第2話 仲間? なにそれ美味しいの?


「えっ、あー、えっと、そ、それって」




「そう、私達のチームに入ってGMWに出場しないって事よ」




 GMW、正式名称はグレートマジックウィッチーズ、世界的に流行ってて国内予選を勝ち残った2チームだけが本選に行けて、確か.....出場が可能な国としてアメリカ、ロシア、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、カナダ、中国、インド、そして日本の10カ国から20チームが選ばれて本選で優勝を目指して戦うっていうので2年に1回開催されている。


そう....言うなれば....




「世界の祭典ってとこね」




「えーとそれでその為に私が入れと?」




「そうよ」




「むっ、無理ですよ〜! ただでさえ自分の魔法は弱い魔法なのに強い魔法使う人達が大勢いる中で戦えって、笑い者にされるだけですよ.....」




「貴女って少し勘違いしてないかしら」




「え?」




「これはチーム競技なのよ」




「しかも変に相手を全員無力化ではなく、陣地にあるフラッグを取れば無条件で勝利する事ができるし、弱い魔法なんて存在しないと思うわ」




「誰だって自分の使い方があるって事だと感じるのよ、そう思わない?」




 一理ある、確かに表面上では強そうに見えても使用する者の使い方が下手だったら、本末転倒だ。


 だけど魔法を使う機会の多い場所でそんな人いるわけもなく、いるのだとしたらすごく鈍臭い人なんだなって思ってしまう。




「ナチュラルにディスるわね、貴女」




「後、言いたかった事なんだけれど」




「先天的に魔法を保有している魔法使いよね」


「前に何処かで見た事あるわ」




 やっぱ知ってるんだ....




「そっか、そこは変に世間知らずではないんですね」


「寧ろ知ってて欲しくなかったです」




「違うの、批判するつもりではなくて、実はまだ使えるのではないかしら、その魔法を」




 ......簡単に言って欲しくない。


 そんなこと言われたって、出来るものは出来ない。


 過去に沢山試した、寝る間も削って知ろうとしても寄り添えずそれでもわからなかった私の力を誰かがわかることが出来るなんてそれこそ無謀と言える。


 努力でかさ増ししたって強い人はいるし....




 少しむすっとしながら、綺麗な金の長い髪が覆う顔に影が掛かるように下を向いた後に私の顔を見てまた話続ける。




「じゃあ、それで良いのね」




「貴女が決めた事なら別に反対はしないわ、それで救われるって言うのなら、でもね、ただ努力という事を無謀だと思っているのなら少し間違ってるわ、貴女のそれはただ怖がっているだけよ、失敗する事に」




「いっぱい練習したからって絶対報われるとは限らないのはそうよ、でも初めから練習だけで挑戦しないのは無謀ではなく、臆病なだけ、貴女は示したのかしら?自分の事を誰かに」




 だから見ないようにしていた、かつて妹に面と向かって話せなかった風景が頭の中でぐるぐると想像してしまうから、自分より先へ行ってしまった妹に。


 どうせ勝てない、誰かがそう言うのならば実際そうなのだろうって、自分じゃわからない所を他人は見てる、じっくりと、だからこそ自分から怪我しに行くのではなく諦めてしまったんだ。




「まぁ待ってるわ、貴女の結論が出るまで、だから今日は考えなさい、じっくりね」




 .....いつかは立ち向かわなくちゃ進めないなんて心が痛くなってくる。それも後で考えよう....




「ん?話終わりました?」




「えぇ、帰ってくるまで待ちましょうか」




ガチャッ




「今帰りました〜」




「タイミング良いわね」




「待ってて下さいね、今作りますから」




 テーブルを囲んで3人で待つ、さっきまであんな話があったからなのかちょっと気まずい空気が流れている。


 自分としてもここまで言われた事は初めてですごく驚いているし、言われる前に終わってしまうから。




「お酒飲みます?」




「い、いえ大丈夫です」




「じゃあ私飲んでいい?」




「では私も」




 !? あの外見からして小学....いや中?だと思ってたけど結構年行ってたんだな....




「幼くて悪かったわね!23歳よ!」




「まぁ、リーダーって正直言ってロリですもんね」




「ふん!」




ゴッ!




「いっ!?」




「そう言う貴女こそそんな強そうな見た目して変に乙女過ぎるところあるわよ!」




「ちょ!?」




「ふふふっ」




 賑やかだ、こんな食卓は久しぶりでちょっと涙がでてしまいそう、普段なら卵かけご飯で終わってたから。




「こら〜喧嘩しないでくださいね、折角作ってるのに」




「ロリとか言う方が悪いでしょう!?」




 また暫くは口論が続く、喧嘩してばっかりだな....でも仲良いっていいな....


 そうして待っているととても美味しそうなオムライスが出てきた。なんなら香りがふわっときてそれだけでお腹いっぱいになってしまいそうなぐらいには。




「ほら!出来ましたよ」




「じゃあ、いただきます」




 平和だ....




「あ、そうだこれ私の連絡先だから、また来たかったら来てくれれば嬉しいわ」




「えっ、あ、はい、どうもご丁寧に」




「まぁ、悩み事ってどんな人間にもあるもんよね、そこまで気を落とさなくていいわ、変に怒ってしまった私の方が悪いから」




「いえそれでも、怒ってくれた事に関しては感謝してます。他の人はこんな事言ってくれないので」




「そ、そう?なら良かったわ」




~時間は過ぎて....




「じゃあ今日は悪かったわね、気をつけて」




「はい、ではご飯ありがとうございました」




ガチャッ




バタン




「....リーダー、あの子もですか?」




「さぁ、どうだろうね....」




 これまでの事をちょっと整理してみる。


 というより自分には初めての経験過ぎた、角でぶつかって、他人の家にお邪魔して、ご飯食べて....どんなラブコメだよって突っ込みたくなる。


 世の中あんな人達も居るんだな....




「ご飯食べれたし良い日だったな、今日は」




 部屋に戻り、時間に過ごす、夜になり布団に潜るとふと頭に浮かぶ、あの言葉。




『臆病なだけよ』




 他者から評価されなくとも自分には何もなくて、弱い人間だと自分でもわかってしまう。


 無謀な努力で身を滅ぼし勝手に心が折れて何もしない自分の事を、だから考えずに普通に生きて普通に死ぬんだと思ってた。


 立ち向かう事は出来てもそれでいいって事はないって、成功してこそそれが強さだって、今まで誰かに言われた事はあったかな?あんな風に自分を見据えて話す人を....




「期待....」




 吐きそうになるそんな言葉を口にしてしまった事に自分は驚いてしまった。




 本当にそうなのか?




「いや、違う、あれは」




「あれは」




「きっと、諦めているんだ」




 不思議だった、世界的にも有名なあの競技のチームであそこまで人の居ないチームは存在しない、最低でも7人は居るはずなのに、なら角でぶつかった他人にここまで親身になる理由は? 一つしか無い。




「私と同じだ」




 思えば、話している時も不自然だった、まるで懇願されている様なそんな感じ、そうか、そうなんだ。




「.....私ができるのなら」




 答えは一つしかないよね、そうでしょう?




プルル....プルル...ガチャッ




「こんな朝早くからどうしたの?」




「あの....やります」




「チーム入ります」

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