EP028

「うわぁ…!!」


『うわぁ!』


私自身が驚くほど、私が発した音声が大きかった。


『な…、なんなんだ…!?』


さっきまでアリスへの苦悩に満ち、苦悶し、意気消沈していた私は、突然の異物の登場に驚き、勢いよく床に尻もちをついてしまう。






私の目の前に滑るように現れた真っ黒な歪な円錐形の物体…。

その異形の物体は、パントリーから出て来ると歪な真っ黒なボディー全体から白い湯気のようなものを立て始めた。


『爆発するんじゃ…!?』


思わず尻もちをついてしまう。

クッションフロアーと言えども、私は不用心に尻をしこたま打ちつけたせいで即座に起き上がることもままならなかった。


歪な黒い物体は不気味なほどに音も立てず、白い湯気のようなものを出し続けている。

私はその場にへたり込んだまま、その状況をジッと見ていることしかできなかった。


ただ、

不思議なことに、その白い湯気のようなものは高く上がっても消えてなくなることがなかった。

床から2メートルぐらいまで上っても消えはしなかった。

否…、

2メートルぐらいまで上昇した湯気のようなものはまるでそこに壁があるかのように降下してくるのであった…。


少し冷静になり歪な黒い物体が吐き出す湯気のようなものを観察してみる…。

するとそれは、歪な黒い物体から吐き出されたあと、真っ直ぐに上昇しているのではなく、螺旋状に渦を巻きながら上昇していたのだ…。

そして2メートル程上昇するとそこが折り返し地点のごとく螺旋を描きながら降下してくる…。

その様は、歪な黒い物体を中心にして巻き起こる渦巻き状の気柱…。

そう、これは紛れもなく…、だ…。


ただ、竜巻は本来であれば上空から地上向かってに垂れ下がる大気現象だが…。













歪な黒い物体を中心にして、円柱状に渦を巻きながら真っ直ぐ上る白い湯気のようなもの…。


すると…、

その白い湯気のようなもの円柱の中でピカピカと放電するような現象が起き始めた。


「雷…?」


歪な黒い物体が放つ逆トルネードを自然現象のように見ていた私は間抜けなことを口にしてしまう。


『ば…、爆発…!!』


現状を思い出して起こりうる最悪の事態が思い浮かぶ…。






想像がもたらした最悪の場面…。

その恐怖…。

身動きできないことからの観念…。

目を見開いて放電する円柱を凝視することしかできない…。






雷のような放電が収まり、湯気の円柱はボヤーっと発光し始めた。

その発光する円柱の中を水平に走るパルス。

そして次の瞬間、その湯気の円柱は強く光った。


私は無意識に頭を抱え込んで丸まっていた…。






『駄目か…』


現実を直視できず目を強くつむり、そう思った瞬間…、


「ジロ、そんなとこに丸まって何してるの?」

「…!?へっ!?」


それはいつものアリスの声だった…。













その声で、

私は強くつむった瞼を緩め、頭を抱え込んでいた手を解いた。

そして亀のように固めた態勢からゆっくりと頭だけをもたげた。


「うわぁ!!!」


私の目の前に見知らぬ人がいた。

それも、裸の女性が立っていたのだ…。

あまりの仰天に、だった私は仰け反り転げてしまった。














「大丈夫?ジロ。」


そのうら若き裸婦は、両手で口元を隠し、微笑んだ目で私に向かってこう言った。


「だ、だ、だ、誰?…ですか?」

「誰って、アリスだよ。」

「…。…。…。はぁ…???」


全く理解が追いつかない…。













「本当に大丈夫?ジロ。」


膝を軽く折リ、首を傾げ、覗き込むように私を見ている見知らぬ裸婦…。


「な、な、何でもいいから…、何か着て下さい…。」


今の現状を全く理解できていなかったが、目のやり場に困る私はこうしか返せなかった。


「あっ、ごめんね。ウエアまで設定できてなかったよ。」


全く恥ずかしがることもなく言い放つ若い裸婦。

と、その時…、

裸婦の体が消え、体があったところが白い湯気に戻る…。

そしてそこにまたパルスが走ると、Tシャツ型の白のワンピースを着た体が表れた。


「これでいい?」


そう聞く若い女性…。

私はとにもかくにも、頷くことしかできなかった…。。














「ジロに初披露なのに…、データーがないからこんな格好になっちゃつたよ…。」

「そ、そう…。」


目の前の若い女性は自分の着ている服を無造作に引っ張りながら悲しそうな顔つきで言った。

その顔を見た私は、何か申し訳ないことをしてしまったように感じてしまう…。


…それよりも、私は確認しないといけないことがある。


「き、君は…、アリス…、なのか…?」

「そうだよ。さっきも言ったでしょ。」

「そ、その姿は…?」

「先日買った加湿器を取り込んでホログラムを作成してみたの。」


加湿器を欲しがったのはそういうことだったのか…。


「な、なぜ、ホログラムを?」

「機械より人間の姿の方がより人間を知れると思って…。」


これはアリスの意志と言うよりは、ニューロの意志かもしれない…。


「それにジロも、変な形の機械より人間と会話した方が寛げるでしょ。」






そう言うホログラムの若い女性の顔には、優しい笑顔が浮かんでいた…。






≪続く≫



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