【十歳】

 私は幻聴との付き合いにも慣れてきて、どんな声でも必ずその存在を確認してから対応できるようになった。

 自宅では相変わらず軟禁状態が続いていたが、小学校に通うことは認められていた。


 しかし、幻聴であるかを確認するために他人よりも一歩遅れて反応するので、姉たちや小学校の同級生には鈍臭い奴だと馬鹿にされていた。


 そしてこの頃、再び転機が訪れ始めた。

 幻聴に加えて、次は『幻視』の兆候ちょうこうが現れだしたのだった。

 完全に見える訳では無いが、気配がするのでうっかり何もない場所に向かって話をしてしまう事が再び増えてきてしまった。

 

 孤独で話し相手のいなかった私にとっては、新たな話し相手ができたとも取れた。

 しかし、その代償にまた周りから人が離れていってしまった。

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