第5話 壮一
僕のセフレはニ人いる。
一人は一番付き合いの長い溺愛系キャバ嬢のジュリ。
もう一人の壮一との関係は一年半続いている。
出会いのきっかけは、僕が気まぐれに出入りしている出会い系のバーでいつも通りボーっとしていたところ、壮一から声を掛けて来た事で関係を持つ様になった。
「一回限りだから。」
と、相手には前置きを必ず伝える。
しかし、一度関係を持った後も何故かそのバーに行く度に壮一にやたらと声を掛けられ、断り続けるのも面倒なのでツキの提案で最終的にセフレとなった。
ジュリの時同様に意外と押しに弱い一面が自分にある事は自覚していたが、面倒な相手ならすぐに切る事も考えていた。
セフレ関係にあたっての約束事を伝える。特定の誰とも付き合うつもりが無い事や、誘いを断る場合がある事、他にも相手がいても気にしないでいる事が条件になっている。
そんな横暴な条件を壮一はすんなり受け入れてくれた。
・・・・
ツキから他のセフレの名前は出さなかったが、自分と居る時に誰かから連絡が来る事や、ツキの着ているものがやたらとブランド物だったので、他にもセフレがいる事は気付いていた。
それも約束した条件の内。仕方ない…。と壮一は割り切っていた。
男の壮一が相手だとツキは抱かれる側だ。
壮一はツキが眠れない理由は知らなかったが、眠りたがっている事を理解した上で身体の関係を持っていた。
ジュリからは呼び出されるだけだが、壮一とは家を行ったり来たりする事もあり、時折壮一がバーに迎えに来てからツキの家へ行く。
壮一はツキの顔が兎に角好きだった。
壮一自身は寡黙なタイプなので友達と飲みには行くが誰かに声を掛ける事は無かった。
でもツキを見た瞬間にほぼ一目惚れに近い感情で勢いよく声を掛けてしまっていた。
出会い系のバーの中で、ツキは特定の誰とも付き合わない事で話題になっていた。その事もツキへアピールしている時に他の客からの話しで知ってはいが、実際には一夜だけでなくセフレになれた事で壮一は満足していた。
関係を持ち、行き来するにつれて、ツキの家の中が荒れている時には面倒見が良い壮一が整えてあげている事も度々あった。
壮一が家で何をしてもツキは一切無関心だった。
そんな無関心なツキでも抱き合っている時は自分を求めてくれている。
それだけで壮一にとってツキを抱く理由には充分だった。
ツキは今夜も夢を見ない為に身体の関係だけ持つ。
あれから一年以上経ち、バーまで迎えに来てもベタベタしない壮一の事をツキも楽な相手だと思っていた。
『疲れた…早く寝ないと…』
そんな事を考えながら自宅へ壮一と帰った。
壮一が話しかけてもいつも通りにツキは淡々と短い返事のみ。
壮一がチラッとツキの横顔を見るとやはり今日も目が虚でボーっとしている。
でもそんな横顔すら可愛いと思っていた。
相変わらず疲れている様子なのに抱かれたがるツキを見て、ツキの身体が壊れない様にツキが満足するまで抱いた。
壮一は見かけによらず面倒見が良くツキには優しかった。
今夜も壮一に身体を揺すられながらツキは夢の中へ行く事が出来た。
気絶する様に眠ってしまうツキの身体を綺麗にしてからツキを抱きしめて壮一も眠る。
時折夢を見ているツキが泣いている事を壮一は知っていたが、でもそれを本人に伝える事はしてはいけないと思い、泣いているツキの涙を拭ってあげる事しか出来なかった。
ツキは自分が起きるとすぐに壮一を起こす。
シャワーへ行き、仕事へ行く準備をする為に壮一を帰す。
「じゃあまたな。」と壮一が言う。
「うん。」
壮一とはこれがいつも通りの関係。
『寝起きも可愛いな、、、』
とツキを想いながら壮一も自宅へ帰って行く。
壮一はSEの仕事をしている。
趣味で身体を鍛えてはいるが、外注メインの在宅ワーカーである。
時折外注先へ出向く以外は家やジムにいる為、ツキに合わせて動いている。
今更ながらこの仕事で良かったと思いながらスマホを手元に置き、今日も黙々とPCに向かっていた。
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