~固陋の過失(別タイトル『氷点(ひょうてん)』)~『夢時代』より冒頭抜粋

天川裕司

~固陋の過失(別タイトル『氷点(ひょうてん)』)~『夢時代』より冒頭抜粋

~固陋の過失(別タイトル『氷点(ひょうてん)』)~

 浮遊の女宴(うたげ)に巨躯が生く内、幻想(ゆめ)の猛火で女性(おんな)が射るのは〝巨躯〟に安転(ころ)がる夢想の景色で、精神(こころ)の悪しきが甲斐を見棄(みす)てぬ旧い気色を純情(なさけ)に問うのは、分厚(あつ)い界(かぎり)が木霊を落せる夢遊の〝日(ひ)の粉(こ)〟に違い無かった。漆黒(くろ)い界(かぎり)が像を観たまま孤独の小敗地(アジト)は個有(こゆう)に連なり、旧い形成(かたち)が活命(いのち)に迷える幸先(さき)を見知らぬ許容に振る舞い、明日(あす)と体裁(かたち)を幻想(ゆめ)に生育(そだ)てる純心(こころ)残りは恰も僅かで、男女(ひと)の家畜を鳶(とんび)に遣るのは「明日(あす)」に射止めぬ落ち度であった。茶色い気色に浮遊を齎す不快の初歩(いろは)は決心(こころ)を見知らず、旧い文句の鮮やか成るのは御供に気取れる柔裸(やわら)の感(かん)にて、無感に拡がる烏有の一座は景色に埋(うも)れて見えなく成るとも、悪しき純心(こころ)に人間(ひと)が散るのは〝旧来独語(むかしがたり)〟の古(いにしえ)だった。陰府(よみ)の郷(くに)から身悶えして生く不装(ふそう)の自主(あるじ)は孤独を幻見(ゆめみ)て、分厚(あつ)い静寂(しじま)に古都が鳴り往く退屈(ひま)の延命(いのち)は具体(かたち)を知らずに、白亜(しろ)い四季(きせつ)に悶絶打つのは気楼の真中(まなか)の心残りで、一女(おんな)の姿勢(すがた)を一糸に留(とど)める無牢(むろう)の様子を久しく保(も)った。真白(しろ)い界(かぎり)を語彙に含める「夜半(よわ)に手古擦(てこず)る奈落の蝶」には、…一幻(ゆめ)に縋れる音頭の体裁(かたち)の無垢に着飾る撤廃地(アジト)が繋がり、分厚(あつ)い気色の一歩(はじめ)を損なう幻(ゆめ)の感覚(いしき)は御供を誤り、大海(うみ)を渡れる不相(ふそう)の合図は経過(とき)に彷徨い陽気を識(し)った…。一女(おんな)の気色が「奈落」へ還るは幻想(ゆめ)の自覚(かくご)の誤算の総てで、男女(ひと)に乗り込む自活(かて)の審議は人物(もの)を造るに時間を繕い、明日(あす)の目下(ふもと)へそっと棚引く「人間(ひと)の心裏」を真横に突くのは、人間(ひと)の孤独を一体(からだ)に識(し)らない不応の正義の要(かなめ)であった…。無言の八頭(おろち)を奇しくも片付け幻想(ゆめ)の半端を懐(うち)で問うのは、三日月(つき)の欠片(かけら)を微温(ぬる)く見詰める男女(ひと)の人形(かたち)に程好く落ち着き、明日(あす)の勝手を徒労に終らす旧い坊主は浮んで消えた。所構わず未知が鳴き往く不等の主観(あるじ)を誤算に汲んでも、人間(ひと)の八光(おろち)を幻想(ゆめ)に棄て往く未想(みそう)の孤独は験(げん)とも知り得ず、不盲(ふもう)に与(あずか)る身欲(みよく)の界(かぎり)は得手に静まる不論を展(なぐさ)め、分厚(あつ)い活き血を斬新(あらた)にするのは不意に見限る男神(おがみ)であった。幻(ゆめ)に冴え得る身欲(みよく)の長(ちょう)には嘆き哀しむ精神(こころ)が在る儘、自己(おのれ)の無知から輪廻(ロンド)が輝く不盲の魅惑を好(よ)く好(よ)く忘れて、白亜(しろ)い景色に男・女(だんじょ)を求める不倫の日下(ひもと)は何処(どこ)でも敢え無く、幻想(ゆめ)の一界(かぎり)を後光に宿せる私欲(よく)の水面(みなも)は絶壊(ぜっかい)だった。微かな延命(いのち)が人間(ひと)を追い出す不等の自主(あるじ)に日下(ひもと)を観る内、安い規律(おきて)を俗世(このよ)に識(し)るのは未果(みか)に遮る絶倫ばかりで、器用に陰(いん)じる身欲(よく)の結界(かぎり)は、自己(おのれ)の無知から暫く遠退く「不解(ふかい)の思乱(あらし)」に丁度好かった。