「天の女王、数多を引き継ぎし者、われは汝の法を唱え、明星に座すあなたの美をここに讃える。『対話サータル』イシュタル」


おじちゃんの詠唱が終わる。


立っていられないような感覚が終わったかと思うと、その名残が嘘のように吹き飛んで、今度は圧倒されるような神聖さが押し寄せる。


「こんなに早く呼ばないで、すこしびっくりしたわ」


声が聞こえる、ただそれだけで畏怖が押し寄せる。


イシュタルといえば美や戦、豊穣や王権までもを象徴する女神。


おそろしいものではないのは理解できる、けど、格が違いすぎて直視が出来ない。


私は信徒が祈るように膝を折って頭を垂れていた。


「すまないのぉ、ただちょっとその可憐な姿が拝みたくなっての」

「はっこいつの何処が可憐なんだか、ただの横暴な神だろ」


おじちゃんが平然と会話をする、こんな規格外と。


しかも彼の方は今、平然と悪態をついた。


殺されるんじゃないかとすごく冷や冷やする。


というか今の魔法士ってみんなこんな感じなの...?


「はぁ、冗談はいいから、どーせそこの女の子関連なんだろうし。さっさと話して、そんな暇じゃないから」


私の方を見たのだろう、とんでもない圧を感じた。


その中に母が子に向けるような暖かさも感じ取って、私の中の畏怖も少し和らいだ。多分。


「それとそこのトカゲ、この前も私の前で私の悪口言ったわよね、殺されたいかしら?」


やっぱり訂正、彼の方に向いた圧が尋常じゃ無さすぎてさらに怖くなった。

ん?トカゲ?どー言う意味だろ。


「まぁまぁ、そんな怒らないでおくれ、その子が怖がる。じゃがしかしイシュタルや、早いというがワシらヒトにとってみれば200年はかなり長い時間じゃよ」

「ふーん、やっぱ有滅種の中でもさらに短命な人類種ヒューマンって大変ね」

「まぁ、いろいろ大変なことも多いが、そのおかげで楽しめることも多いのが利点じゃよ」

「まぁ、それは羨ましいこと。それで本題は何かしら?」

「んーわし嫌われとる?まぁそれは置いとくとして、今回の願いはお主の随獣であるウールマハを少し貸してほしいんじゃ」

「それはなんでかしら?天の牡牛グカランナとかじゃなく?ウーちゃんは私の力の象徴で、かなり大事な子なのだけど」

「じゃからじゃよ、その子、レイには魔法の素養がある。精霊眼というとっておきの素養がの、じゃがどうも扱い方が分からんでな。傍に魔力の巨大な存在を置いて、常に触れ合って魔力との親和性が上がり、精霊種に近付けば自ずと発現すると思っておる」

「へー、精霊眼...たしかにかなり稀有ね私でも2回くらいしか見た事がないわ、人間が精霊眼をもっているのは。でもそれでもウーちゃんまで必要かしら、ちょっと失礼するわね」


そんなことを言いながら私の目の前までやって来る。


そして、かがみ込んで私の顔を顎に手を置いて持ち上げ、私の目を覗き込んでくる。


とても綺麗な顔...流石、美を象徴する女神なだけある。


あれ、そういえば私、いつの間にか平気になってる。


「あんた、顔綺麗ね」

「えっ」

「あら、声まで綺麗、そこのトカゲにも少しは分けてあげて欲しいわね」

「あ?お前喧嘩売ってんのか暴力女神!」

「あら、短気すぎないかしら?この子に乱暴さが伝染る前に私が保護してあげようかしら」

「喧嘩はそこまでにして、貸してくれるのかくれんのかどっちかの、イシュタル」

「んー、そうねこの子...レイちゃんになら貸してあげてもいいわよ、ウーちゃんも気に入るでしょうし?レイちゃんになら500年くらいは預けといてもいいわ」

「顔見て一瞬声聞いただけで気に入るとか、安い神になったな」

「こら、お前はそんなことばっかり言っておると追い出すぞ?」

「ぐっ...わかったよ静かにしてりゃいいんだろ...」

「ふふっ、いい様ね。それじゃ、ウーちゃん出ておいでー」


そうイシュタルが告げると、正に金獅子というに相応しい綺麗な毛並みのライオンがどこからともなく出てきた。


「ウーちゃん?少しの間この子のそばに居てあげて欲しいのだけどいいかしら」


そう問われたウーちゃんと呼ばれるライオンが、私の方まで歩いてきてじっと顔を見つめてくる。


その後、小さくにゃあと鳴いて頬ずりをしてきた。


「やっぱり気に入ったみたいね、じゃあ用は済んだってことでいいかしら?」

「そうじゃな、急な呼び出しに答えてくれて感謝する」

「美しい子に出会えたからチャラにしてあげるわ、それじゃあねレイちゃん」

「は、はい!ありがとうございます...」


急に声をかけられてビックリしたけど、初めとは違って平気になった私は控え目に返事をした。


その瞬間にイシュタルの姿は消えて、彼女が来る前の空間に戻っていく。


ただ傍には彼女から預かった、ウーちゃん?がいるけど。









2ヶ月ぶりです!進学とかもろもろで中々投稿出来ませんでした...

だれも見ている人など居ないとは思いますがぼちぼち垂れ流していくのでお願いします!

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一目惚れに勝る魔法はありますか 描画限界距離 @bansheenoir

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