終章 その後 after

第33話 煙と共に去りぬ Leave with smoke

翌日 朝 フォルグランディアの広場

広場に人々が集まり、煙が上がる。

俺達はゼノ・フォレスの遺体を燃やす。

煙が空に立ち上っていき、骨も残らないようにルシの高温の炎で燃やした。

そして残った灰は言いつけ通りにフォルグランディア近郊の畑に数十か所に分けて撒いた。


フォルグランディアの宿酒場 レトー

「エル、本当に良いのか?」

エルとヴィヴとルシが4民族の代表と会合を開いていた。

エルリーフの村長がエルを寂しそうに見る。

「えぇ。サトーを私の婿にします。

村の掟には反しますが、それでも彼を愛している。」

「分かった。後継はお前にするつもりだったのだがな。

不肖の息子にするとしよう。

何より感謝を。

お前たちが紡いだ絆がこの戦いを終結させた。

サトー お主もな。」

「はい。」

「ヴィヴ、よく帰って来たな。」

初老のドヴェルグの男性が涙ぐみながら頭を下げる。

「親父、飛び出して悪かったな。

でもこれからはこいつと一緒に普通に暮らすつもりだ。」

「――そうか。

顔が見えただけでも良かった。」

「街長もそういうことじゃ。

我も同じく、こやつと暮らすこととする。

他の奴らも街で面倒を見てもらえると助かるの。」

「あぁ。英雄の頼みだ。必ず残りの培養槽に入っている者も村人として受け入れる。」

「それとサトーと決めたのじゃが、この戦いの英雄は4民族ということにしてほしい。

我等は歴史の表に名前を刻みたくないのでな。」

「君たちの方からそういってくれると助かるよ。」

元首相がすまさそうに書類を取り出す。

「――これは」

「歴史に残すカバーストーリーさ。

サトー 君が一番の英雄であることは私の胸に永遠に刻んでおく。

だがいまだに転生者への風当りは強い。

君の名前を表に残すわけにはいかないんだ。」

「構いません。俺は名前を残すつもりもない。

それに俺の体はもう転生者でも何でもない。

かつての力もない ただの人間です。」

「ニール代表として、君に恥じない政治をすると誓うよ。」


その後、俺達は首相からの謝礼の小切手を受け取り

換金はエルに任せてヴィヴとルシと一緒に街を回る。

カラフルな街の通りは活気を取り戻している。

「――そういえば霊脈を書き換えたのってどうやったんだ。」

「我の力で地表に近い霊脈の流れを分岐させたのじゃ。

近くの丘にある場所に決して壊せぬ石造りの塔を作った。

霊脈の本来の流れを断つようにな。」

「そうか。インドラが気になってたみたいだからな。」

「星ノ獣の魔具<ガイスト>は意思のようなものを持っていて不思議じゃのぉ。」

「あぁ。どうやら元となった星ノ獣の特性を引き継いでいるらしい。

それに起動者を選定するためにそういった特性が備わっていく。

よく出来てるよ。」

「ヴィヴ―!サトー!」

エルが戻ってきた。

「謝礼ちゃんともらってきたわ。

サトーの分は銀行に預けておくから

無駄遣いしないようにね。」

「あぁ。」

エルから銀行の証書を受け取る。

凄いな、預金がこんな紙1枚なんだな。

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