幻想(ゆめ)の既憶(きおく)に身重が咲く内「明日(あす)の仄香(ほのか)」は脚(あし)を失い、自体(おのれ)の未知から無言を蹴渡(けわた)す不利の生憶(きおく)を得手に納めて…、私用に培う無心(こころ)の共鳴(さけび)は〝得手〟に静まる無想を並べて、幻想(ゆめ)の未知から故郷を透らす旧い界(かぎり)を具体(からだ)に保(も)った。無倣(むほう)を煩う切りの彼方で金の亡者がこの世に蔓延り、資源が失(な)くては意識を失う夜半(よわ)の空間(あいだ)を難無く引いた…。自己(おのれ)の無知から幻(ゆめ)の無知から、乱心(こころ)の何処(いずこ)へ上手く切り抜け、相(あい)する両眼(まなこ)に苦言が発(た)つのは人物(もの)の感覚(いしき)と相成(あいな)り始めて…、幻想(ゆめ)と純心(こころ)は賛美を忘れた瞬間(とき)の経過を準じて保(も)った。独りで在るのが身欲(よく)の身許に、戯れながらも恋を意識し、明日(あす)を突き刺す孤独の眼色は儀式を忘れて多忙に費やし、人間(ひと)の加減を未想(みそう)に立て生く独人(ひと)の信仰(まよい)を想定して来た。真白(しろ)い信仰(めいろ)に四季(きせつ)が流行(なが)れて煩悶して生く我が身の労苦は、幻想(ゆめ)の生気に落ち度を見付ける不盲(ふもう)の小敗地(アジト)を順々見立てて、分厚(あつ)い景色をこの実(み)に観て往く旧い活気を重んじ出せた…。女性(おんな)の生き血が過去を省み、夜半(よわ)の主観(あるじ)を目下(ふもと)に添えれば、分厚(あつ)い日下(ひもと)は陽(よう)を切り出し「幻想(ゆめ)の撤廃地(アジト)」を畳むけれども、乱心(こころ)の概(おお)くは類(るい)を保(も)たない真昼(ひる)の惨事に見切りを付けて、女性(おんな)の行方を晦まし続ける「日々の連鎖」に不解(ふかい)を採った…。幻(ゆめ)の男性(おとこ)が奇怪を合せて恋に堕ち行く鼓動を採れば、意味を解(かい)せぬ真実(まこと)の緩みが〝巨躯〟に対せて微睡みさえ脱ぎ、幻想(ゆめ)の丸味(まるみ)を恋して敬う人の社(やしろ)を構成して生く…。精神(こころ)の歪曲(ゆがみ)を得手に採るうち女性(おんな)の仕種は男性(おとこ)に阿り、暗い夜半(よわ)から真昼(ひる)の最中(さなか)へ輪廻(ロンド)を観ながらふらふら落ち込み、分厚(あつ)い〝盛(さか)り〟にその身を浄める「水と霊との…」意識に寄せられ、大海(うみ)を渡れる惨い感覚(いしき)は大宙(そら)の成果(かなた)へ失(き)え果て入(い)った…。幻想(ゆめ)と孤独の片身(かたみ)の狭さに女性(おんな)の労苦は緩々緩まり、幻(ゆめ)と空気(くうき)をその実(み)に吟味(あじ)わう情事(こと)の辛気(しんき)を余分に蹴散らせ…、明日(あす)の寝言に「分厚(あつ)き…」を識(し)らない不要の運河を総じて観て居た…。精神(こころ)の起立に白亜(はくあ)が空転(ころ)がり、安い性(せい)から男女(ひと)が立つのは、明日(あす)の勝手を好(よ)く好(よ)く看破(みやぶ)る不浪の景色にほとほと落ち着き、橙色から夕日を産ませる「死地を信じぬ初歩(いろは)」であった…。漆黒(くろ)い音頭が未知に先取り宙(そら)の彼方に女性(おんな)を見取れば、明日(あす)と現行(いま)との共謀作など未知を見守る身欲を追い駆け、明日(あす)の日下(ひもと)を夜半(よわ)に信じぬ乱心(こころ)の身許を大きく保(も)った。幻想(ゆめ)との空間(あいだ)を衰退して行く「不毛を見限る脆弱(よわ)い辺り…」は、女性(おんな)の身許をこよなく相(あい)せる不和の体裁(かたち)を未完(みじゅく)に見納め、分厚(あつ)い独語(かたり)に総々(そうそう)眺めた未審(みしん)の初歩(いろは)を片付け入(い)った。

