第21話

「星空の下での独り言」


夜中の目覚め


夜更け、アーサーは不意に目を覚ました。焚き火の燃え残りが微かに明るさを保ち、周囲は静まり返っている。隣ではアルトの穏やかな寝息が聞こえ、少し離れた場所ではフェルミアールとシンリーも静かに眠っていた。


「眠れなくなっちまったな……」

アーサーはそう呟き、そっと立ち上がった。夜風が冷たく、月と星々が澄んだ夜空を鮮やかに彩っている。


彼は焚き火のそばから離れ、小高い丘の上へと向かった。そこは星空を眺めるには絶好の場所だった。


星空を見上げる


丘に腰を下ろし、アーサーは夜空をじっと見上げた。無数の星が瞬き、彼の胸に懐かしさと安らぎをもたらす。


「こうして静かに星を見るのも久しぶりだな……」

彼は思わず独り言を漏らした。そして、自然と仲間たちとの思い出が脳裏に浮かび上がる。


アルトとの思い出


「まずはアルトか……」

アーサーは軽く笑みを浮かべる。


アルトはいつも陽気で、何事にも全力でぶつかっていく剣士だ。彼の剣技は一行の中でも一際光るものがあり、数々の危機を救ってきた。


「けど、あいつは本当に熱くなりやすいよな。あのドラゴンのときもそうだった……」

アーサーは思い出しながら苦笑する。ドラゴンとの戦いで、無鉄砲に突っ込もうとするアルトを止めるのに苦労したのだ。


「でも、誰よりも仲間想いなんだよな。時々その直情的なところが羨ましくなる。」

アーサーは星空を見つめながらそう呟いた。


フェルミアールとの思い出


「次はフェルミアールか……」

アーサーの視線がふと遠くへ向かう。


冷静で知的なエルフのフェルミアールは、常に的確な判断でパーティを支えてくれる。時折見せる皮肉めいた言葉にも、彼女なりの優しさが込められているとアーサーは感じていた。


「田植えのときは意外だったな……」

普段冷静なフェルミアールが、泥だらけになりながら子供のように笑っていた姿を思い出し、アーサーは思わず微笑む。


「お前もああいう一面があるんだな。」

彼は静かに呟いた。


シンリーとの思い出


「シンリーは……やっぱり頼りになるよな。」

アーサーは焚き火を思い浮かべるように手をかざす仕草をした。


シンリーの魔法はパーティにとって欠かせない存在だ。冷静沈着でありながら、仲間たちのために全力を尽くす彼女の姿は、アーサーにとって特別な安心感を与えていた。


「でも、意外と子供っぽいところがあるよな。蜂蜜のパンのときも……」

アーサーはそのときの光景を思い出し、思わず笑い声を漏らした。


「お前がもっと笑顔を見せてくれると、俺たちももっと安心できるのにな。」

星空に向かって語りかけるように、アーサーは呟いた。


チャミとの思い出


「そしてチャミ……お前が加わってくれて、本当に良かった。」

彼の心に、小さな妖精の姿が浮かぶ。


癒しの力を持つチャミは、戦闘でも休息でもパーティを支えてくれる重要な存在だ。何より、その明るく天真爛漫な性格が仲間たちの心を和ませている。


「紅茶を淹れてくれたときも、お前がそこにいるだけで、どれだけ救われたことか。」

アーサーは心の底から感謝を込めて呟いた。


旅の意味を見つめる


アーサーは夜空を見上げ、深く息をついた。

「こうして皆と旅を続けていられるのは、本当に奇跡みたいなものだよな……」


仲間たちとの思い出が一つ一つ浮かび上がり、それぞれの存在がどれだけ大切かを改めて実感する。


「俺は……この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられる気がする。」

そう呟いたとき、一筋の流れ星が夜空を駆け抜けた。


再び夜の静寂へ


丘から戻ると、焚き火のそばでは皆が静かに眠っていた。アーサーはその様子を見て、心が温かく満たされるのを感じた。


「おやすみ、みんな。また明日、次の冒険へ進もう。」

そう呟きながら、アーサーは再び横になり、目を閉じた。


その夜、彼は穏やかな夢の中で、仲間たちとのこれまでの旅路を再び辿ることとなった。

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