◆それから5分後

 そう言って帰る進藤さんを見送った。


「…………」


 部屋に戻って、椅子に座り、考える。


 ……一体なにをやってるんだ、僕は。僕達は。


 休み時間にわざわざ話して


 昼休みには一緒にご飯を食べて


 授業が終わったら図書館で話して


 放課後は猫カフェに行って


 休日は映画館に行って、水族館に行って


 一緒にテスト勉強して。


 これじゃあまるで。


 普通に付き合ってるみたいじゃないか。


「…………」


 彼女は一体どういうつもりなんだろう。


 もしかして、告白を素直に受け取るのが恥ずかしいから、シャチの話は照れ隠しだったり?


 それとも、やっぱりからかっていて、僕がいつ気づくのか試してたり。


 あの進藤さんだし、そんなの関係なくシャチの話をしてるだけなのかもしれない。


 可能性としては最後が一番ありそうだけど。


「…………」


 シャチ、か。


 ――私、シャチが好きなんです――


 ――藤森さんも一度、シャチの事を調べてみたらどうでしょう――


 そういえば自分で調べた事なかったな。


 切ってあったスマホの電源を入れなおし、立ち上げる。


 テスト勉強中は『スマホ禁止』という進藤さんの言葉でそうしていた。


『シャチ 生態』や『シャチ 雑学』と適当な言葉を入れて検索する。


 色んなページや動画が出てくる。


 それらをクリックして、軽く読んだり、斜め読みしたりしていく。


 進藤さんから聞いた事あるものばかりだった。


「…………」


 聞いてる時から思っていた。


 シャチって僕と……。


「……」


 色々考えながら指を動かしていくと、一つの記事が目に入った。


 それはもちろんシャチのもので。


「…………」


 同時にメッセージが送られてきた。


 橋口からだ。


『おーい。まだか』


『結果は? そろそろ教えてくれよ』


「………………」


 それに対して返信を送った。

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