天才俳優だった男の娘の俺氏、転生したらTSして金髪碧眼の美少女になっちゃって、困っておりますの

雷電

第1話 だから俺は男の子なんだ

 俺の名前は衣織(いおり) 凌久(りく)。

 父親が歌舞伎役者で母親が女優という芸能一家の長男として生を受け、赤子の頃から子役として芸能界で活躍している。


 そありがたい事に世間の皆さんの支えもあり、テレビやドラマに引っ張り抱この売れっ子として、忙しい日々を送らせて頂いている。


 そんな多忙の中でも学業は疎かにするわけにもいかず、徹夜のドラマ撮影が終わって直ぐに家に帰り、速攻で制服に着替えた俺は、朝早くから学校へと向かう通学路を歩いていた。


「あー、疲れた。朝明けの撮影シーンだから、本番前までは仮眠してたけど。流石にしんどいわ……だが、これも俺を応援してくれるファン為……頑張んないとな」


「おお! こんな所で会う何て奇遇だな。衣織(いおり) 今日も可愛いな」


「……誰だ。おま……君は」


 いけない。いけない。朝早い通学路だからか油断していた。思わずお前とか言いそうになっちまった。

 目の前の男が俺のファンだった場合、幻滅させちまう所だった。


「俺はお前の未来の夫になる隣教室の同級生。西田と言う。衣織よ。単刀直入に言おう。お前を最初に見た時からトキメいていた。俺と付き合ってくれ、必ず幸せにする!」


「……はい? 今なって言ったんだ?」


 朝、早くからコイツは何を言っているんだ? 頭、可笑しいんじゃないだろうか? 思わず、一瞬、素が出てしまった。


「俺と付き合おう! 幸せにする」


「いや、付き合うも何も俺は男の子で、下には君と同じモノがぶら下がってるんだが……丁度、目の前に精神病院が見えるだろう? 君はそこに向かって行くのが俺は最善だと思うよ」


「ハハハ、そんな嘘は言わなくて良いんだぞ。衣織よ。さあ、答えを聞かせてくれ。衣織!」


 俺に告白してきた男が俺にジリジリと近づいて来る。


「いや、俺はただ女顔なだけでだな。つうかこっちの話を聞いてくれよな……」


 自分で言うのなんなのだが、俺は容姿がとても良い。そりゃあそうだ。あんな美形の父さんと母さんから産まれたハイブリットなんだからな。


 そして、このハイブリットの顔は日夜、俺に試練を与えてくれる厄介な顔でもある。減んな奴に良く絡まれるからだ。目の前のコイツの様な奴に……


「さあ、衣織。答えを聞かせてもらおうか……」


「いや、だから、俺は男の子なんだが」


 西田とか言う同級生は、ガシッ! とっいきなり、俺の手を掴んできた。


「ちょっ! お前、離せ!」


「ハハハ、何だ? 俺に手を握られて嬉しいのか? 可愛い奴め…では、これから一緒に登校を……」


「オラアァァ! 私の友達に何、してんのよ! 変態男!」


ドガンッ!!


「ゴガァ? お前は芸能科の天音(あまね)……」ドサッ!


「凌久君! 大丈夫だった? 怪我してない?」


「奏音(かのん)……助かった。ありがとう」


 黒髪ボーイッシュのイケメン少女が突然あらわれ、持っていた鞄を西田の脳天にフルスイングし、気絶させた。


 この娘は天音 奏音。幼少の頃から子役時代を共に過ごした友達で、現在はソラリスと言う人気アイドルグループのセンターを務めているトップアイドルだ。


「助けてくれてありがとう。奏音……危うく襲われそうだったわ」


「だから、早く彼女作りなって、いつも言ってるよね? 因みに私は絶賛フリー中だからね」


「ソラリスはアイドル卒業するまで恋愛ご法度だろ……それよりも、良くドームツアー中に抜け出して来れ……」


「凌久君! 危ない! 避けて!!」


「へ?……」ドガッ!


 その時だった━━その時、空中からレンガが落ちて来て、俺の脳天に直撃したのは……


 何が起こったのか一瞬、理解できなかったが、俺は意識を失った事だけは理解できた。


 ━━━そして、俺の人生は唐突に幕を閉じた。





……ここは? 確か俺は朝、登校中で……奏音と会話をしていた筈だよな?


「アゥー、ウァー、ウゥー」


 あれ?……上手く喋れない? それに手足が短くなっていないか?


「シシア様。女の子です! 無事に産まれましたよ!」


「そう……良かったわ……初めまして、私の赤ちゃん……産まれて来てくれてありがとう」

「良くやったぞ! シシア! 良く頑張った!」


「アゥーウゥー?」


 ……女の子です?……私の赤ちゃん?……どういう事だろうか?……まさか、俺、転生してる?


「……可笑しいですね。泣きじゃくらない何て、どこか身体の具合が悪いのでしょうか?」


 ま、不味い。状況は良く分からないが、ここは赤ちゃんらしく振る舞わなくては……


「オギャー、オギャー、オギャー!!」


「おお! 元気に泣き始めたぞ! 元気な女の子だ! 本当に良くやった! シシア! 良く頑張ってくれた!」

「ええ、貴方。私、頑張ったわ……フフフ」


 ……これはあれだ。最近よくある、転生して異世界に転生してしまうやつじゃねえかーー!



◇◇◇


《十数年後》


コンコンッ!


「失礼致します。セレスティナお嬢様。親方様と奥方様が及びです」


「……分かりました。直ぐに向かいますとお父様に御伝え下さい」


「畏まりました。親方様と奥方様に御伝えします」


 ━━━頭にレンガを喰らって気絶してから十数年経った。そして、俺は部屋に立て掛けられている鏡で自分の顔をまじまじと見つめた。


「金髪……碧眼……顔は前世と瓜二つ……絶賛の美少女だと?……転生したら異世界で美少女に……TSしちまったじゃねえかああああ!!!」


 こうして俺は唐突に死を迎えた後、女の子に産まれ変わって生きていく事になってしまったのだった。

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天才俳優だった男の娘の俺氏、転生したらTSして金髪碧眼の美少女になっちゃって、困っておりますの 雷電 @rairaidengei

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