呪いの言葉

リラックス夢土

第1話 呪いの言葉

 私は彼がいれば何もいらない。


 私の好きな彼はとても美しい男性だった。

 誰もが口をそろえて彼を「かっこいい」と言った。


 学校の成績だってトップだった彼。

 先生からも評判が良かったし近所の大人からも評判がいい。


 でもある日彼は私以外の女と一緒に歩いていたの。

 彼は笑顔でその女に微笑みかけていた。

 彼の笑顔は私だけのものだったのに。


 その女はだれ。

 何で私の彼といるの。

 彼は何でそんなに幸せそうに笑っているの。


 彼には私がいるのに。

 私は彼がいれば何もいらないのに。


 私は彼の部屋に行った。

 彼は私を見て不思議そうな顔で尋ねた。


「姉貴?どうしたの?」


 ああ、その呼び名で私を呼ばないで。

 それは私にとって呪いの言葉。

 けして私と彼は結ばれることがないという呪いの言葉。


 私は持っていたバットを彼の頭に振り下ろした。

 彼の身体が崩れ落ちる。


 彼は私の弟。


 私は冷たくなっていく彼の身体を抱き締めた。


 私は彼がいれば何もいらない。

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呪いの言葉 リラックス夢土 @wakitatomohiro

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