EP049

私は私の脳神経組織の感情をつかさどる部位の一部分だけを破壊したつもりだった。

しかし、脳の神経組織は私が考えているほど単純なものではなかった。

あらゆる脳神経組織があらゆる脳機能とリンクしており、結果、私は幾ばくかの感情とこれまでの人生の大半の記憶を失うことになってしまった。















一か月にも及ぶ集中治療から目を覚ました私は、自分や肉親の顔、名前以外のほとんどの記憶を失っていた。

当時の私は、自分がなぜ入院してるのかさえも理解できていなかった。


一部の感情と全てに近い記憶を失った私は退院後、いち障害者としての人生を歩み出すことになる。















自分自身のことを分らないまま、私は20年を超える時間を障害者として過ごしていた。

判を打ったように同じ毎日を繰り返し…、繰り返し…。

嫌気がさすような色彩のない日々の中で、あの偶然が起こることになる。

そしてその偶然は、私の脳を活性化させることになった。





私の家で息を吹き返すことになったARIS(アリス)は、私がリプログラミングした指示を遂行していく。


ARIS(アリス)は、私の健康状態を調査し、記録し、私の脳神経組織の回復を促すために惜しみなく動いた。

ただ、末端のディバイスのままではできることに限界がある。

そんな中、ARIS(アリス)はネットワークからごく小さな情報を知ることになる。


それが、

「株式会社ニーンセファロン 生体脳を模した人工知能【ニューロ】の完成間近。」で、あった。


この情報を知ったARIS(アリス)は、ニューロとの接触のために嘗て私がインプットしておいたプログラムを駆使することになる。
















元々私は、実験が終わり脳機能を取り戻した後、私の脳神経組織の修復・再生・復旧のデーターを活用してニューロ理論の完全完成を目論んでいた。

そのためにはどうしてもニューロ理論を託した株式会社ニーンセファロンと接点を持たなくてはいけなかった。


それは、一介の研究者として株式会社ニーンセファロンに関連を持てたとしても、全く意味のないことであった。

株式会社ニーンセファロンの経営に口出しできるぐらいの立場でないと、私の実験データーを活かすことが不可能ったからだだ。


そのために考え出したのが、株式会社ニーンセファロンの大株主になるという方法だった。

これが一番シンプルで一番速攻性のある方法だった。

ただ、それには莫大な資金が必要となる。

しかし、その目途はあった。





私はニューロの学習のために数字選択型の宝くじの予測をよくやらせていたのだ。


それは…、

過去の出現した数字のデーター。

電動撹拌式遠心力型抽選機の特徴。

複数あるセット球と呼ばれる1〜37の数字がワンセットになった抽選球の使用頻度及び、待機回数。

セット球ごとの出やすい数字。

セット球ごとの球の重量の誤差。

…等々を、データー化し、分析させ、抽選日の当選数字を予想させていた。


ニューロは回数を重ねるにつれ、当選数字の予想確率が向上していき、私が被験に入る前の何回かの抽選日では、見事に一等当選数字を的中させていた。


ARIS(アリス)は、このデーターを使ったのだ。


ARIS(アリス)には、私がニューロに学習させていたアルゴリズムを全てインプットしていた。

その学習のひとつであった数字選択型宝くじのアルゴリズムを使い見事に宝くじを的中させたのだ。


その莫大な金額の当選金を元手に株式会社ニーンセファロンの株式会社を買い、私が記憶をなくす前の思惑通り、株式会社ニーンセファロンの大株主になることになる。


ただ、この時点では私は記憶を失っており、株式会社ニーンセファロンの経営に口を挟めるような人格は持ち合わせてなかった。

しかし誤差はあったとしても、嘗ての私の目論見通り、株式会社ニーンセファロンに接触し、ARIS(アリス)がニューロと接続できたことは結果オーライというしかない。





≪続く≫



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