寂寞
桜庭慈
孤独に沈むとき、己の影を知る。
誰もが持つ影。しかし、私にとってその影はただの暗闇であり、希望の兆しなど微塵も感じなかった。家の中で私はただ、無言の存在として生きていた。母は私をステータスとしか見なさず、父は何も言わずに見て見ぬふりをしていた。私は家族から必要とされていないことを、体全体で感じていた。
いつも感じていた孤独は、次第に重くなり、消えてしまいたいという思いが心の隅に芽生え始めた。そのとき、外の世界にも私を受け入れてくれる場所があるのではないか、そう信じたくて仕方がなかった。誰かに求められることで、もしかしたら自分を存在させることができるのかもしれないと思った。
そして出会った。心の支えとなるはずの、その人物に。私の心はその人に依存し、どこかで無意識のうちに、その人を求めていった。その人の声は心地よく響き、気づけばその人の存在が私の日々の支えとなっていた。どこかで、無意識のうちにその人に依存している自分に気づいていたが、それでもなお、心が軽くなる感覚に溺れていった。何も考えずにその人の存在を求め、頼ることが心地よく、徐々にその人がいなくなった時のことなど考えたこともなかった。
しかし、突然その人の態度が変わった。まるで私が邪魔な存在であるかのように、その人は私を突き放した。「私は自分の家族がいるから」という言葉が胸を刺した。私は、すべてが崩れ落ちる音を聞いたような気がした。
その言葉が、私の心に深く刻み込まれた。家族や兄弟のように隣にいてくれる人が欲しかった。ただ、そんなことを期待していた自分が愚かだったのかもしれない。人は、そう簡単に他人を受け入れることはないのだろう。
拒絶の痛みが、深く、深く私を貫いた。全てが無駄だったかのように感じ、心が壊れていくのを止められなかった。絶望の中で、私はただ呆然と立ち尽くしていた。私が求めていたものは、もう手の届かない場所にあったのだ。
影は静かに広がり、私の足元から始まり、やがて私を包み込む。それは私の一部となり、私が歩むべき道を示す証となった。誰かに求められることを期待することも、恐れることも、もはや無意味だと気づいた。私はこの影を受け入れ、それと共に生きるしかない。影と共に歩むこと。それが、絶望の中でも、生きるための唯一の手段だった。
目を閉じると、影がすぐそばにあるのを感じる。それは私の歩むべき道の証であり、決して振り返ることなく、私の足元に沈み込んでいく。
寂寞 桜庭慈 @itsukuland
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