人とは斯く在りき «Человек -Это Таков»

酩亭海松

世界観紹介

あらすじ

 1922年、氷山の漂う極北のリオート海で新種の海牛「ワグナーカイギュウ」が発見されてから7年が経とうとしていた。人々はその穏和で警戒心の無い巨大な海牛に価値を見出し、肉、皮、脂肪、骨、乳はいずれも高額で取引されるようになる。豪商たちはこれに挙って目をつけ、また世界中の貧民も一攫千金を狙って極寒の北国クラースヌィ連邦へ繰り出していった。

 ルオ・ユエとシュー・ヤンは東華民国の出身で、貧しかった二人は大博打を打ちに猟人として船に乗り込む。そこで出会ったベルガラム人のサミュエルもまた、自身の商売の存続を賭けたこの猟に並々ならぬ思いを抱えていた。

 そんな猟人たちは、ニコラエフ船長と共産党員メチェレフの指揮の元、氷山の聳える酷寒のリオート海へ航海を始めるのである。


登場人物

シュー・ヤン(徐陽)

猟人 国籍:東華民国

元農民。家は貧しかったものの働いて得た僅かな金で独学でベルガラム語とクラースヌィ語を学んだ。海牛猟による一攫千金を夢見、両親の反対を押し切ってこの航海へ出願した。

ルオ・ユエ(羅月)

猟人 国籍:東華民国

貧民。幼い頃から極貧の家庭で育ち、金持ちに対する強い反抗心がある。いつか自分も富豪になりたいという夢を叶える為、友人のシュー・ヤンと共に猟船の噂を聞きつけ遥々やってきた。

サミュエル・カーター

猟人 国籍:ベルガラム王国

ハウエルズ商会の毛皮商。元は牛革製品を売っていたが技術の発達によりその価値が暴落、ベルガラム国内の規制を掻い潜り、海牛革の可能性に自らの商売の存続を賭けて船に乗り込んだ。

ドミトリー・ニコラエフ

航海士 国籍:クラースヌィ連邦

メンシコフ号の船長。退役した元海軍軍人で、剛腕の操縦が特徴。厳格だが肝が据わっていて、乗組員からの信頼は厚い。

アナトリー・メチェレフ

海猟管轄委員 国籍:クラースヌィ連邦

セーヴィルスク港で、海猟を管轄する共産党員。猟人達の監視・指導のため船に同乗する。横柄な態度の割に臆病で船酔いが酷いので、ニコラエフからは馬鹿にされている。


ワグナーカイギュウ

Hydrodamalis Led

 法暦1915年、リオート海(この世界における太平洋最北部の海)でゲンベルク帝国のワグナー博士によって発見された巨大な海牛の一種。体長は7〜8メートル程度で、体重はおおよそ10トン。主食はコンブ等の海藻類で、寒さを凌ぐ為体に脂肪を多く蓄えるので、動きが鈍く潜水する事はほぼできない。それに加えて人への警戒心が薄く、仲間が傷付くと集まって来る性質を持ち、攻撃手段も防御手段も持ち合わせていない為猟人たちの恰好の獲物となった。

 ワグナーカイギュウの肉は保存が効き尚且つ非常に美味で、名の通り柔らかな仔牛に似た味がするという。クラースヌィ連邦では«ледяная корова(リオートの牛)»と呼ばれ、高級食材として珍重されるだけでなく、対外輸出に積極的である。豊富に蓄えられた甘い香りを持つ脂肪は、料理、ランプ、船の機関の潤滑油などに利用された。その毛皮は靴や衣料、鞄等に幅広く利用され、骨は主に食用や観賞目的で高値で取引された。また牝の個体からは乳を得ることができ、チーズやバターなどに加工する事も可能である。

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