第六話 釣りのエサ、ゲットだぜ!
「さて、5000円分、何を買うか……」
ネットショップの画面を見ながら、何を優先するべきか頭を捻る。
「……よし決めた。食糧は現地調達にする。衣料品も医療品も今はまだ大丈夫だ。サバイバルグッズにする」
画面に表示されたカテゴリ一覧を確認するところから始めた。
カテゴリを選んでいく中で、美味しそうな冷凍食品や、快適そうなソファが目に入った。
冷凍食品は、パスタやグラタン、デザートまで種類が豊富だ。画面越しに香りが漂ってきそうなほど美味しそうで、思わず食欲をそそられる。
ソファの方は、ふかふかのクッションに高級感のあるデザイン。座ったら最後、動きたくなくなりそうだ。
「うわ、これめっちゃいいじゃん……いやいや、今は我慢だ!」
自分に言い聞かせながら、誘惑を断ち切るように画面を切り替え、サバイバルグッズのカテゴリに進むことにした。
詳細な商品のリストがずらりと並んだ。
「スコップか。ウルフのここほれワンワンと相性も良さそうだな、安いしシンプルにいろいろ役立ちそうだ。まず一つはこれにしよう」
スクロールを続けると、DIYツールキットが目に留まる。
「おお、DIYツールキットか。これ一つでいろいろ作れそうだな。俺の趣味も活きるってもんだ。これも決まりだな!」
さらに虫取り網や簡易テントセットの説明を読み込み、どれも必要だと確信する。
「虫取り網……餌集めにも使えるかも。テントは安全確保のために必須だよな」
釣り糸と針もリストに加える。
「魚を釣るのも絶対役立つだろう。これで一通り揃ったかな」
おっと、大切なものを忘れていた。
「やべ、ライターいるじゃん。サバイバルではこれ、あるとないとで大違いだ。必須だよな」
慎重に考え抜いた末に、俺はカートに入れた商品の一覧を確認した。
- スコップ(5000円)
- DIYツールキット(4000円)
- 虫取り網(2000円)
- 簡易テントセット(1万4000円)
- 釣り糸(1500円)
- 釣り針(500円)
- ライター(1000円)
合計金額は……。
2万8000円!!!!
「……全然買えねえ!!」
高額な合計金額に、俺は思わず声を上げた。
「くそっ! よくよく見たら、リアル世界の値段よりぼったくってねえか? なんだスコップ5000円って!! バカたけえじゃねえか! どうなってんだこのネットショップ!!」
ネットショップの独占商売の腹立たしさが頭をよぎる。
「絶対これ、あの女神が運営してるだろ……あの強欲ババア……」
しかし、このショップでしかアイテムを購入することはできない。
俺は怒りを抱えながらも冷静さを取り戻し、アイテムを厳選することにした。
「……よし、いまはこれでいくか……」
購入したのは以下の4点だ。
- 虫取り網(2000円)
- 釣り糸(1500円)
- 釣り針(500円)
- ライター(1000円)
合計金額は5000円、ぴったり。
購入ボタンを押すと、画面が一瞬輝き、次のメッセージが表示された。
『購入したアイテムはストレージに保管されました。いつでも出し入れが可能です』
「なるほど、便利だな。早速試してみるか」
まずは釣り糸と釣り針を取り出してみる。『取り出す』ボタンを押すと、目の前にシュワン、と透明な光とともに2つのアイテムが現れた。
「おお、でたでた」
喜びながらも、不安がよぎった。
これ、……送料はかかってない…よな?
地球から異世界までの送料とか、想像もつかない金額になりそうな気がした。
が、ネットショップの購入履歴をみれば、5000円以上はかかっていなかった。
信じるぞ……女神。
もしかしたら、手数料ってこの送料のことだったのか? だとしたら疑って悪かったけどよ……。
ともあれ俺は手にしたアイテムを眺める。
「まずはこれを使って、異世界どうぶつのもりで稼ぎまくってやる!」
いぜん、すこしだけソロ釣りをかじったこともある。ぼっちの趣味がここで活かされるなんて、以前の俺には全く想像できなかっただろう。
本当なら簡易テントキットがほしかったところだが、高額過ぎて手が届かない。
俺は、テントがわりに、そこらへんの大きな木の洞(うろ)をベースにして、キャンプエリアを構築する。
「水辺の近くなら飲料にも困らないし、トイレもできる。それに、ウルフも過ごしやすいはずだな」
てきぱきと、大きめの枝葉を折ってきては、積み重ね、簡易的な屋根をつくる。
まるで、原始人の住処のようだ……。
「こんなもんかな……」と完成を眺めながら呟いた。
その後、ふたたび近くの木から枝を2本ちぎり取り、それぞれをこすり合わせていく。
不可解な行動に、不思議そうに俺の手元を見つめるヘッジホッグウルフ。
「気になるか? まあ見てろって」
しばらくすると、きれいにしなりの効いた、木の枝製の釣り竿(ロッド)が出来上がった。
それに、先ほど購入した釣り糸と釣り針をセットして、ついに完成する。
そう、魚釣りをしようと考えたのだ。
「よし、できたぞ!」
だが、問題は餌だ。
「餌がないと始まらねえな……」
その時、目の前をブブブブ……と虫が飛んだ。
「お、餌発見!」
すかさず、ショップから登録していた虫取り網を取り出し、狙いを定める。
「せいやっ!」
網を振り下ろすと、虫は網の中に収まった。
網に収まると、ウィンドウがシュッと現れ、その虫の名前と簡単な説明が表示された。
『カラクリモス:体が金属のように光る特徴を持つ不思議な昆虫。動きは鈍いが、餌として優秀。』
「ふむふむ……こいつはカラクリモスっていうのか。名前も見た目も、ちょっとかっこいいな」
じゃあ、さっそく……
「カラクリモス、ゲットだぜ!」
網を持ちながらポーズを決める。
「これで餌も手に入ったし、準備は万端だな」
主人公はそう言うと、釣竿を持って意気揚々と川へ向かっていった。
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