第20話
◇8. 村の暗い空気と、イリスの絶望
村人たちは誰も止められなかった。
地面に泣き崩れる子供も、大人ですら唇(くちびる)を噛むだけで何も行動できない。
「イリスが……連れていかれた……」
礼拝堂の鐘楼(しょうろう)は薄闇の中で形だけが浮かび上がり、その場所が再び生贄を奪われる絶望の象徴だと示すように佇(たたず)んでいた。
イリスは無言のまま、眷属の一団に引かれる形で荒野へ歩き出す。
心の中にあるのは「子供たちを助けられた」という小さな安堵(あんど)と、それ以上の恐怖と絶望。
(私はどうなるの……? やっぱり、夜族の……領主のところへ……?)
その先に待ち受ける運命を想像するだけで胃が軋(きし)むが、今はもう逃げ場などない。
村人の視線を背中で感じながら、イリスは静かに夜の闇へ溶けていった。
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