第3話

「孤高の剣士と無口な魔法使い」


アーサー、剣士アルト、魔法使いシンリーの3人は、魔王討伐の鍵を握る「深淵の迷宮」に挑んでいた。迷宮は仕掛けだらけの難所で、剣の力や魔法の力だけでは突破できない。それぞれの力を合わせ、チームとして挑む必要があったが、問題はその「チームワーク」だった。


アルトは相変わらずの独断専行。敵を見つけると、仲間に声もかけず突撃し、後始末を任せる。その姿にシンリーは静かに眉をひそめるが、何も言わずに冷静に魔法でフォローする。だが、アルトはその魔法すら気にも留めず、「俺一人で十分だ」と突き放す態度を見せる。一方、シンリーはシンリーで、敵を効率よく倒すための戦術を提案しても、ぶっきらぼうな言い方しかできず、アルトに「指図するな」と突っぱねられる始末だった。


そんな二人を見て、アーサーは深くため息をつく。アルトは誰にも頼らない孤高の剣士であり、シンリーは人との距離を取る無口な天才魔法使い。このままでは迷宮を突破するどころか、内部分裂してしまう。アーサーは、二人を何とか繋げる方法を考える。


迷宮での危機


迷宮の中盤、三人は巨大な罠にかかった。崩れゆく床の上で、全員が別々の通路に落下してしまう。運良く命は助かったものの、アーサーは一人、アルトとシンリーは別々の方向に。アーサーは「まず二人を合流させなければ」と考え、手探りで進み始めた。


その頃、アルトは一人で魔物を切り伏せながら、「あいつらがいなくても、俺一人で進めばいい」と考えていた。だが進むごとに、魔物の数は増え、次第に傷が増えていく。一方、シンリーも魔法で道を切り開きながら、内心では「アルトがいれば、もっと楽に突破できるのに」と思い始めていたが、自分から声をかけることは考えられなかった。


アーサーの仲介作戦


なんとか二人を探し出したアーサーは、まずアルトに声をかけた。「アルト、一人で進むのは無理だ。この迷宮では力だけじゃ突破できない。」それでも「俺には俺のやり方がある」と言い張るアルトに、アーサーは静かに告げた。「君が無茶をするたび、シンリーがどれだけフォローしているか知っているか? 彼女は君を助けたいと思っているんだ。」


次にシンリーのもとへ行ったアーサーは、「シンリー、アルトは君を頼りたがっている。でも不器用で、自分の弱さを認められないだけだ」と伝える。シンリーは少し目を伏せ、「私が彼に何か言っても、きっとまた拒絶される」と呟く。それでもアーサーは笑って、「それでも伝えなきゃ始まらない。君の力が必要だってことを、アルトも分かり始めてる」と背中を押した。


二人の初めての連携


アーサーの働きで合流した三人だが、待ち受けていたのは迷宮の主である巨大な魔物だった。圧倒的な力を前に、アルトは剣を握りしめて立ち向かおうとするが、魔物は魔法耐性を持つ鎧で覆われており、剣が通じない。するとシンリーが冷静に魔物の弱点を分析し、「鎧の継ぎ目を狙って!」とアルトに的確な指示を送る。


アルトは一瞬戸惑ったが、「信じるしかないか」と呟き、シンリーの指示通りに剣を振る。魔物の鎧が少しずつ壊れていき、その隙を見てシンリーが強力な魔法を放つ。アーサーも二人の連携を補佐しながら戦い、見事に魔物を撃破する。


戦闘後、息を切らしながらアルトはシンリーにぽつりと呟いた。「悪かったな…俺が無茶をしてたのは分かってた。お前の言う通りにして正解だった。」シンリーは少し驚きながらも、「あなたが剣を振らなければ、私の魔法は無意味だった。ありがとう」と返した。ぎこちないながらも、二人の間に初めての信頼が生まれた瞬間だった。


新たなチームとしての一歩


迷宮を脱出した三人。アーサーは笑いながら二人に言った。「ほら、やればできるじゃないか。二人とも最強なんだから、力を合わせればもっと強くなれるよ。」アルトは照れくさそうに剣を肩に担ぎ、「まあ、お前の口出しがなければこうはならなかったな」と答える。一方、シンリーは無言で小さく頷き、初めてアーサーに小さな笑顔を見せた。


こうして、孤高の剣士アルトと無口な天才魔法使いシンリー、そして彼らを繋ぎ続ける支援者アーサーは、最強のチームとして新たな冒険を歩み始めたのだった。迷宮で生まれた絆は、これからの旅の中でさらに強固なものになっていく。

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