第2話 真正の画工
嘉永2年(1849)、この年葛飾北斎は数え90歳となりました。この頃の北斎は、浅草聖天町(しょうでんちょう)、現在の東京都台東区浅草6丁目にある、遍照院(へんじょういん)という浅草寺の支院の境内にあった狭い借り長屋に住んでいました。浅草寺の雷門から、北東に直線距離で1キロ弱のところ。昨年に引っ越してきたばかりでした。
同年、北斎は病にかかり床に伏します。しかし薬を飲んでも幾らも良くなりません。医者がひそかに北斎の娘・お栄に伝えたところでは、「老病」、すなわち老衰なので、治療することができないと言います。
嘉永2年(1849)4月18日明け7ツ(午前4時)
娘のお栄やたくさんの門人や友人たちが悲痛な面持ちで見守られる中、
90年におよぶその生涯を今際の際に大きく息をして「あと10年の寿命があれば」と言い、しばらくして口惜しそうに以下の言葉を残し息を引き取る。
「天が私の命をあと5年保ってくれたら、私は本当の絵師になってみせる……」
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