境界の川

ツヨシ

第1話

じいちゃんの家の地下には地下室があるのだが、そこに通ずる扉は、いつも固く閉ざされていた。

僕が「地下室が見てみたい」と言うと、じいちゃんは「だめだ」と強く言うのだ。

それでも僕は地下室を見てみたかった。

じいちゃんが時々、地下室に入っているのは知っていたし。


地下室への扉は鉄製で、おまけにでかい南京錠で施錠されている。

じいちゃんはその鍵を開け、地下に入るのだ。

じいちゃんが入っている間は南京錠は外されているが、中から開かないようにしているので、やはり入れない。

でも僕はあきらめなかった。

まずは鍵のある場所だ。


数日間、じいちゃんを観察した。

気づかれないように慎重に。

そしてついに、仏壇の引き出しから鍵を取り出すところを見た。

――あそこか。

じいちゃんが畑仕事に行くのを待ち、鍵を手にいれた。

ドキドキしながら鍵を外した。

鉄の扉は十二歳にしては小柄な僕には重かったが、何とか開けた。

階段を下りる。

地下室は狭かったが、一番奥にトンネルのような洞窟があった。

大人一人が通れるほどの大きさだ。

――地下室に洞窟?

奇妙だが、地下室には何もなく、あとはこの洞窟だけだ。

僕は洞窟を進んだ。

洞窟は暗かったが、すぐに光が見えてきた。

出口だ。

出るとそこには河原が広がり、その先に川があった。

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境界の川 ツヨシ @kunkunkonkon

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