第2話 解剖
(お姉ちゃん、お姉ちゃんかぁ。
前世では確か俺はお兄ちゃんだったな、ただしいろいろと情けないお兄ちゃんだが。魔物として生まれた今世、ティアラのお姉ちゃんを全うしてやろう。
幸せな妹ライフにしてやりますよククク……)
という感じで、私は何時ものようにうつらうつらしていた。もう少し時間が経てばいつも通りの目覚めがあるはず。けれども、どうも変だ。
寝返りを打とうにも体が動かない。そして、なんとなく立ち込める鉄の匂い。
決め手に、絹を裂くような悲鳴で目を覚ました。獣の断末魔のような、体の奥底から絞り出したような唸り声。
見えたのは惨劇。
スタッフが無もしれぬアクアフェアリーの体に刃を入れていた。
一体何をやっているのだ!?
う わ あ あ あ あ あ あ あ
脇から腰までを切り開かれているのに、その子はまだ生きていた。手足をジタバタと動かして、一心に『おかあさん』に向けて叫んでいる。
「いだいいいい"い"!!!た、たすけてえええええ!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!」
必死の叫び。にもかかわらず、『おかあさん』は平然とした様子だった。
「我慢してって。生きてなきゃスキルドレインはできないんだから。」
「お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!お"か"あ"さ"ん"!!!!!」
「だーかーら、私に助けを求める意味ある?そもそも母親でもないのに。」
聞いているだけで心がざわつき、居ても立ってもいられなくなるような悲鳴。それを向けられていながら平然としている二人は、もはや尋常ではない。鬼。悪魔。そういう類いだ。
逃げなければ/助けなければ。
二通りの思考があったが、どちらも実行には移せない。私の四肢も縛られていたからだ。
「あ、他の子も目覚め始めた。さっさとやっちゃうよ、『看守』。」
「ちっ、しょうがねーなー。もっと悲鳴を聞きてぇのによぉ……。」
『おかあさん』はキセルを置くと、触手をフェアリーの体の中に伸ばした。縋るような目線など気にもとめず、作業のように。
「ここかい?ここかい?」
破裂音がして、動かなくなる。
name アクアマリン
spices クイーンフェアリー
筋力 E
敏捷 E
耐久 D
魔力 A +1!
とくせい 水神の加護 S+ +1 エナジードレイン S+
「ケケケ、全然上がらねぇなぁ。」
次は、私の番なのか?
高らかに笑うスタッフ……いや看守を見て、恐怖よりも先行したものがあった。疑問だ。
「なんで?」
「……あん?」
「なんで、こんなことができるんだ?その子は、さっきまで生きていたのに。」
動かなくなったフェアリーには見覚えがある。元気いっぱいで、狭い部屋の中を飛び回ってはあちこち怪我していた。あの子が飛ぶ姿はもう見れない。
「そりゃ〜〜〜〜おめぇ、ここは保護施設なんかじゃねぇ。牧場だ。オレのモンスターを育成するための魔物牧場なんだ。お前らは、アクアマリン食い殺されるためにこれまで育てられてきたんだよぉ?」
「そういうことじゃない!功徳心、良心はどこへ行った!?」
私の問いに『おかあさん』は聞き飽きたという風に首を振り、看守はさらに高らかに笑った。
「興味深い問いだぁ………じゃ、次は染色体の数を間違ずに生まれてから聞いてみてくれよ。」
看守はリズムに合わせて、私の浮き出た肋骨を刃でなぞる。
「ど・こ・か・ら……切り裂かれると思う?」
「死ね……!」
ぎ ゃ あ" あ" あ" あ" あ あ あ あ
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