第12話
「争いの中の連携」
旅の途中、アーサーたちは古代の伝承で語られる「灰のドラゴン」が巣食う山へと足を踏み入れた。噂では、そのドラゴンが近隣の村々を焼き払い、人々を恐怖に陥れているという。討伐を依頼された一行だったが、険しい道中の中で、剣士アルトとエルフの弓使いフェルミアールの間には、険悪な雰囲気が漂っていた。
険悪な雰囲気の中で
「お前の弓は速さだけだ。力がなければドラゴンの鱗なんて貫けない!」
険しい岩山を登りながら、アルトは鋭い口調でフェルミアールを非難した。
「そしてお前の剣は無計画だ。突っ込むだけでは頭の悪い獣と同じだ。」
フェルミアールは冷ややかな声で返す。その口ぶりに侮蔑が混じる。
「何だと?」
「言葉通りだ、人間。」
二人の声が険しい山風に乗り、響き渡る。アーサーが間に割って入ろうとしたが、シンリーが静かに彼を止めた。「今は放っておきましょう。彼らも自分たちで学ぶべき時があります。」
ドラゴンとの遭遇
山頂にたどり着くと、巨大な灰色のドラゴンがその姿を現した。体は岩のように硬い鱗で覆われ、目は血のように赤い。ドラゴンは咆哮を上げ、地面を揺るがせた。
「ここから先は後回しだ!」アルトが剣を構え、怒鳴るように言った。
「言われなくても。」フェルミアールも弓を構え、戦闘態勢に入った。
共闘の始まり
ドラゴンの尾が空を薙ぎ払い、地面を砕く。アルトはその猛攻を剣で防ぎながら、隙を狙って接近を試みる。一方で、フェルミアールは高台に移動し、的確に矢を射るが、硬い鱗に阻まれてほとんど効果がない。
「全然効いてないじゃないか!」アルトが叫ぶ。
「お前の剣で傷一つ付けられるなら、見せてもらおうか!」フェルミアールが返す。
アーサーとシンリーのサポート
遠巻きに戦況を見守るアーサーは、すぐにシンリーに声をかけた。「シンリー、ドラゴンの弱点を探ってくれ!」
シンリーは静かに頷き、魔法陣を描くように杖を振る。彼女の魔力が周囲に広がり、ドラゴンの動きを解析する。
「ドラゴンの鱗の隙間だ!首の付け根に弱点がある!」シンリーが叫んだ。
「アルト、奴を翻弄して首を露出させろ!」アーサーが指示を飛ばす。
「了解だ!」アルトは力強く頷き、ドラゴンの注意を引くべく挑発的に剣を振る。
連携の瞬間
アルトがドラゴンの左側から攻撃を仕掛け、その隙にフェルミアールが矢を放つ。だが、硬い鱗に阻まれて矢は弾かれる。
「もっと集中しろ!」アルトが怒鳴る。
「無駄口を叩くな!」フェルミアールも怒声で返す。
シンリーが再び魔法を放ち、矢に炎の力を付与する。「これなら鱗を焼き焦がせるわ!」
炎をまとった矢がフェルミアールの手に渡される。
「当ててみせる。」フェルミアールは冷静に呟き、弓を引き絞った。その狙いはドラゴンの首の付け根――わずかに鱗が薄くなっている箇所だった。
「今だ!」アルトがドラゴンの顔面に剣を突き立て、注意を完全に引き付ける。
フェルミアールは放たれた矢が、炎の尾を引いて空を駆け抜け、見事にドラゴンの弱点を射抜いた。
勝利の余韻
ドラゴンが大きな悲鳴を上げ、その巨体が地面に崩れ落ちた。灰が舞い散る中、アルトとフェルミアールは息を切らしながらも立ち上がった。
「……お前、少しはやるな。」アルトがぶっきらぼうに言う。
「そちらこそ、無鉄砲な割には役に立ったな。」フェルミアールが静かに返した。
「さあ、これで少しは仲良くなれる?」アーサーが笑みを浮かべながら二人に近づく。
「それは別の話だ。」アルトとフェルミアールが同時に言い、視線を逸らした。
「でも、悪い気分じゃない。」フェルミアールが小さく呟いたその言葉を、アルトは聞こえないふりをした。
旅の続き
こうしてドラゴン討伐を成し遂げたアーサーたちは、新たな目的地へと旅を続けた。険悪な雰囲気の中でも、戦いを通じて築かれたわずかな連携は、これからの彼らの旅路において確かな力となるはずだった。
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