第12話

コンコンーーーー


「はい」


「失礼します」

ノックして入ってきたのは家令のゼンだった。


「アンバー様、シエル様にこちらをご用意しました」

シエル用のカゴを持ってきてくれた。


「ありがとう」

柔らかそうなクッションが敷いてある寝心地が良さそうなベッドだ。


ベッド近くにカゴを置いて綺麗になったシエルを乗せる。


「こちらの方は先ほどのシエル様ですか?」

「そうだ」

さっきと打って変わってふわふわ真っ白になったシエルを見て驚いている。


「真っ白ですね」

「真っ白ふわふわでとても美人だ」


「アンバー様はシエル様を溺愛されておいでですね」


「別にそんなんじゃない」

「そうですか。アンバー様もお風呂に入られますか?」

ゼンの生暖かい視線に居た堪れない気持ちになる。


「ああ、その間にシエルにご飯を用意してやってくれ。まだ何が好物かわからないが、なんでも食べていた」


「かしこまりました」


森で過ごした二日間の汚れとシエルに濡らされたままだった俺はシエルのことはゼンに任せてお風呂に向かった。


お風呂から上がりダイニングルームに向かうとシエルと戯れている父と母。


「アンバー、シエルちゃんったらこんなに真っ白でふわふわだったのね!」


「見てくれ!ピンクの肉球が可愛い!」

シエルの前足を母に見せながらキャーキャーうるさい父。


「まぁあ!ほんとね!小さくてぷにぷに!」

父と母に囲まれて好き勝手に触られているシエルは大人しくされるがままだ。


「ミューン」

シエルがこちらに助けを求めるような瞳で見つめてきた。


「父上、母上、シエルをこちらに返してください」


「なんだアンバー、早速シエルを独り占めか?」

「私にもシエルちゃんを可愛がらせてほしいのだけど」


「シエルが嫌がっています。離してあげてください」


俺に諭されてしゅんとなった両親はシエルを離すとシエルがこちらに走り寄ってきた。


足元に来たシエルを膝に乗せて頭を撫でる。その様子を向かいに座っている父と母が羨ましそうな表情で見てくる。


「アンバーに懐いているな」

「私もシエルちゃんと仲良くなりたいわ」


俺が帰ってくるのを待っていてくれたらしい両親と夕食を一緒に過ごす。


「アンバー様、シエル様のご夕食は鶏肉を茹でたものをご用意しました」


「ああ、それで大丈夫だ。ありがとう」

膝の上に乗せていたシエルを床に下ろす。


ゼンからシエルのご飯を受け取りシエルの前にお皿を置く。


クンクンと匂いを確認しているシエルを見るけど食べる様子がない。


シエルは見たこと嗅いだことない食べ物は口に持っていってやらないと食べないみたいだ。


鶏肉を一つ摘みシエルの口元に持っていくとパクりと食べた。


美味しかったようで勢いよく食べ始めたのを見届けてから席に着いた。


「ねぇ、シエルちゃんって子猫かしら?」

「犬には見えないね」


「鳴き声は猫ですので子猫でしょう」

猫っぽいので猫ということにした。


「アンバー、君って子は時々驚くほど適当になるよね」


「逞しい子だわ。さすが旦那様の子ね」

「君の子は逞しく美しい子だ!君に似て!」

イチャイチャする両親を極力目に入れないように食事に徹する。


食事を終えるとシエルを抱えながら部屋に戻ってきた。


さすがに寝ていないので眠たい。シエル抱えたまま早々にベッドに入る。


「シエルおやすみ」

「ミャーン」


頬にシエルのふわふわの毛を感じながら目を瞑る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どうやら乙女ゲームの攻略対象の従者に転生してしまったらしい ゆゆころ @yuyukoro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画