第4話
「偏見のエルフと不完全なパーティ」
アーサー、アルト、シンリーの三人は、旅の途中で「森の聖域」と呼ばれるエルフたちの隠れ里に迷い込んだ。そこは異世界でも屈指の魔力を秘めた土地であり、エルフたちが外界を拒絶してひっそりと暮らしている場所だった。三人が歓迎されることはなく、むしろ「人間の勇者が来るなど、この聖域の汚れだ」と冷たくあしらわれた。
そんな中、三人に敵意をむき出しにする若いエルフ、フェルミアールが現れる。彼は聖域の護衛を務める弓の名手であり、エルフとしての誇りを何より重んじていた。フェルミアールはアーサーたちを睨みつけ、「外界の者は嘘と欲望ばかり。ましてや勇者や剣士、人間の魔法使いがまともであるはずがない」と吐き捨てる。
フェルミアールの偏見と対立
アルトはフェルミアールの態度に苛立ち、「お前に俺たちの何が分かる」と反論するが、フェルミアールは「人間の力はすべて自らの欲望を満たすため。エルフの森を汚すなど言語道断だ」と一歩も引かない。一方、シンリーは彼の態度に特に感情を表さず、「私たちが迷い込んだことは謝罪する。でも、この地の力が必要だ」と冷静に言うだけだった。
しかしアーサーは、フェルミアールの偏見の奥に何か別の感情が隠されていることに気づく。彼の目には怒り以上に、何か怯えや不安のような色が浮かんでいた。アーサーはその違和感を確かめるべく、フェルミアールに正面から語りかけた。
「確かに人間は欲深いところがある。でも、俺たちはこの森を汚すつもりなんてない。ただ、世界を救うために力を借りたいだけだ。君たちエルフの誇りを否定するつもりはないよ。」
しかしフェルミアールはそれを聞いても「綺麗事だ」と冷笑し、さらに拒絶感を強める。
森の危機とフェルミアールの葛藤
その夜、森を襲う巨大な魔物が現れる。フェルミアールは聖域を守るために孤独に戦おうとするが、魔物は外界から流入した異質な存在で、エルフの通常の戦術では通用しなかった。追い詰められたフェルミアールのもとに駆けつけたのは、アーサーたちだった。
アルトが剣を振るい、シンリーが魔法で援護する中、フェルミアールは驚きつつも叫ぶ。「なぜお前たちがここに来る? この森を汚すな!」だがアーサーは、「君が孤独に戦う必要はない。君が守りたいものを、俺たちも守りたいんだ」と返す。その言葉にフェルミアールは言い返せず、次第に彼らと連携して戦い始める。
魔物を撃退した後、フェルミアールはアーサーたちを見て困惑していた。彼は言葉を失いながらも、彼らの行動が自分の中の偏見に揺さぶりをかけたことを自覚していた。
フェルミアールの決断
戦闘後、フェルミアールは聖域の長老に「外界の者と関わるなど愚かだ」と叱責される。しかし彼は、アーサーたちと共に戦った経験から、自分が抱いていた人間への偏見がすべて正しいわけではないと気づく。
アーサーはフェルミアールに手を差し伸べ、「君がこの森を守りたいように、俺たちも世界を守りたい。力を貸してくれとは言わないけど、一緒に考えてくれるだけでいい」と静かに語る。その言葉に、フェルミアールは長い間答えを出せずにいた。
最終的にフェルミアールは言った。「まだお前たちを完全に信用したわけじゃない。でも、お前たちのやり方を見届ける必要はあるかもしれない。」そうして彼は、半ば渋々ながらもパーティに加わることを決めた。
フェルミアールの成長と絆の深化
旅の中でフェルミアールは次第にアーサーたちと打ち解け始める。アルトの豪快な剣技には次第に敬意を抱き、シンリーの冷静で計算された魔法に興味を示すようになる。シンリーと共に魔力の理論について話し合うことも増え、彼女に「エルフの知識も捨てたものではない」と淡々と言われ、少し照れる場面もあった。
アーサーの存在は彼にとって特別だった。フェルミアールは何度もアーサーに「どうしてそこまで信じられる?」と問うが、そのたびにアーサーは「信じることから始めるしかないから」と答える。フェルミアールはその言葉に戸惑いつつも、自分の中に変化が生まれていることを感じ始めていた。
旅の途中の試練
ある日、フェルミアールの偏見が試される事件が起きる。外界の人間たちがエルフの聖域に侵入し、魔法の宝を盗もうとしたのだ。フェルミアールは激怒し、「やはり人間は信じられない」と叫ぶ。だが、アーサーがその事件を解決するために全力を尽くし、犯人を説得する姿を見て、フェルミアールは人間の中にも信じられる者がいると理解する。
新たな仲間としての一歩
フェルミアールは少しずつだが、アーサー、アルト、シンリーとの絆を深めていく。完全に偏見が消えたわけではないが、彼はこう考えるようになる。「彼らは他の人間とは違うかもしれない。そして、彼らが信じるものを、俺も見てみたい。」
こうして偏見を抱えながらも、フェルミアールは新たな一歩を踏み出す。彼の視点が加わることで、パーティはさらに多様な視野を持つようになり、強いチームへと成長していくのだった。
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