帰るべき故郷

@mia

第1話

 ヒュードには一年より前の記憶がなかった。

 一年前に国境に近い、道のわきの草むらで倒れていたところをマナティーユに助けられたのだ。    

 マナティーユは隣国での商談を終えて商会へ帰る途中だった。ヒュードを見つけ神殿近くの治療院へ運んだ。そこで意識を取り戻した彼の記憶がないことが分かった。

 マナティーユには可愛がっている十二歳の甥がいるので、同じくらいの年頃のヒュードを放っておけなかった。自分の働いている商会の寮住まいで働けるように動いた。そのおかげでヒュードは住むところと仕事を得たのだった。

 商会で働けるようになったのは商会がとても忙しくなっていたからだ。


 ヒュードも利用している商会の食堂はいつもにぎやかだが、この時期はいつもよりもにぎやかだ。もうすぐ新年の長期休みになるのでみんな浮かれている。故郷に帰るのを楽しみにしているのだ。

 しかしヒュードには帰る故郷がない。みんなの話を聞いていたがこの商会が自分の 帰るべき場所だと思った。

 新年の休みに寮に残る人間はそれほど多くない。多くはないがなにかと仕事は出てくる。

 ヒュードは自分と同じように残った人と組んで敷地内での荷物の運搬を手伝っていた。


「ヒュード、もうすぐ隣国とその向こうの国の戦争が始まるって話、聞いたか」

「うん、知ってる。戦争が始まりそうだから商会が忙しくなって僕は雇われたって聞いた 」


 この半年後に戦争が始まる。その戦争が予想外に広がりヒュードの国にも飛び火した。

 戦争が終わる頃には商会は焼け多くの商会の人間の行方は分からず、ヒュードは帰る場所をまた失うことになるのだった。

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