第16話

「癒しの街と新たな仲間」


旅の途中、アーサーたちは温泉の街「ラザリア」にたどり着いた。険しい山道を越え、疲労困憊の一行にとって、この街は格好の休息地だった。


「見てくれ、この湯けむり!ああ、もう最高だ!」アルトが歓喜の声を上げる。

「ここなら、しばらくのんびりできそうね。」シンリーも肩をほぐしながら微笑む。

「温泉が癒すのは体だけじゃない。この街には、不思議な癒しの力があると聞いたことがある。」フェルミアールが街並みを見渡しながら言った。


「それは期待できそうだな。」アーサーは軽く笑みを浮かべ、一行は温泉宿へと足を運んだ。


温泉での休息


宿に着くと、一行はすぐに湯殿へ向かった。温泉の湯気が立ち込める中、アーサーたちは疲れた体をゆっくりと湯に沈めた。


「ふぅ……これだよ、これ。」アルトが湯船の縁に寄りかかりながら目を閉じる。

「思っていたより静かな街ね。」シンリーが小声で言う。

「ここは昔から、旅人や冒険者が傷を癒しに来る場所らしい。」フェルミアールが説明を加えた。


「確かに、ただの温泉以上の何かを感じる。」アーサーが湯の中で目を閉じた瞬間、何かの気配が背後から近づいてくるのを感じた。


癒しの妖精との出会い


「お願い……助けて……」


アーサーが振り返ると、湯けむりの向こうに小さな光が揺れていた。その光の中から、手のひらほどの大きさの妖精が姿を現した。彼女は透き通るような翡翠色の髪を持ち、儚げな表情を浮かべていた。


「誰だ?」アーサーが警戒しつつ尋ねる。

「私はチャミ……癒しの妖精です。助けて……追われているの……」妖精はか細い声で答えた。


その瞬間、湯殿の外から激しい音が響いた。宿の従業員が叫びながら駆け込んできた。「街外れの森から何かが攻めてきています!」


街を襲う魔獣


アーサーたちが急いで外に出ると、街外れの森から巨大な魔獣が姿を現していた。その体は黒い毛で覆われ、目は赤く光っている。


「まさか、こいつがチャミを追っていたのか?」アルトが剣を抜きながら叫ぶ。

「おそらくね。でも、なんて大きさ……これは普通の魔獣じゃないわ。」シンリーが冷静に杖を構える。


「僕たちが止めるしかない!」アーサーは力強く頷き、一行は魔獣に立ち向かった。


戦いと癒しの力


魔獣の攻撃は激しく、一行は連携して戦った。アルトが剣で前線を支え、フェルミアールが矢で牽制し、シンリーが魔法で援護する。しかし、魔獣の力は圧倒的だった。


「私が……力を貸します!」チャミが勇気を振り絞って叫び、体から輝く光を放ち始めた。


その光がアーサーたちを包み込み、疲労した体に新たな力が宿るのを感じた。「これは……すごい癒しの力だ!」アーサーが驚きながら叫ぶ。


チャミの力を借りた一行は、見事に魔獣を撃退した。


チャミの仲間入り


戦いの後、チャミは静かにアーサーたちの前に立ち、深く頭を下げた。「ありがとうございました……あなたたちのおかげで助かりました。」


「助けたのはお前だろう?」アルトが軽く笑う。

「君の力がなければ勝てなかった。」アーサーが微笑みながら言った。


「それでも、私は一人では何もできなかった……どうか、私を仲間に入れてください。あなたたちと一緒に旅をし、もっと力を磨きたいのです。」チャミが懇願する。


アーサーたちは顔を見合わせ、同時に頷いた。「もちろんだ。これからは一緒に行こう、チャミ。」


新たな旅路へ


温泉街で癒しと力を得たアーサーたちは、新たな仲間チャミと共に再び旅路を進むことになった。小さな妖精の癒しの力と勇気が、これからの冒険にどれほどの力をもたらすのか――その答えを知るのは、これからの旅の中だった。

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