真似しようとしているのではと思えた
リクトは自分の中にいるはずの、カリンに語りかけながら歩いていた。
大丈夫か、如何している、まだ出てこられないのか等と。
だが呟きながら歩いていたら気味が悪いだろう。
廃材置き場近くを通り掛かると、子供たちが集まっているのを見て止めた。
ミア、セリナ、チア、コリンが輪になって、後ろからカイン、タクト、ハルが覗き込む格好だった。
「キレイだよねぇ」
「わたしはこっちの方が好きかな。ミアは?」
「全部キレイだけど、これかな?」
「ぼくも、それぇ!」
チアが手にしているのは黄色の石だった。
黄っぽい中で流れるように白色が混じっている。
逆に白色の中に黄色が入っているのか割合は同じようである。
反射させながら見ているのか、掲げた手首が頻りに返されていた。
光った感じでは金色にも見えなくもなかった。
セリナは赤色だった。
一点から反対側へと、鮮やかな赤色がオレンジ色へとグラデーションしている。
掌で転がしながら真剣な表情で見詰めていた。
ミアが選んだ石は青色だった。
乳白色に青色を混ぜたような色だが、均一に色づいており宝石のように見えなくもない。
コリンは安定のマイペースである。
「たかが石だぜ? キレイも何もないだろう!」
カインが余計な発言をしてセリナやチアに責められた。
たじろぐカインを見ると思わず笑ってしまう。
それに気付いたのかミアが声を上げた。
「あっ、お兄ちゃん!」
「リクトぉ? ――いやあ、女って大変だぜぇ……」
更に余計なことを疲れたように言うので、セリナの逆鱗に触れてしまう。
何ですってぇ、と眦を吊り上げて怒られることとなった。
「はは。……平たい石って、何個くらいあるかな?」
カインに助け船を出すことにした。
一〇歳頃なんて、思ったことをそのまま口に出してしまう子もいる。
リクトにも覚えがあり、過去の自分を思い出して心にモヤモヤしたものが込み上げてきたのだった。
「うぅぅんとね。一二個ある!」
ミアが二つの山に分けた。
見るとチアやミアが気に入っていたのも含まれていた。
「気に入った石は、自分で持っておいて良いぞ。それ以外の一〇個を使って、遊びをしようか?」
先程の揉めごとなんか全て忘れたかのような、特にカインの燥ぎようは凄かった。
遊ぶ相手がカインにはいないのかと思える。
子供の頃の一歳は体力や筋力に大きな差がある。
急遽編制された防衛小隊である。
大人しいタクトとハルとでは、遊びが合わなかったのだろうと思えた。
「石弾きって遊びなんだけどね――」
リクトも詳しい訳ではない。
並べた石を指で弾いて当て、取り合った数を競うくらいしか知らないのだ。
そこで自分等で独自のルールを決めて遊べば楽しいと、簡単な説明だけをした。
カインは拍子抜けしていたようだった。
体力が有り余っているなら当たり前のことだろう。
だが男の子用の遊びは他にあるのだ。
廃材から適した材料を探して竹馬を作る。
同じ物が二つある一般的な分離型と、三本の板の先が抜け出るように二等辺三角形に結合した一体型である。
前者を上級用、後者を初級用として乗り方を教えた。
どちらも突き出ている箇所に足の乗せるのは変わらない。
転びそうになったら飛び降りるように伝えるが、カインは直ぐに
苦戦しているタクトやハルにコツ等を教えていた。
男子も女子も夢中になって遊んでいる。
リクトは元々行こうとしていた場所があったので向かうことにした。
先日の魔人が潜んでいた場所を見に行く。
当然だろうが既にいない。
どのように見えていたのか水遊びをしていた場所やバーベキューをしていた場所を見てみる。
だが何も特別なことなどなく、ごく普通であった。
周囲を軽く見て回り、戻ることにした。
●
何日かすると女の子も竹馬に乗っていた。
コリンにも竹馬にしがみ付かせカインが動かしていた。
隣を歩くミアに嬉しそうに声を掛けている。
だが遊んでいる子供は六人しかいなかった。
周囲を見回すと一人だけ、離れた場所で膝を抱えて木の上を見ているタクトを発見した。
何を見ているのか視線の先を追うと、色鮮やかな鳥が止まっていた。
「何回やっても、一人だけ乗れなかったんだよね」
リクトの隣へと並んだセリナが教えてくれる。
テオ村に来る前の、王都での家が近所だったようだ。
「……そうなのか」
「うん。昔から追いかけっこしても、直ぐに転んで一人だけ下手だったんだ。それで何時の間にか、あそびに入ってこなくなっちゃった。でもね、何かをかんさつしているのは好きみたい」
防衛小隊が来たとき、子供たち全員の関係は良好だった。
初めて会った子が多かったためだと思える。
だがリクトが余計な物を作って遊びを教えたから、孤立してしまったようだった。
「そっかぁ……。セリナ、教えてくれてありがとう!」
「うぅうん。また何か、ちがうあそびでもあったら教えてね!」
セリナが走って行く。
タクトを心配しているのが良く分かる。
それにリクトへの気遣いなのだろう。
「子供と遊ぶなんて、俺らしくなかったなぁ。――だからミスをする。魔王討伐の時なら、命取りだよな。……でも、な」
リクトは何時も冷えていた心が温まる思いがあった。
確かにイザク、ビオラ、カリンと行動していたときも凍えていた訳ではない。
だがそれとは違う何かが、確かにあったのだ。
テオ村は再び輜重隊が来たことで活気付いていた。
威勢の良い声が聞こえて笑い声も飛び交っている。
何もなかった村の中央は広場のように整備され、東屋のようなものが建っていた。
リクトは廃材を幾つか拾うと東屋に入った。
