何と言っても特徴は美味しそうな料理の数々。
丁寧な描写で、湯気のたつ様子が脳裏に浮かぶだけではなく、甘い香りや香ばしく焼き上がる音まで聞こえてきそうです。
そして、味まで想像が及ぶとヨダレが出そうになります。
異世界に来たのは日本人のカズヤですが、様々な人が持ち込む問題や事件に積極的に介入してズバッと解決する訳ではありません。
カズヤはあくまで喫茶店のマスターとして、お客さん達に美味しい料理や飲み物を提供しつつ、話を聞いて、寄り添う姿勢を見せます。
喫茶店マスターとしてのプロの姿勢がそこから感じとれます。
カズヤとの会話を通じて、異世界の人達は自ら一歩を踏み出そうとする勇気やキッカケを得て、お客さん同士の交流が広まっていきます。
異世界はまだ前時代的な価値観のままです。なので、そこでのヒューマンドラマは、思いの外過酷なもの。
喫茶店でのほんわかムードとは対比的なハードさが見えると思います。
だからこそ、料理の描写の丁寧さが読者の気持ちまでもほぐしてくれて、物語への没入感を高めていると感じます。
食いしん坊さんも、ヒューマンドラマ好きも纏めて満足させる作品です。
私はエピソードの名前だけでお腹が空きます。
エピソード名を見て、好きな料理が書いてあった方、是非そのまま読んじゃってください!
温かい日差しの中、いつも待ってくれている喫茶店があったら—―。
そんな理想郷を体現したような素敵なお店、異世界喫茶。
店主のカズヤは、マイペースで心優しい、現代日本からの転生者です。
登場人物それぞれが夢に悩み、壁に突き当たりながら成長していきます。
その過程を、穏やかに見守り応援してくれる喫茶店の店主カズヤ。
素敵な世界観です。
クッキー、シフォンケーキ、プリンといった甘〜い癒しから、ふわふわオムライス、サンドイッチ、ナポリタン、カレーなど、クラシカルな喫茶店らしいメニューも揃っていて、どこか懐かしさを憶えます。
ああ、書いていたら喫茶店に行きたくなってきました!
というわけで、喫茶店に行ってきます!
皆さまもぜひ、この小説を読んでノスタルジーを体験してみてください!
家族の愛を感じられずに生きてきた少年エレインと、異世界に迷い込んだ青年カズヤ。そんな二人が「異世界喫茶」で出会い、少しずつ心を通わせていく物語は、まるで温かいココアのように読者の胸にじんわりと沁みていきます。
自分の努力が報われない日々の中で、初めて「自分の絵」そのものを褒めてくれたカズヤと出会ったエレインは、その言葉に救われます。一方のカズヤは、突然異世界に飛ばされながらも、持ち前の料理の腕と穏やかな人柄で少しずつこの世界に居場所を作っていく。二人の関係は、師弟のようであり、兄弟のようでもあり、互いに足りないものを補い合うような温かさを感じさせます。
この物語の最大の魅力は、料理の描写の細やかさ。オムライスやだし巻き卵のサンドイッチといった、日本の家庭料理が異世界の人々に驚きを与え、心を満たしていく様子が丁寧に描かれています。カズヤの作る料理はただの食事ではなく「誰かの心を癒すもの」であるのが印象的です。
まだ物語は途中ですが、これからエレインがどんな風に成長していくのか、カズヤが異世界でどんな未来を築くのか——。そして、異世界喫茶の扉の向こうには、どんな物語が待っているのか。続きを楽しみにしながら、次の一皿が運ばれてくるのを待ちたくなる、そんな作品です。
異世界で飯関連のお話となると、やたらと「飯が美味い」ばかりが先行して変な持ち上げられ方をする、一種の「日本の飯スゲー無双」になりがちなジャンルなのですが、本作では舞台となる喫茶店を中心に、訪れるお客さんとの交流を中心としたストーリー展開がなされているのがポイントです。
料理は勿論この作品において欠かせない要素なのですが、あくまで舞台は喫茶店であり、その場所が主役、という立ち位置なのですね。
その上で、お客さんが悩みを話したり、心の内を明かしたりして、一つの答えを見つけ前に進んでいく、という、実に優しいヒューマンドラマが繰り広げられます。
なので、お客さんが「ただ飯に驚いて美味い美味いと叫ぶだけのバカ」っぽく映らなくて、実に「個」として立っている、と感じられます。
そして勿論、魅惑の美味しいグルメも実に豊かでそそられます。
その見た目、香り、食感、風味など、実に表現豊かに語られ、目が文字を読んでいるはずなのに料理の像を幻視してしまいます。
実に飯テロ……腹が減る……。
読んでいてとても満たされる作品ですので、ぜひともお目通しいただきたい作品です。
※読み合い企画からのレビューです
とある出来事から異世界で喫茶店を開くことになった主人公
その"異世界喫茶"には、悩み多き人々が集まってくる──というシンプルなあらすじの本作品だが、それぞれの悩みや葛藤が本当に丁寧に綴られている
第1章のメインキャラクターであるエレインは、絵を描くのが大好きな少年だ
彼の持つ悩みは、子供らしく、しかし切実で、根が深いものだった
ネタバレは避けるが、とあるシーンでは本当に心が痛んだ
主人公は、エレインを直接助けるわけではない
エレインが問題を解決できたのは、八割は彼自身の勇気によるものだ
だが、エレインを癒し、励まし続けたのは主人公であり、そして彼の作る美味しい料理であったこと
それがなければエレインが悩みを乗り越えられなかったことは、疑いようのない事実だ
ほんのすこしだけ背中を押してくれる
そんな"異世界喫茶"は、暖かさと優しさで満たされている
読者諸兄も、是非、この喫茶店で日々の疲れを癒していってほしい