第十二話 DIY工房で試す、地球アイテム×異世界アイテム合成

※  ※  ※


 「おじゃましまーす」


 工房の中に入ると、懐かしい工具の香りが鼻をくすぐる。


ついさっき入った時と同じ、誰もいないようだ。


「俺もリアル世界でこれくらい立派な工房がほしかったなぁ。いい感じのフィギュア棚とか作れそうだし」


 あたりを見回す。


「ここで、なにかエルフ村を救うヒントを見つけないとな……」


 すると、ピコン、と音がして、ウィンドウが表示される。


 「ん? 【ショップ】が更新されました?」


 そのメッセージを受けて、【ショップ】ウィンドウをひらいて見ると……。


 『エリシアちゃんの【合成】ボタン』?


 いつもは表示されないボタンが現れている。


 「もしかして……」


 試しに押してみると、ウィンドウにアイテムのリストが表示された。俺が拾ったアイテムと、ショップで購入した地球のアイテムが組み合わさっている。


「このDIY工房で、アイテムとアイテムの合成ができるのか?」


 いままでは、木の枝を自分で釣り糸と釣り針をセットしてお手製の釣竿を作っていた。


 ステータス上では【ショボい木の枝の釣竿】として認識されていた。


あれも合成といえば合成のようなものだと思うのだが、ここでは、俺が物理的に無理やり作るようなものではない【合成】が可能になったりするのか……?


「さっそく試してみるか」


 まず、今持っている手持ちのアイテムで、合成の選択ができる素材を確認する。


 「全部できそうだな……でも、貴重なものを実験で使うのはもったいないし……」


 俺はリストを眺めながら、手頃な組み合わせを探す。


 「そうだな、魔石とライターを試してみよう」


 試しに『合成』ボタンを押し、魔石とライターを選択する。


 「どうなるんだこれ……」


 合成のウィンドウが明るく輝き、数秒後、結果が表示される。


 『魔石 ×1 + ライター → 炎の魔法石』


  合成が完了すると、目の前にシュウン、と透明な光の筋が走り、次の瞬間、手のひらサイズの炎の魔法石が出現した。


 「おお、なんかすげえ……!」


  炎の魔法石を手に取ると、それが放つ微かな熱が手のひらに伝わってくる。


その温かさはまるで生きているようで、不思議な力を秘めている感じがする。


 ウィンドウがシュッと表示された。


 『炎の魔法石:火属性の力を持つ小型の魔力石。投げつけることで、対象を炎で包み込む』


 「おお、なんかいいじゃん!! これ、ギガマンティス相手に結構有効なんじゃね!?」


 驚く俺。


 はっ!


 忘れてた。


 くるっとターンして。


 「炎の魔法石、ゲットだぜ!」


 例のポーズを決めながら、得意げに石を掲げた。


 「これ……いけるぞ!」


 まずは手持ちのアイテムを確認し、合成の選択ができる素材をチェックする。


 貴重な素材を使うのはまだ早い。安価で面白そうな組み合わせを考え、釣り針と魔石を試してみることにする。


 『釣り針 ×1 + 魔石 → 魔力釣り針』


 合成が完了すると、シュウン、と光が走り、手のひらに小さな釣り針が出現した。ウィンドウには詳細が表示される。


 『魔力釣り針:魔力を込めることで獲物を引き寄せやすくする特殊な釣り針』


 「さすがにギガマンティスに対抗できそうなアイテムにはならなかったが……、でもこれなら釣りの効率も上がりそうだな!」


 続けて他の組み合わせも試す。


 異世界アイテムの、魔石と木の枝。


 『魔石×1 + 木の枝 → 魔石棒』


「うーむ、これは大したことなさそうだな……たんに木の枝に魔石がくっ付いただけだし……」


 いろいろ合成を試した結果、俺なりに理解した法則としては、おそらくだがこの【合成】、異世界アイテムと地球アイテムの掛け合わせがプラスの相乗効果をもたらしているっぽい。


 異物同士が相性がいいというか……


 例えるなら、10×10=100のような掛け算されるイメージ。


 反面、異世界アイテム同士では、くっついたり合わさったりするだけで別の物質に変わるなどの変化に乏しい。


 10+10=20の足し算のようなイメージだ。


 ともあれ……この合成を極めれば、ギガマンティス打破の突破口が開けそうな気がする。

 

 俺はひたすら、工房でショップウィンドウと睨めっこしながら【合成パターン】を検証していった。

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