第22話
「旅路の出会いと励まし」
魔物の襲撃
夕暮れが迫る森の道を進んでいたアーサーたちの耳に、助けを求める叫び声が届いた。
「助けて!誰か!」
か細い声が森の奥から響く。
「この声……!」
アーサーはすぐに剣を抜き、声のする方向へと走り出した。他の仲間たちもそれに続く。
道端では、一台の馬車が魔物に取り囲まれていた。馬は恐怖で暴れ、車内からは老夫婦が怯えた表情で身を寄せ合っている。
「助けてください!」老夫婦の声が震えている。
「行くぞ!」アーサーが叫び、アルト、フェルミアール、シンリー、チャミがそれぞれの武器を構えた。
魔物との戦い
魔物は牙を剥き、アーサーたちに向かって突進してきた。
「前は俺が引き受ける!」アルトが大剣を振り上げ、先頭で立ち向かう。
「側面は任せて。」フェルミアールが正確な矢を放ち、次々と魔物を射抜く。
「燃え尽きなさい!」シンリーの魔法が輝き、火の玉が魔物たちに炸裂した。
一方でチャミは小さな体で老夫婦のそばに飛び、癒しの光を放つ。「大丈夫です、もうすぐ終わりますから!」
アーサーは魔物のリーダー格に向かって一直線に走り、渾身の一撃でとどめを刺した。
老夫婦との出会い
魔物を撃退し、静けさが戻った道端で、アーサーたちは馬車の老夫婦に駆け寄った。
「ありがとうございます!本当に命の恩人です!」
老夫婦は涙を浮かべながら深く頭を下げた。
「怪我はありませんか?」シンリーが優しく声をかけると、老夫婦は小さく首を振った。
「はい、何とか無事です。ただ……」老婦人が弱々しく呟く。「旅の途中で盗賊にも遭い、財産を失ってしまいました。今はほとんど何もない状態です……」
励ましと支援
アーサーは老夫婦の話を聞き、眉を寄せた。「それは……つらい旅ですね。」
老夫婦は肩を落とし、疲れきった表情で小さく頷いた。「生きている意味があるのか、わからなくなってきます……」
その言葉に、チャミが小さな体で老夫婦の手に触れた。「大丈夫ですよ!こんなに頑張ってここまで来たんですから、きっと大丈夫です!」
「そうだ。」アーサーも前を見据えて力強く言った。「俺たちが助けた命です。これからも生き抜いてほしい。それに……失ったものがあっても、新しい始まりを見つけられるはずです。」
「もしこの先、また何か困難があったら、誰かに助けを求めてください。世界はあなたたちのような人を見捨てるほど冷たくはない。」フェルミアールが静かに言葉を添えた。
「私たちも力になれるものがあれば使ってください。」シンリーが持っていた簡単な食料と水を差し出した。
老夫婦の決意
老夫婦はアーサーたちの言葉を聞き、少しずつ顔を上げた。その目にはわずかながら光が宿り始めている。
「皆さん……ありがとうございます。本当に……私たち、もう一度頑張ってみます。」
老夫婦は深く礼をし、感謝の言葉を何度も口にした。
「気をつけて旅を続けてください。きっと良い未来が待っています。」アーサーは優しく微笑んだ。
再び旅路へ
老夫婦を見送った後、一行は静かな夜道を歩き始めた。チャミが小さな声で言った。
「助けられて良かったですね。あの二人が笑顔になれて、本当に嬉しいです。」
「そうだな。」アーサーは頷きながら答えた。「ああやって誰かを救えるのも、俺たちが一緒にいるからだ。」
「次はどんな出会いがあるかしらね。」シンリーが少し微笑む。
「誰であれ、俺たちは全力で助けるだけだ。」アルトが力強く言った。
こうして、アーサーたちは老夫婦との出会いを胸に、新たな冒険の旅へと再び歩み出した。星空が彼らを優しく見守るように輝いていた。
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