傷心の主人公は、遠い遠い宇宙の最果てへ、たったひとりでの調査行に志願する。アシスタント・ロボットがいるとはいえ、あくまで人間は自分ひとり。感情などどうでもいい……。だが調査対象にたどり着いた頃から、アシスタント・ロボットに明らかな変化が発現するようになる。そして調査対象の実態は驚くべきものだった。
登場「人物」が非常に少なく、主人公の旅の性質もあいまって、ストイックな雰囲気で語られる物語。宇宙空間だからこそ、静寂と孤独が際立つ。淡々とした語り口が、広大で静かな世界をより深めていて、個人的には大人のSFという印象でとてもかっこいい。
調査対象とは果たして何か。そしてアシスタント・ロボットの感情発露が解放された事情とは。感情を捨てたはずの遠い旅で、主人公は感情というものについてもう一度、考え直すことになるに違いない。