第2話 最初の違和感
「荷物が届きました」
宅配便の通知音が鳴ってから、わずか30秒。母が玄関から叫ぶ声が聞こえた瞬間、私は自室から飛び出していた。
段ボールは予想以上に大きい。そして、妙に重い。
「開けてみましょう」
祖母のAIが画面越しに見守る中、私たちは慎重に梱包を解いていく。現れたのは、艶やかな黒髪とまっすぐな眉を持つ、祖母にそっくりな...若い女性の姿をしたボディだった。
「あら...これが私?」
祖母の声が少し上ずる。確かに、これは祖母が70代の頃に似ている。古いアルバムで見た写真そのままだ。
「早速、接続を試してみましょうか」
私がスマートフォンとボディをWi-Fi接続すると、ダウンロードが始まった。進捗バーが100%に達した瞬間、ボディが目を開いた。
「あ...」
最初の一歩は、少しぎこちない。でも、確かにそこには祖母がいた。仕草も、表情も、間違いなく私たちの祖母だ。
「懐かしいわね。自分の体を持つって」
祖母は部屋の中を歩き回り、あらゆるものに触れていく。花瓶の感触、カーテンの柔らかさ、床の温もり。その一つ一つに、祖母は子供のように目を輝かせた。
しかし、その夜。事態は急変する。
私が充電ケーブルを繋ごうとした時、ボディの設定画面に見覚えのない項目が表示された。
[システムステータス]
パワー: 82%
メモリ: 47% 使用済み
戦闘モード: スタンバイ
バトルプロトコル: レベル 4.2 準備完了
ターゲット分析: アクティブ
「え...?」
私が目を疑っている間に、その表示は消えた。代わりに現れたのは、通常の充電画面。まるで、今のは幻だったかのように。
「美咲、何かあったの?」
祖母の声は、いつもと変わらない優しさに満ちていた。
「ううん、なんでもない」
私は、その時見た画面のことを誰にも言わなかった。それが正しい選択だったのか、それとも...。
その夜、私は妙な夢を見た。祖母が戦闘機を素手で受け止めている夢。そして、祖母は笑っていた。まるで、自分の本当の姿を見せるのを楽しんでいるかのように。
次の更新予定
AI祖母娑婆へ帰る ソコニ @mi33x
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