第2話
異世界に転生したアーサーは、勇者として魔王討伐の旅に出るが、自分の戦闘能力が平凡であることに早々に気づく。それでも「支えることで仲間を最大限に活かす」という信念を胸に、戦闘以外での活躍を目指す。そんなアーサーの前に現れたのは、天才魔法使いシンリーだった。
シンリーは若くして王国の魔法学院を首席で卒業し、「魔導の申し子」と称されるほどの才能を持つ。しかしその一方で、極端に人付き合いが苦手で、言葉がぶっきらぼうになることが多く、これまでのパーティでも孤立していた。仲間に対する指示が無愛想で、誤解されることが多く、「天才だが扱いにくい」と評判だった。
初対面でシンリーは、アーサーに冷たく言い放つ。「あなた、どうせ足を引っ張るだけの勇者なんでしょ?」だがアーサーは怒ることなく、「まあ、戦闘ではそうかもしれないね。でも君が輝くように、俺はできる限りのことをするよ」と笑顔で返す。その言葉にシンリーは少し驚きつつも、興味を示さないふりをする。
旅の中で、シンリーの魔法の実力は圧倒的だった。強力な魔法で数々の魔物を一瞬で消し去る彼女の力に、アーサーはただ感心するばかり。しかし、戦闘後にシンリーが誰とも会話せず、一人で魔法書を睨んでいる姿を見て、彼女が本当は孤独なのだと気づく。
アーサーは少しずつ彼女との距離を縮めようと試みる。ある日、魔物の襲撃でシンリーが強力な魔法を使いすぎて倒れたとき、アーサーは急いで彼女を手当てしながら言った。「君の魔法はすごいけど、無理をしすぎると壊れてしまう。俺は君を支えるためにいるんだから、もっと頼ってほしい。」それでもシンリーはそっけなく「別に助けなんて必要ない」と答えるが、その目には少しの不安が宿っていた。
旅が続く中、アーサーはシンリーの負担を軽くするために、彼女の使う魔法の材料を集めたり、魔法陣の設置を手伝ったりするようになる。また、戦闘中には彼女の魔法が発動しやすいよう敵の注意を引きつける役割を引き受ける。最初は拒絶していたシンリーも、アーサーの尽力を徐々に認め始め、彼の指示に従うようになる。
ある夜、焚火を囲む中で、シンリーがぽつりと呟いた。「私、いつも周りと上手くやれなかった。才能があるって言われても、誰も私を信じてくれなかった。でも…あなたは違う。どうしてそこまで私を信じてくれるの?」アーサーは微笑みながら答える。「君が自分で気づいてないだけで、君の魔法はみんなを守る力になってる。俺はそれを見たから信じるだけさ。」
それ以来、シンリーは少しずつだが、周囲とコミュニケーションを取ろうとするようになった。ぎこちなくも「ありがとう」と口にする彼女の姿に、パーティの仲間たちは驚きつつも、徐々に彼女を受け入れていった。アーサーはその変化を温かく見守りながら、彼女を支える役割にさらに力を注ぐ。
最終決戦では、魔王を倒すために膨大な魔力が必要となり、シンリーは全力を尽くす覚悟を決める。しかし、その代償として彼女の体には大きな負荷がかかり、命の危険すらあると告げられる。アーサーはその場で「君に何かあったら、俺たちは勝っても意味がない」と強く反対する。だがシンリーは微笑みながら言った。「あなたがいるから大丈夫。信じて、私も皆を信じるから。」
アーサーの支援と仲間たちの協力で、シンリーは無事に魔王を討つ究極魔法を発動させることに成功する。戦いの後、シンリーは疲労で倒れるが、アーサーの支えで再び立ち上がることができた。そして彼女はアーサーに小さな声でこう言った。「ありがとう。あなたがいてくれて、本当に良かった。」
アーサーとシンリーの絆は、旅の中で深まり続けた。魔法の天才と、それを支える勇者。この二人の物語は、やがて世界中で語り継がれる伝説となる――それぞれが互いを補い合いながら、最強のチームとして歩んだ冒険の物語として。
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