 乱心(こころ)の景色と幻想(ゆめ)の気色と未知に基づく未想(みそう)の景色は、外観から見て身欲(よく)を掌(て)に取る不浪の安堵を枯渇に観て採り、旧い兆しに宙(そら)を仰げる孤踏(ことう)の空間(あいだ)は切(ぎ)り切(ぎ)りなれども、幻(ゆめ)の夜半(よわ)から形成(かたち)を成すのは止め処も無いほど無欲に依った…。幻想(ゆめ)の個録(ころく)を築ける間(あいだ)に寝間の退屈(ひま)さえその実(み)に当て嵌め、自体(おのれ)の無欲に精神(こころ)を観るのは無知に信じぬ気丈の限りで、明日(あす)と一幻(ゆめ)とを端正(きれい)に咲かせる無牢(むろう)の結界(かぎり)を端座して見る、本能(ちから)に任せた一人(ひと)の総理(すべて)は…、無信に遠退く自己(おのれ)の幻(ゆめ)との果てが観えない無欲を射った…。未知の勝手に頷く生命(いのち)は四方(よも)を見渡す不在を知り付け、明日(あす)の御託と独創(こごと)を異(い)にする幻想(ゆめ)の網羅を観参(かんさん)しながら、分厚(あつ)い千夜(とばり)に育児を始める幻覚(ゆめ)の女性(おんな)の活気を識(し)った。緩い流行(ながれ)の生憶(きおく)の許容(なか)から「水と霊との…」意気地が表れ、漆黒(くろ)い輪の中、人間(ひと)と阿る〝打ち出の小槌〟に興味を絆され、淡い小口を俗世(このよ)で相(あい)する無味の浄(きよ)さは朗(あか)るく成り出し、分厚(あつ)い日々から孤独を活(かっ)せる不盲(ふもう)の信度(しんど)は被(かぶ)れて行った。白亜(しろ)い枯渇に人間(ひと)が落ち込む「幻(ゆめ)の夜半(よわ)」には一女(おんな)が立ち活き、精神(こころ)の許容(なか)では明朗(あか)るく成り生く日々の経過が鬱陶しく燃え、幻想(ゆめ)の一夜(とばり)に可笑しく立ち生く「独創(こごと)と霊との…」悪しきは照輝(てか)りは、自体(おのれのからだ)にすっと飛び込む一幻(ゆめ)の概(おお)さにぴらりと鳴った…。精神(こころ)の言動(うごき)に意味付け始める人物(もの)の空虚は解体して活き、仄(ほ)んのり浮べる一定(さだめ)の景色は無知の温度を並べて行って…、明日(あす)の夜(よ)に立つ不盲(ふもう)の並びは虚空に突き出る無想を培い、男女(ひと)の孤独と夜半(よわ)の三日月(つき)とは「相思(そうし)」を違(たが)わぬ美麗を彩(と)った。空宙(くうちゅう)から観た精神(こころ)の嘆きは未知を忘れて御供に有り付き、迷い奏でる旧(むかし)の仕事を乱心(こころ)の水面(みなも)で轟き置かせて、老いる具体(からだ)を無知に遣るのは不当を相(あい)せる精神(こころ)の並びに…、鬼神を保てぬ人間(ひと)の心は無機に頬張り轆轤を打った…。透明乍らに見慣れた蝶には産みの親から里心が載り、幻想(ゆめ)に相(あい)せる「不毛の小敗地(アジト)」が枯渇を牛耳り、弄(あそ)びを牛耳る俺の乱心(こころ)は間抜けを呈する俗世(このよ)を見限り、旧く燃え立つ遊離の里へと全身(からだ)を損ない這入って入(い)った…。人から乖離(はな)れた気丈の乱心(こころ)は無憶(むおく)の予備から具体(からだ)を連れ去り、初めて孤独を射止めた夜(よる)など、不毛に宿せる論破を保(も)った。

      *

 痘痕顔した天然壮女(てんねんそうじょ)が、若人(ひと)の気を借り、ぽっそり出て来た。他の修養会で会った友人・人も他に幾人か出て来て、薄暗い俺の家の一階(キッチンと居間)で真夜中(八時~十時位だったかも知れん)にいろいろと喋り、俺の父母も居た。感覚で堅い派閥好きの壮年不良(修養会の)(に成ったり面皰顔した気弱い青年に成ったり)も居り、痘痕顔の娘は矢張り俺を警戒するように嫌って居たようで、俺も故に嫌い、近付きも話しもしなかった。ずっとこんな調子を続けた。部屋は電気を点けて居ないで、トイレの明かりだけが点いていた(誰か《確か俺の父は使って居た。他に壮年不良も使って居たかも知れない》が使って居り、使って居る間は明かりを維持出来る様子で、俺は取り敢えず部屋の明かりだけを頼りに生花(いけばな)して居た)。

      *

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~固陋の過失(別タイトル『氷点(ひょうてん)』)~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji

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