第38話 殺人投法
(さて、開幕の一撃をどうするか)
長距離爆撃魔法は、古くから貴族が使う攻城戦の戦術だが、それ故に対策がされている。
外壁に魔法効果を減衰する効果を持つ建材を使用したり、
なので今回は星級がいないからといって、安易に魔法を放っては周辺に余計な被害を出してしまう可能性がある。
一方、ミーティアレイなどは火力が強すぎて、砦を貫通させかねない。
故に、ここは外壁のみに狙いを絞って、一撃で確実に破壊するのが良いだろう。
俺はポケットから金貨を一枚取り出して指ではねる。
それをキャッチしてグッと握り込み、大量の魔力を注ぎ込む。
「よし、久々の全力投球といこうか」
遠距離攻撃としては最も原始的な手段、
アクィラもそうだったが、星級の肉体から繰り出される投擲というのは脅威だ。
現役メジャーリーガーの何倍もの速さで、物体が飛ばせるのだから砲弾がとんできたと勘違いするくらいシンプルに破壊力がある。
(今回投げるのは
金貨は面と水平方向に投げれば、空気抵抗を極力排除できるので、野球ボールなんかよりずっと速度が出る。
何より魔法による妨害を受けないのがいい。
(そういや俺って、昔から物を遠くに飛ばすのは好きだったなぁ)
幼少期は、紙コップロケットや、スイカの種飛ばしに全力を出していた。
昔テレビで見た海外の「かぼちゃ飛ばし大会」の映像なんかは、俺の心を鷲掴みにしたのを今でも覚えている。
もはや兵器としか思えないような巨大な装置で、かぼちゃを千メートル以上打ち出すのだから、情熱の傾け方がぶっ飛んでいた。
(まさか俺も
昔少しだけかじっていた野球の投球フォーム。
今は魔力という要素が加わって、文字通り殺人的な破壊力を獲得してしまった。
セットアップから、流れるような動作で右腕に思い切り振り下ろす。
「らっぁあああ!」
リリースポイントからギュンと、音速を超える速度で金貨を射出する。
金貨はソニックブームを発生させながら、一瞬にして西側外壁に到達して外壁に深くめり込む。
外壁の内側から金貨が大爆発を引き起こし、外壁は木っ端微塵になった。
「よし」
外壁が剥がれ、砦の内部では混乱が発生している。
続いて俺は、兵達にビュッと"
「キタ、これはキタ……」
「オ”ォウ? パワー?……」
「ア”ッ、ヤバぃ……」
「なにごれ? しゅご、しゅごご……」
兵たちに赤い魔力が立ち上り始める。
今回は市民兵達も混ざっているので、前回よりは気持ち抑えめだ。
「皆聞け! これより砦を制圧する! 今こそバングウォールを獲り、エルホロ川西域を全てオルテノスの手に取り戻すのだ! そしてナイアに知らしめよ、オルテノスに、このシャルカがいる限り、二度とこの地を踏ませはしないとな!」
俺は兵たちに檄を入れ、パイプを空高くあげた。
決まったな、こういう時は少し大きな事を言えば盛り上がる。
「「オ”オ”オ”オ”オ”オ”!」」
兵たちもいい感じに士気は高かった。
皆、一様に赤い筋が顔に走っているが、どうにか力を制御出来ているようだ。
やはり何度か慣らした効果が出ているのだろう。
「それでは皆、出陣せよ!」
ちなみに今回、俺は出撃しない。
冷たいんじゃないかと思うかも知れないが、部下たちの手柄をとるような事をしては、上官として無粋なのだ。
兵たちを黙って見送るのも上官の勤めである。
「「ヒャァッハァアアアアアア!」」
「……」
部下たちは奇声を発しながら、砦内に駆け込んでいった。
砦の中から阿鼻叫喚の声が聞こえてきた。
「ガハハハ、やっと暴れられるぜェェエエエエ!」
「ふふ、ようやくこの力を存分に振るえます……ヌゥォオオ! ナイア滅ッッ殺!」
「死にさらせェエエ、ナイアの
……なんだか理性が残っている分、残虐性が増しているような気がした。
やはり魔法を抑えて行使するのは、俺にはなかなか難しいらしい。
「御名代様、バングウォール砦の制圧完了しました」
表情の薄い女武官が淡白に告げた。
なんとも締らない形になったが、バングウォール砦の制圧に成功した。
「ああ……」
「どうかなさいましたか?」
「いや、少し気が抜けただけだ」
「朝から動き通しでしたし、当然かと」
確かに、流石に精神的な疲労が溜まっていた。
それはそれとして、ふっと冷静になるといろいろと見えてくる。
「まずいな」
「まずい、ですか?」
「ああ」
「い、一体何が?」
女武官はゴクリと喉をならし、緊張した様子で俺を見る。
今まで気にしないようにしてきたが、よくよく考えてみるとまずいことに気づく。
「――俺、活躍しすぎてしまったかもしれない」
「……はい」
今日の戦果
バルバト・フォン・ナイアの討伐
勇者アクィラの討伐
バングウォール砦の制圧
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