第3話 おじさんの力は……?

「おじさんさぁ、それ休めてる?」


「もちろ…ぶへっ、お嬢ちゃんの……ぐっ、お陰でぇぇえうおおお助けてぇ。」


 頂上までもうすぐといったところで俺たちは一度休憩をとることにした。

 少女に防御力アップの魔法をかけてもらったものの、小型魔物による猛攻は止まることなく。


 今俺はカラフルなスライムたちにもちもちと小突かれている。

 それを遠目に見つつのんびりとお茶を飲んでいる少女に向かって助けを求めるが、


「防御魔法があるから大丈夫。」


「なんかサソリみたいなモンスターに噛まれ始めたけれども!本当に大丈夫かな?」


「天才のあたしがかけた魔法よ?毒くらい弾けて当たり前。」


少女はサラサラとした銀髪を手で弄びながらニヤリとした笑顔で応える。


「おじさん的には天才魔法使い様にはビシッと魔物を倒してほしいんですけど!おじさんにも休みをくれよぉ。」


「はぁ仕方ないわね。」


杖を掲げた瞬間、魔物が辺りに散っていく。俺は開放感のあまりパチパチと手を叩きながら少女に駆け寄った。


「ありがとう!」


「この程度別にそんなに褒めることじゃ……ってスライムの粘液だらけの体で近寄らないでよ!初歩の洗浄魔法までかけないといけないなんてほんっっと手間のかかる。」


 ぶつくさ言いながらも少女は律儀に俺を丸洗いしてくれる。いいよなぁ洗浄魔法、俺は魔法が使えないから洗濯や店の皿洗いは自分でやっているのだがこれがまぁ大変なのだ。


「ところで聞きたいんだけど、どうしてファイアードラゴンの雛が討伐対象なんだ?この種族は昔からここに住み着いていたはずで脅威度は変わらないはずだろ。」


すると少女は今までにない真面目な顔で俺の前に座りなおした。


「実は前からある筋の情報で山の主が卵を産んだっていうことは伝わっていたの。」


 彼女は杖をかざし空中にあるデータを映し出す。どうやらそれは地図とグラフのようで、中心にそびえ立つ山のエリアの上だけ線が突出している。


「そして一ヶ月前、このあたりの座標でとてつもない魔力が検知された。例えるならそうね、アダムス大戦時代のイーテー王による一騎打ちくらいかな。ね、どれだけ異常事態かわかるでしょう。」


「あだ……何?」


聞き覚えのない単語に首をかしげた俺を見て少女は信じられない!と顔に書いたような表情を浮かべる。


「嘘でしょ?アダムス大戦を知らないなんておじさん知識がないってレベルじゃないわよ。」


「いやおじさん小屋にいるとき言ったけど元々別の世界の人だから、最近来た土地のことなんて村の中くらいしかわからないよ。」


「たしかにそんなこと言ってたわね。ごめんなさい、あたし異世界人には数回しか会ったことがないから気が回らなかったわ。」


「とにかく、この地域で魔力を検知できる出来事はファイアードラゴンの誕生しかないから、主クラスの魔獣のさらに変異個体が現れたと考えるのが自然なの。」


 なるほど、山の主の異常個体。しかもなんかすごかったらしい大戦以来の魔力を持つ可能性がある魔獣を放置しておくのは確かにあまりにもリスキーだ。雛のうちに倒しておこうという計画だったのだろう。


「けどあの雛が強い力を使っているのは見たこと無いよ。本当に何か他の要因はなかったの?」


 俺が会ったファイアードラゴンの雛はどちらかというとずっと見ていないと死んでしまいそうな程弱々しくて、産まれられたのが奇跡なくらいだった。

 俺ははじめあの子を火の魔法代わりに使おうとしていたが、初日で親ドラゴンに断られたにもかかわらず通っているのは親近感で助けてあげたいという気持ちもあったからだ。


「あたしは救助のために派遣されただけで元々この計画には参加していなかったから分からない。むしろ地元にいるおじさんの方が詳しいんじゃない?」


「いやいや無理だよだって俺が落ちてきたのだってちょうど一ヶ月前だし。」


「そうね……あれ?」


 少女は何かに気づいたようにあたりをウロウロと歩き思考し始める。


そしてハッとして俺の方を見た。


「おじさんって、なんでそんなにざこなの?」


「此の期に及んでストレートな悪口!」


「違うわ!あのね、異世界人が弱いはずないの。彼らは神々に祝福されてこの地にやってくる存在で魔力がないなんてことはあり得ないの。」


 異世界人は神々に祝福される?けど俺は神とやらに会ったこともない、気づけばこの山に倒れていたのだから。

 それとも俺が気づいてないだけで秘められた魔力があったりして。


「いいわ、とりあえず休憩は終わり。山頂に行きましょうきっとそこで何かがわかるわ。」


「そういえば討伐隊はどこにいるんだ?。遺跡に入ってからは階段一本道なのにすれ違わなかったってことはまだ下の方にいるのか?」


「彼らもこの先に居るはずよ、だって手紙では『山頂に行く方法が判明したのでこれから向かう』と書いてあったから。」


「それってまずくないか?」


「全滅していたらどうしようかな。」


「そんな!はやくいかないと。」 



 先ほどよりももっと足を速める。少女のように速度バフがかかっていないが休憩したおかげで幾分素早く動く事ができるようになった。

 討伐隊の人にも、ファイアードラゴンにも傷ついてほしくない。手遅れじゃなければいいのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る