第13話

「毒と癒しの旅路」


アーサーたちは険しい山道を進む途中、小さな森にたどり着いた。湿った空気の中、シンリーが指差した先には、奇妙な色をしたキノコが群生していた。


「これは見たことがない種類ね。触らないほうがいいかもしれない。」

冷静に言葉を発するシンリーに対し、アルトは興味を引かれたのか、キノコを手に取って眺めた。


「こんなものが毒だって証拠はないだろう。」

アルトは笑いながらキノコを口に入れた。


「アルト!やめなさい!」

シンリーの叫びも虚しく、アルトはキノコを飲み込んでしまった。


毒の影響


その直後、アルトの表情が曇り、額に冷たい汗が滲み出た。

「……なんだ、頭が……くらくらする……。」


「だから言ったのに!」シンリーが慌てて駆け寄り、アーサーも険しい表情を浮かべる。


「シンリー、彼を頼む!」

アーサーの言葉に、シンリーは頷き、すぐにアルトを地面に横たえた。


シンリーの魔法


シンリーはすぐに杖を取り出し、アルトの胸に手をかざした。静かな声で呪文を唱えると、彼女の手から暖かな光が広がり、アルトの青ざめた顔に少しずつ血色が戻り始めた。


「……すごい熱だわ。解毒の呪文だけじゃ足りないかもしれない……。」

彼女の額にも汗が滲む中、シンリーはさらに呪文を続けた。やがてアルトが浅く息をつき、少しだけ瞼を開いた。


アルトの弱さ


「俺……こんなところで死ぬのかと思った。」

アルトの声は弱々しく、彼らしい威勢は影を潜めていた。


「大丈夫。もう安心して。」

シンリーの穏やかな声が、毒で傷ついたアルトの心にも届く。


「俺は……こんな弱い人間だったのか。何もできずにお前たちに助けられて……剣士として失格だな……。」

アルトの言葉には、普段の彼からは想像もできないほどの無力感が漂っていた。


シンリーは少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しい微笑みを浮かべた。「弱さを感じることは悪いことじゃないわ。弱さを認めることができるのは、強さの証よ。」


アルトはその言葉に目を伏せた。「でも……俺はお前たちを守るためにここにいるんだ。それができなかったら……。」


「あなたは守るだけじゃなく、私たちと一緒に歩んでいるのよ。」

シンリーはそのままアルトの手を取り、静かに続けた。「私たちは仲間。だからこそ、助け合って進むの。それを忘れないで。」


言葉の癒し


アルトはしばらく黙っていたが、やがて微かに笑みを浮かべた。「……お前、意外といいこと言うんだな。」


「意外とは失礼ね。」シンリーは軽く笑いながら言い返す。


「ありがとう、シンリー。お前がいてくれてよかった……。」

アルトの声は小さかったが、その言葉には感謝と安心が滲んでいた。


旅の再開


その後、アルトは完全に毒が抜けるまで休息を取り、体調を取り戻した。再び険しい山道に戻るとき、彼は以前よりも穏やかな表情を浮かべていた。


アーサーが肩を叩きながら笑った。「次からは変なものを食べるなよ、アルト。」


「うるさい。それより、行くぞ。」

アルトは少し照れたように答えたが、その声にはいつもの力強さが戻っていた。


シンリーは少し離れた位置から彼の背中を見つめ、小さく微笑む。毒による苦しみの中で、彼の心の奥に潜んでいた弱さと向き合えたことが、彼の強さを一層磨くきっかけになったのだろう。


こうして、アーサーたちは再び次なる冒険へと歩みを進めた。仲間としての絆をさらに深めながら――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る