指で輪っかを作った程度の大きさで、五角形のコマを四〇個作った。
それが全て入る箱も作った。
何処からでも目立つ場所なので注目を浴びていた。
子供たちも気付いたようで、何をしているのかと集まってきた。
「よう、来たな! 川での遊びを、積んでいくんじゃなく取るようにして、ここでも出来るようにしてみたんだ。ただし、――水で押し流すなんてズルは、ここでは出来ないぞ!」
リクトがニヤリと笑う。
それにカインが反応した。
「はぁあ? 何いってんだよ! リクトがさいしょにやったんだろう?」
「そんなことは良いから、早く教えてよ!」
「うん。わたしもきょうみあるぅ」
「いや――そんなことって……。くっそぅリクト、おぼえてろよ!」
押し退けられたカインが悪態を吐くが、セリナとチアは聞く耳を持たない。
ミアやコリンにハル、それにタクトを引っ張って間にと入れた。
喧嘩をしていたり嫌われている訳ではない。
興味があれば当然輪の中には入ってくるである。
そう怒るなって悪かったとカインを宥めて、手順を教える。
けど難しいものではない。
箱に全てのコマを入れて引っくり返し、箱を取るだけで始められる将棋崩しである。
水辺での順番で取っていく。
今度はリクトも輪の最後に加わり下側のきわどいコマを取った。
「ああ、リクトがいじわるだぁ! カイン崩すんじゃない?」
「いいよ。カインの負けでぇ」
何も言わないが、ミアやコリンそれにハルが目を輝かせながら見ている。
崩すのを期待しているとも言える。
だがタクトの表情は、真剣そのものだった。
「いや、負けてねえしぃ! 次のミアかセリナが崩すよう、おれもやばそうな――、ところを……。ほらっ、とった」
「ええ? ミアのばん……。でもっ」
下側を取る必要はない。
一番上の簡単なところを取って順番を進めた。
セリナやチアも難なく取ってタクトの番になったときだった。
今にも崩れそうな、全体を支えている土台となっていると思われるコマを取ったのだ。
みんなが驚きの声を上げる。
「なに、タクト! すげえな、お前?」
「すごいよぉ! ねっ、コリン君?」
「うん!」
セリナがリクトにウインクした。
だがハルの表情が優れない。
「つぎ、ぼくだ……」
「上のをとれば良いよ? もうお兄ちゃんとカイン君とタクト君の、三人での勝負だからさぁ」
ミアがハルの両肩に手を置いて笑っていた。
頷いたハルが慎重にコマに手を伸ばし、皆にも緊張が移りそれが弛緩に変わった後、リクトの順番となった。
「楽しそうだな! 何をやっているんだ?」
何時の間にか何人かの大人が集まってきていた。
緊張が緩んだ瞬間を見計らって一人が聞いてくる。
「あっ、お父さん!」
タクトが走って行き直ぐ近くで見上げる。
頭を撫でる姿を見ながら、リクトは上のコマを取ってから言葉を返した。
「ハンクさん! これは、自作の遊びですね。――村の復興は順調ですか? 手伝えることがあったら言って下さいね?」
「うん、ありがとう。今のところは大丈夫だ。リクト君が、子供たちの面倒を見てくれているお陰でね。助かっているよ」
何日も同じ村で過ごしているので、村人同士となり結構打ち解けていた。
話しは弾むが、カインが固まってリクトを見ていた。
チアが仕方ないよと言えば、悪態を吐いたカインがコマに手を伸ばした。
「ぶえっくしょん!」
『カシャカシャカシャアン』
「ああ! カインがくずしたぁ!」
「カイン君やっちゃたねぇ」
セリナが黄色い声で喜び勇めば、ミアが囃し立てる。
カインがきわどいコマを取ろうとしたところで、くしゃみに驚いて思いっきり突いて派手に崩してしまったのだ。
「いやぁ、悪い悪い。――ついっな」
「ちょっとぉぉ? おっちゃゃゃん?」
確か分隊長の一人だったと記憶していた。
主に周囲を警備していることが多い。
カインが目を見開き、悪びれた様子のない崩す切っ掛けとなった張本人を恨めしそうに睨む。
それが皆の笑いを誘発していた。
「ハンクさん。ちょっと村の周囲を見て来ますね」
「えっ? リクト君が見回らなくても――」
「偶には、タクト君や子供たちと遊んでも良いかと思いますよ? 少しの間、お願いしますね」
「――そうか。ありがとう」
見上げるタクトに気付いたハンクが礼を言う。
リクトは軽く頷き村を出て行った。
崖上へと向かう方向だった。
村を見下ろしながら道なき道を上っていく。
水辺で見かけたが、その後は不明になった魔人が気になっていた。
もし村を襲うタイミングを図るなら、崖上であろうと思えるのだ。
魔人を見かけたことは誰にも言ってなかった。
子供たちだけで村の外に行くのは禁止されているとミアが言っていた。
それなら安全は確保されている。
魔人の出現で、リクトの同行があっても禁止されてしまっては息苦しだろうと思えたのだ。
魔人が本格的に動き出そうとすれば小隊の誰かが気付くと思われる。
危険を知らせる笛を鳴らせば、リクトが駆け付けることも出来るのだ。
次第に何やら蠢くものが見えてきた。
慎重に歩みを進めれば、二本の木の枝を使い、途中にある出っ張りに足を乗せて歩こうとしている二匹の魔人だった。
片足を乗せ、もう片足を乗せるため浮かすと倒れる。
何が面白いのか二匹とも不気味に笑いながら交互に倒れていた。
その近くには川から持ってきたであろう幾つもの石が転がっている。
リクトは驚きを禁じ得なかった。
魔人は、これまでリクトが行ってきた遊びを、真似しようとしているのではと思えたのだった。
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