【四十歳】
ユキナは中学生になり、とても賢い子に育っていた。
それと同時に、私が本来背負うべき負担を、ユキナに背負わせてしまっていることが心苦しかった。
何とかして負担をかけないよう努力はしたが、まるで廃人のような生活の贈り物は相変わらず続いており、日常生活に支障がでるまでに至っていた。その肩代わりをユキナにさせてしまっているのだ。
また、ユキナはユキナで行方不明の父親を心底嫌っているようだった。
ユキナからしたら、自分を
その行方に対して死の可能性を否定するため、ユキナには事件に関する詳しい内容も説明していない。これは私が死を受け入れたくないというワガママが原因だ。
私との考えの違いは、思ったよりも大きい溝を作ってしまっているようだった。
母子家庭、年金生活、幻視や幻聴があるという母親――かつて私が自身を異常者だと言う世間からの評価を認識したように、ユキナもまた自身の世間体というものを認識していた。
中学生のユキナにとってこの私という存在の重さは大きく、上手く生きていくために賢くなる一方で、徐々に鬱屈した性格になっていった。
◇ ◇ ◇
この頃、私の幻視に変化が生じ始めた。
一部の幻視が具体的に実体を見せ始める気配を感じた。どこの誰かも分からない。
ただ『この世界へ来よう』という強い意志を感じる。
贈り物はどこか別の世界の光景が写っている物だと思っていた。
それであるならば、いよいよ幻視が別の世界と『繋がり』始めている……?
幻視ではなく『誰か』が『こちらの世界』に出てきてしまうのではないか……?
どうしてこちらの世界に来ようとしている……?
まさかユキナを狙っているのか……?
ユキナが何かをしたというのか……?
胸に湧いた疑念はすぐに押しつぶした。
ユキナは誰かに狙われるような事をする子では無い、この子は『全ての人に愛される』人物のはずだ。
そうだ! この子は他の世界には存在しない『宝物』なんだ……! 狙われる理由はそれしかない……!
駄目だ! 駄目だ! 私がユキナを守らなければ! 私が!! ユキナを守らなければ、ユキナを守らなければ!!
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