第34話 その後 after

1年後 フォルグランディア 居住区

俺はエル、ヴィヴ、ルシに婿入りすることとなり、

魔具<ガイスト>の修理工として辛うじて生活費が稼いで生活していた。

「ヒモのおにーさん

私の送風機直してよ。」

少女がでかい送風用の魔具<ガイスト>を持ち込んできた。

「はいはい。

俺はヒモじゃない自分の生活費は稼いでる。」

「ふーん

でも奥さん3人もいるのにねぇ。」

「俺は婿入りしたんだよ。だからお前が想像してる都合のいいハーレム生活とやらは

欠片もない。

名前も長くなったし。」

俺は送風用の魔具<ガイスト>の結晶回路を見ていく。

回路には問題がないな。魔素<エレメント>の伝送の問題だな。

「サトー どうしたのお客さん?」

「エルさん!

お久しぶりです!」

少女はエルを見た途端、目を輝かせる。

「あら ルジュちゃん

魔具<ガイスト>の修理?」

「はい!夏は暑いし今のうちに直しておこうかと思って。」

「そう えらいのね。

それじゃあ サトー 行ってくるわ。」

エルは今は街の魔術士として働いていた。

魔具<ガイスト>を使わず魔術を行使できる特異性は重宝されているらしい。

首都の方から北方、時には帝国まで出張することもある。

「あぁ 行ってらっしゃい。」

基本的に遠出する時は着いていっている。

ヴィヴは半年間は武者修行としてアルテニアを放浪し、

その後、俺を正式に婿入りさせた。

当然、もう一度決闘したがインドラをろくに使えなくなった俺は一瞬で敗北した。

今はここフォルグランディアで魔獣の捕獲、品種改良を行っている。

食肉へのこだわりが仕事に活きているのか、いつも活き活きとしている。

「ふわぁ。エルは出たのか。」

ルシはその魔術知識を活かして首都の魔具<ガイスト>研究所の研究員として働いている。

支所がフォルグランディアにあり、普段はそこで働いている。

近々、新型魔具<ガイスト>が開発されるらしい。それに関わっているとか。

「ルシさん また寝坊?」

「小娘 来ておったのか。

我は午後から出れば良いのだ。

英雄は遅れてくるものじゃとおとぎ話で読んでおらんのか。」

「私はエルさんみたいに素敵な魔術師になるんですー。」

「終わったよ。伝送部分の接触不具合だ。

お代は1500だ。」

「はい。ヒモお兄ちゃん」

少女が俺にお代を手渡す。

「ヒモは余計だ。」

「そういえばあの白銀の杖は何?」

「あぁ。あれは非売品だ。」

「けちー」

少女が店から出ていく。

――俺は日々を平和に過ごしている。

エルの出張以外で魔獣と戦うことはなく、

インドラとアシュヴァルの修理で学んだ魔具<ガイスト>の修理で何とか生計を立てている。


そして異世界への門がなくなったことで、転生者の噂を聞くことはなくなった。

エスキートを持たず細々と生活している者達はいるのだろうが、

エスキートを持って暴れる者はいなくなった。

「ようやく手に入った平和だ。」

俺は店の外に出て青空を見上げる。

空は青く澄み、白い筋のような雲がアルテニア方面へと動いていた。

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