第3話 魔王討伐

「翼、生やせたんだな」


 ドラゴンの生き血を飲んで延命した時点で、覚悟はしていた。だが、本当にドラゴンのような翼を出し入れできるとは思わなかった。何事も試してみないと分からないな。


「とりあえず魔王国まで飛ぶか」


 レテの前情報によると、魔王サマエルは親征をしているらしい。王が自ら打って出るとは、よほど追い込まれているのだろうか。


 しばらく飛ぶと、冒険者とアルド王国軍の混成部隊が見えてきた。黒装束の軍団と戦っている。こっちが魔王軍か。どうやらここで交戦しているらしい。


「というか、レテがやった方が絶対速いよなぁ」


 10歳の子供に討伐を命じるなど、どうかしている。世界最高峰の知識を持つ魔女が出張った方が良さそうなものだ。


「【ダムナティオ】」


 そんな詠唱が聞こえると、混成部隊は一気に吹き飛ばされた。これが魔王の力か。大体把握した。


「デュアル・ドラゴンブレス」


 俺は両掌に口を出現させ、ドラゴンの必殺技たるブレスを炸裂させた。


 魔王の軍勢はあっという間に消し飛んだ。しかし、黒の甲冑を着た魔王サマエルは耐えていた。


「ドラゴン族とまで手を組んだのか?」


「いや。血を飲ませてもらってね」


「貴様、人間の子供か。憐れだな。人柱として駆り出されるとは。ここで楽にしてやる」


 魔王の拳が迫る。


「聖魔法【浄華聖焔】」


 白き聖火の結界が組まれ、魔王の腕を弾いた。


「うぐっ、なんという魔力密度だ」


 魔王は炎が回らぬよう、自ら片腕を切り落とした。


「西の果ての聖なる【天の滝】に打たれたんでな。聖属性の魔法も十分使えるよ」


「くっ、【オロ・ヴァリアトゥム】」


 知っている。周囲の生物の命を奪う魔法だ。奪った命は魔力に変換できる。何か大技が来るな。


「【スール・インカーラ】」


 凄まじい魔力の奔流が俺を襲う。だが俺はただ、浄華聖焔の結界を維持し続ける。それだけで十分防げる。それほどまでに、俺の魔力量は多かった。


「ハァ、ハァ。どうだ?」


「期待外れだな。お前の第二の心臓だけ頂いて帰るとするよ」


「な、なぜそれを!」


「知る必要はない。水灋【水精砕波】」


 俺は人魚から習った術で魔王の体内の水分を支配した。


「き、貴様何を!」


「終わりだ」


 水分は渦巻き、魔王の体は爆発四散した。


 200年にわたり人々を苦しめたという魔王サマエルは、あっけなく死んだ。


 もしかして俺、強くなりすぎたのか?


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700日後に死ぬ大賢者~命数の呪いを解こうと努力したら世界最強になってました~ 川崎俊介 @viceminister

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