第32話

NOside




「……」



「あら、居たのですか」




一足先に講堂に向かっていた喜田川の耳に、小さな声が聞こえてくる。



それに足を止めて目立たない所に移動する。




「……」



「え……私そんなにハシャイでましたか?」



「……」



「そうですか。あの子が高校生になったんだと嬉しくて。反省し……って、なんですか、その格好は!?」




突然取り乱す喜田川。




「……」



「それはそうですが……。私でさえ出来なかったことを」



「……」



「私も見た目ならまだまだ高校生でイケますよ!!」



「……」



「……ぐぅ。まっ、それはいいとして。あの子はまた狙われるのでしょうか?」




喜田川は壁にもたれかかり、空を見上げる。



雲一つない澄んだ青い空。



入学式には相応しい。



でも、そんな空の下でシンは何者かに狙われているかもしれない。



グッと拳を握る。


震えを隠すように。




「……」



「しかし狙われるとしたら“星”と関係があるのでしょうか」




一向に“力”が目覚めないシンの“星”



歪な形に特殊な色。



考えられるとしたらそれしかないのだ。




「……」



「そうですね。どうかあの子をよろしくお願い致します」




そう言う喜田川の声には、シンへの深い愛情が感じられた。



スッと離れていく気配に、喜田川もゆっくりとそこを離れる。




そして




“星”や“力”などに惑わされることなく、シンが楽しい高校生活を送れますように、と青空の向こうに居る人に願う喜田川であった。

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