第五話 エリシアちゃんのぼったくり両替レート
森の中を歩き回りながら、ウィンドウを確認しつつ、気になるものをどんどん拾い集めていく。
魔物に出くわしても、ヘッジホッグウルフがすかさず前に出て退治してくれるおかげで、安全に探索ができる。
「お前、本当に頼りになるな。助かるよ」
そう声をかけると、ヘッジホッグウルフは得意げに尻尾を振っている。
途中、赤い果実がたわわに実った木を見つけた。
「リンゴ……みたいだけど、ゲットしておくか」
木を揺らしてみると、果実がいくつか落ちてきた。
「よし」
拾い上げてショップに登録すると、ウィンドウには『謎の赤い果実』と表示された。
「謎の赤い果実、登録完了っと……」
薬草っぽい草や、道端に落ちている木の枝、それから苔むした小石など、大したことのなさそうなものも見つけ次第拾い集めていく。
「これは単なる木の枝だろうけど、どうせなら全部登録しておこう」
その間に、ヘッジホッグウルフが次々と魔物を退治してくれていた。
「お前がいなかったら、こんな安全に素材集めなんてできないよな。ありがとうな」
ショップに登録された素材一覧を確認してみる。
- 謎の赤い果実 ×3 - 不思議な薬草 ×5 - 木の枝 ×7 - 小石(苔付き) ×4 - オレンジラットの皮 ×2 - 魔石 ×3 - エビルハムスターの牙 ×1
「なんかショボいけど、これでも積もれば山となる……のか?」
次々と素材をストレージに保管しながら、探索は順調に進んでいった。
幸い、襲ってくるような凶暴な魔物は出てこなかった。遠くで鳥の鳴き声がする程度で、ほっと一安心だ。
そうして歩き疲れた頃、小川を見つけた。
「お、いい場所じゃないか。ちょっと休憩しよう」
冷たい水で顔を洗い、一息つく。
隣を見ると、ヘッジホッグウルフも「クーン」と小さく鳴きながら、小川の水をペロペロと舐めている。
「お前も休憩か。いいぞ、しっかり飲んどけ」
ほっと一息ついていると、今度は俺の腹の虫が鳴り始めた。
「腹、減ったな……。でもどうする……この森に食堂やコンビニなんてあるわけないし、そもそもどれだけ続いてるかもわからない」
そう思っていたところで、ひとつピンときた。
「さっきの赤い果実、試してみるか……?」
ショップの登録アイテム一覧から赤い果実を選び、『取り出す』ボタンを押してみる。
すると、目の前にシュワン、と透明な光とともに赤い果実が現れた。
「うお、本当に出てきた……すげえな」
一つ手に取って、試しに食べてみる。
「……お、意外とうまい」
甘みと酸味のバランスが絶妙だが、味はどちらかというとパイナップルに近い。
「リンゴかと思ったけど、全然違うじゃないか……」
果実を食べながら、ふと考える。
いままで採取したアイテム類を全部売却したら、どれくらいのクルナになるのだろう?
頭の中で想像してみるが、どう考えても雀の涙程度にしかならない気がする。
「こんなんじゃ全然足りねえよな……てか、こんなちまちま採取してても、ぜったい30億円なんて無理だぞ!」
途方に暮れる俺だったが、果実を食べた時の甘さと香りが頭をよぎり、何かひらめいた。
「そうだ、よく考えたら……ショップって地球のアイテムを買えるのがメインの機能だったよな!」
急に思い出し、慌ててその画面を見ようとする。
登録アイテム一覧を閉じて、購入画面に切り替えた。
「てか、思い出したはいいけど、相変わらず俺のアカウントの日本円はゼロ円のままじゃねえか!」
叫び声が森中に響く。
「クゥーン」
「あ、わりい、怖がらせちゃったな」
ヘッジホッグウルフが怯えたように見えたが、すぐに安心したように尻尾を振った。
その瞬間、画面が一瞬だけ明るくなり、目の前に新しいボタンが表示された。
『エリシアちゃんの両替』
「……両替?」
恐る恐るボタンを押してみると、換算レートと手数料の説明が表示される。
『換算レート:1クルナ=1円/手数料:50%』
「手数料、ぼったくりすぎだろ……」
画面を見つめながら、思わず頭を抱える。
「本当に容赦ねえな、あの女神……」
呆れるも、他に方法がない。これが独占商売の強みか。
「マジであの女神、強欲ババアだな……」
しぶしぶ、両替を決意する。登録アイテム一覧を確認すると、リストにはずらりと素材が並んでいた。
- 謎の赤い果実 ×3 - 不思議な薬草 ×5 - 木の枝 ×7 - 小石(苔付き) ×4 - オレンジラットの皮 ×2 - 魔石 ×3 - エビルハムスターの牙 ×1
「これ全部売って……やっと1万クルナか」
ショップの売却ボタンを押すと、素材が一瞬で画面から消え、ウィンドウに金額が表示された。
『合計:1万クルナ』
「1万クルナってことは……5000円か。これでなんとか……」
画面が明るくなり、両替完了のメッセージが表示される。
『5000円が利用可能です』
「これで5000円分のものが買える……」
両替できたのはいいものの、マジで絶対に手数料50%はボリすぎだと思う。今の一瞬の操作で、5000円も手数料がかかるわけがない。
「まったく手なんて動かしてないだろう、あの女神の野郎……」
ニコニコしたあの顔を思い出すと、イラついてきた。
ともあれ、いまはそんな場合じゃない。
ネットショップの画面を眺めていく。並ぶ商品が、日本にいたときにはありふれたものばかりだったが、今はそのどれもが懐かしい。
「サバイバルグッズにするか、日持ちする食糧にするか、それとも便利ツールにするか、衣料品や医薬品という手もあるか……いや、これ重要だよな」
選択肢を前に、主人公は次に何を購入するか、じっくりと考え始めた。
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